メンズファッションにはタイが必要不可欠

BERUNです。

連続した雨からもようやく解放され、これから本格的に暑さを感じる季節がやってきます。

2005年に国が打ち出した「クールビズ」。
このいかにも日本的な政策は、世のジェントルマンから失笑を買いながらも、その適用期間をどんどん広げ、今ではゴールデンウィーク終了から10月終わりまでと、およそ半年間に及んできているようです。

そこで大変なのはアパレル産業。

ネクタイメーカーはバタバタと潰れ、重衣料メーカーもクールビズに追従して、軽率なアイテムを出さざる得ない状況に陥ってしまったようです。

そもそも、日本人はどうしてネクタイに対して、「窮屈」「面倒くさい」といった、ある種ネガティヴなイメージを持つに至ったのでしょうか? 
それは残念なことに戦後、正当な「服育」が省略されてきた結果だと思います。

ビジネススタイルのコーディネートにネクタイは必要不可欠であり、むしろわたしはスーツよりも大切だと思っています。

以前ある方に、

「今すぐスーツを作ることはできないが、もし5万円あるとしたら何を揃えますか?」

と質問されました。

そのときわたしはすぐに、

「1.5~2万円の舶来(インポート)のネクタイを買い、シャツをオーダー(約1、5~2万円)し、白のリネン素材のポケットチーフ(約4000円)を買ってください」

と言いました。

試しにそこだけ変えてみると、ご本人も納得されるほど変化しました。

顔に一番近いVゾーンを変えることで、全体の印象をガラッと変えることができます。
しかしそのネクタイが無くなってしまうと、全体のコーディネートの〆を失うことになってしまうのです。

ネクタイという小さな面積の部分だからこそ、どんなアイテムよりも遊ぶことができます。

そのタイの遊び方ひとつで、その人のセンスがわかってしまうほどです。
そのくらい、タイはメンズのファッションにとって何者にも替えられない大切な存在なのです。

ここ数年、残念なことにスーツスタイルにも着崩すオシャレを提唱する風潮が起きてしまっています。

そのため淋しくなったVゾーンを華やかに見せようと、シャツのボタンに色を付けたり、襟裏に柄を入れるようなチープな見せ方が広がってきてしまってきているのです。

今までデザイン性や遊びの要素はネクタイでできていたのに、それがなくなってしまった。
そうすることで、他のアイテムの存在を妙に際立たせなければいけないと勘違いをしてしまっているのです。

二重襟、ドゥエボットーニ(台衿に2つ釦)、衿裏の柄、ボタンに装飾目的の色付け。
わたしが最も苦手とするシャツスタイルです。

男としてあるべき本来の美しいシャツの姿が一切残っていません。

またもうひとつの原因として、今の日本のスーツスタイルから季節感が失われつつあることも挙げられます。

4シーズン、年中着ていても大丈夫なようなスーツしか、今は世に出回っていません。

薄手の黒い生地で背抜き仕様。

背抜きでも、寒い冬は上にコートを羽織ればいいという発想。

季節感を意識せずに日常を過ごしてしまうことで、冬はフランネルスーツを着てウールタイを結び、夏にはモヘア混のジャケットに涼しげな麻のタイやニットタイを結ぶという、本来あるべき男性の装いの発想が生まれなくなってしまうのです。

年中2000円前後の斜めストライプ(レジメンタル)のシルクタイを着け、夏はクールビズだし暑いからネクタイは外そう。

首元が淋しくなったからシャツのボタンに色を付けたり、裏襟に柄を入れてオシャレ感を出そう。

このようなファッションの「負の連鎖」が、日本のスーツスタイルシーンでは起こり続けています。

柄やデザインが全面的に出ている物で、高価な物はありますが高級な物はありません。

上記のような安易な発想で作られたシャツやネクタイなどは、まともなセンスを持った人から見たら美しくは見えないものです。

本来なぜネクタイというアイテムが、今の今まで消えずに存在してきたのかを考えていただきたいのです。
もし不必要で何の意味もないものであれば、すぐに歴史から消えているはずです。

それが21世紀まで残り続けているということは、きっと男の装いには欠かすことのできない大切なアイテムだからなのでしょう。

あって当たり前だったものが突然はぎ取られてしまったことで、全体のバランスを保とうと必死に他のアイテムを華やかにする。
しかし、その不自然なバランスをとる行為こそ愚の骨頂。

雑誌、メディアや百貨店が未だに根強い力を持っている現代、商業主義に走りすぎたお店ばかりの日本では、素晴らしい洋服に出会える頻度は限りなく少ないのが現状です。

その時々の流行を追い求めることに懸命になるあまり、そこにお金をかけることに精一杯になってしまうことの無意味さに早く気付いて欲しいと思います。

40歳で気付くよりは30歳で気付いた方が、10年も間違った買い物をする年が減ります。

その10年の間に、他の人たちが時代に流された装いに時間とお金を消費している中、いかに血の通った洋服を増やし続けられるかが、今後の人生を華やかにしていくか決まります。

なによりもバランスが大切です。

クールビズの圧力がどんどんつよくなってくる昨今、
アンチクールビズ派がノータイの人よりも涼しげな顔で過ごすことで、時代に流されない男がもっと増えてほしいと切に願っています。

ベルンでした!

Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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