若い頃こそ英国物を着よ

BERUNです。

<Traditional British Style>

着心地や見た目の華やかな印象から、昨今はどうしても英国モノは淘汰されており、イタリアものが流行りを通り越してスタイルへと確立されています。

ハリスツイード100周年記念からツイードブームが来て、英国ブームが来ていると言われてはいますが、しょせんモダンブリティッシュであり、アメリカ・イタリア・日本など含めた全世界が憧れたトラディショナルなブリティッシュスタイルは過去の栄光となり時代から置き去りにされています。

<Modern British Style>

アメリカがイギリスに憧れ、レジメンタルの向きを逆にして自国発信にしようとしたり、様々なスタイルを真似していったのは有名な話ですが、今のイタリアファッションの根底にあるのは全く正反対のイギリスファッションというのはあまり聞かない話です。

左:本家本元のイギリス式のレジメンタルタイは右肩上がりのストライプ。ヨーロッパ式のブレイザースタイルにはこちらのタイを合わせます。
右:アメリカ式は右肩下がり。”Brooks Brothers”や”J PRESS”の紺ブレには右肩下がりのタイを結ぶと、アメリカファッションをわかっていると思われるといった理屈があります。

イギリス人は物を大切にする民族です。
ツイードのジャケットを3世代受け継いでいく文化を根強く持っている素晴らしい国。

イタリア人は、そんなイギリス人が何十年も着続けてきた、着古されたくたくたの洋服に”美”を感じ、それを取り入れようとしたのです。

イギリス人のオーダーするスーツの裾は最初は必ずダブルで折ります。

なぜなら、裾が擦り切れたら裾を短くする余分な長さをあらかじめもっておくため。

それに相成り、袖も少々長めで作るそうです。

そのため何十年と着ているスーツは、裾や袖がつんつるてんになっているそう笑

イギリスに住んでいたときも、電車に乗り込んでくるフォーピース(ジャケット・ウエストコート・トラウザーズ・ハンチングの4点すべてが共生地で作られているもの)のスーツを着たおじさんを何度も見かけましたが、それらのおじさまのスーツの襟元はたいていぼろぼろに擦り切れており、手で何度も直した痕跡が見えるのです。

おそらく50年は着ているであろう、半世紀以上を共に過ごしているような洋服を日常的に着ています。
本来のイギリス製の生地は、そのくらい丈夫な作りなのです。

今は買収や合併、廃業があてもなく起こり、今なお古典的な製法を貫いている工場は数えられる程度になっています。

イタリア人はとにかくChurch’s(チャーチ)が好きですが、その理由もやはりイギリスらしい物が好きだからなのです。

彼らからしたら、クロケットジョーンズ・ジョンロブ・エドワードグリーンなどのイギリス靴はシルエットが美しすぎて、本来の無骨でブサイクなイギリス靴とはかけ離れているため気にかからないのでしょう。

2年くらい前に爆発的に流行った「シャンガイ」も、まさにアジの王道。

<シャンガイ (from Church’s)>

めんどくさがりのイタリア人は、近道をしてイギリス人の何十年も培ってきた味わいを真似したいのです。

そんなことを考えてみると、イタリア人のスラックスの裾が短いのも頷けような気がしてきます。
(ちなみにくるぶしが見えるほどの短い丈のパンツを履いている人のことをイタリアでは”ゾンパ・フォス”と呼びます。これは”水たまりも飛び越えるような貧乏臭い奴”という皮肉めいた略称です)

短い裾は、履き続けて裾を切り落とし続けてきた結果、ということを伝えられる一つの証明にもなります。

イタリア人が、
「ジャケットのシワは男の美学だ」
という理屈も、よりクタっと着たほうがいいという根底からの憧れからきているのでしょう。

そういった理由を踏まえてわたしが思うのは、元気な20~30代のときには、質素で堅実な英国物を着るべきだと思うのです。

あえて洒落感をあざとく出すことのないシンプルなブリティッシュスタイルを覚えることで、自分の内面で勝負せざるを得ない状況下に自らをおくことができます。

20~30代でパッと見でお洒落な洋服ばかりを着ていても、その頃は楽しいかもしれません。
オシャレ番長と言われると思います。
しかし歳をとってからがとても怖いです。

若いうちから自身が将来どうなりたいか、という像を作りあげることをあまりしようとしない人が多いからでしょうか、日本人のおじさんにはかっこいい人が限りなく少ないと思うのです。

<Italian Style>

お洒落で派手なジャケットは、歳をとり、腹が出てシワが増えてきたときに着ればいいのです。

そのときにはきっと、
「おしゃれなおじさまね」
と言われることでしょう。

その頃にいきなり駆け込み乗車の如く、味をしめて新品のツイードをおろしたって遅いのです。

筋肉の衰えた老体には質実剛健さはストレスに感じ、身体になかなか馴染みません。

靴に足を合わせて我慢して履き伸ばしていく靴なんか、若いうちでしか絶対無理でしょう。

歳を取ったら身体に負担のかからない、もっと柔らかくて着心地・履き心地のいいものを選びたくなるのです。

その頃には何十年着続けた、元々質実剛健であった洋服がくたくたになってきて、身体に馴染んできているでしょう。

若いうちに我慢をして、硬く着心地の悪い洋服に身を包み研鑽を積み、ファッションの根源であるブリティッシュスタイルを学んでいたか否かで、今後の洋装人生は大きくかわってくるはずです。

すべての根底であるブリティッシュこそ、今改めて見直すべきところだと思います。

ベルンでした!

Atelier BERUN

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