8日目 Huddersfield

BERUNです。

今日は、今回の旅行の重要な目的の1つでもある、”Huddersfield(ハダーズフィールド)”に行ってきました。

ハダーズフィールドは、”デニムの岡山”、”眼鏡の鯖江”、”生地の尾州”、と言うように、”英国生地はハダーズフィールド”と呼ばれている地域です。

この仕事をしていて、かつ英国生地を愛していますと、一度は行ってみたい場所であるはずです。
念願叶い、晴れて今回来ることができました。


ヨーク駅には早めに着きました。
駅構内は実は英国内でもかなり歴史の古い建物だそうで、とても気持ちのいい待ち時間を過ごすことができます。
その後ヨークを出発し、約50分ほどで到着。


出発前に、
「ハダーズフィールド 観光」
と、調べてみましたが、出てくるのは地元サッカークラブチームの情報のみ。
もし予約済みの列車の時間より大幅に早く終わってしまうと、これは時間を潰すところがないぞ。。
そう危機感に迫られました。

駅を出てみますと、駅前は思った以上に栄えていました。
ですが、観光などでうろちょろする場所はどこもありません。
ここに降り立つ日本人は、十中八九仕立て屋でしょう。

こんな若輩者のために、わざわざ駅まで迎えにきていただきました。
取り持っていただいた生地屋さんのご好意に感謝いたします。

今回、案内をしていただいた方はなんと”ウィリアム・ハルステッド”というお方。
(英国にはウィリアム・ハルステッドという別の生地ブランドがあります)

まるで生地屋になるために付けられたような名前です。笑

今回見学させていただいた”Tailor & Lodge”(以下T&L)の工場は、駅からほど近い場所にあります。


50年ほど前には40件以上あった機織工場が、今は4件ほどしか残っていないとのこと。
中国などのアジアが、安価な生地を大量に作り出したことが影響したそうです。

T&Lの工場のすぐ近くにも、とても大きな古い建物があり、そこも数年前までは機織工場だったと言います。
しかし今は倒産し、別の会社のオフィスに変わってしまったそうです。

時代に流されずに、今もがんばり続けている英国生地を、今回たっぷり見させていただきました。

案内されたオフィスには、過去のアーカイブの山がありました。
最も古いものは、なんと1885年の生地。
しかし驚いたのは、130年も前のものなのに、一部を除いてはまるで今季の柄かというくらい変わっていないのです。
これは、本質的な格好よさは、今も昔もこれからも変わらないという確証を得たようなものでしょう。






こちらが1885年の生地。


こんなにボロボロになっているにも関わらず、惜しげもなく広げて触らせてくれました。
感触は指が覚えています。

その後、T&Lの最新のシリーズも見せてもらいましたが、どれもハイクオリティで唸るものばかり。


こちらはハイツイストのウール/モヘア。
盛夏でもまったくシワにならず、ハリが残り続ける優れものです。
わたしも今年の夏用に、ぜひ一着作ってみたいです。


こちらはウール/リネン。
わたしが常日頃から探し続けている素材ですが、なかなか日本にいいクオリティのものがありません。(日本で取引できないだろうか)
こちらは納得のハイパフォーマンスでした!
魅力的な生地たちばかりです。

ちなみに氏に、
「自分が着るなら、super○○までですか?」
と聞いたら、
「高くて120ですね」
と仰っていました。
「それ以上数字が高くなると、ハリや弾力、そしてシワになったときの復元性に欠けてしまう。
たくさん着て働く人であれば、そのくらいがいいと思います」
ということでした。

これはわたしが聞くその道のプロの人、ほとんどが同じ位の数字を答えます。
今のところ聞いた中で、130を超えた人はいません。

アーカイブと新作を見させていただいた後は、工場内を見学。




なんと、1930年ものの織機が、未だに現役で活動していたのです!
氏曰く、
「クオリティが素晴らしい。これでしか作れない風合いがある。」
とのこと。

機械はほとんどが英国製。
稼動部分が油まみれになっていながらも、今なお元気に動き続けている織機。
高いプライドを感じます。
クオリティによっては、製造工程はほぼ昔と変わっていないものがほとんどだそうです。


工場内は耳栓を突き破るほどの轟音で、質実剛健な生地を生産しておりました。

日本はT&Lの中でも最も重要な市場と言います。
仕上げ中、どこのオーダーかとタグを見るたび、ほぼ全てが日本行きの生地でした。

ウィリアム氏は、
「日本人はアジアの中でも、本質的なクオリティが分かる人がとても多い。
他のアジアはモヘアのようなカチっとした触感はあまり好まず、super160など、ソフトで光沢のあるものを好む。しかし日本だけは違う」
と語ってくれました。

知識もあり、物の良さも分かる日本人は、とても大切なカスタマーなのだそうです。


こちらはカットしたサンプルを紙に貼り、それぞれの国に送る部屋。
生地の上にシートが被されてますが、これは大雨のとき、窓から雨漏りするために生地を守っているのだそうです。

日本であれば、雨漏りをなくそう!
もっと環境のいい場所に移ろう!
となると思うのですが、彼らのアナログな思考がとても微笑ましく、大好きです。

機織工場が集まる理由は水にあります。
ハダーズフィールドに昔たくさんの工場ができたのは、水が軟水で、とてもクリアーな生地ができたからだそうです。
近くの丘から流れてくる水がとても上質とも話していました。
ワインは土が重要ですが、生地は水ということなんですね。

イタリアのサルト(いわゆるテーラー)でも、好んで英国生地を使っています。
彼らは仕立て栄えのする生地が何であるかを分かっているからでしょう。

わたしも今まで以上に、英国生地が好きになり、またT&Lで作られていたいくつかのマーチャントの生地も、より自信も持って勧められるようになりました。

最後にウィリアム氏と1枚。
誰一人として寡黙な人はおらず、皆さま笑顔で仕事をしていたことが印象的でした。
すれ違えば笑顔で挨拶し、軽く談笑を交わす。
とてもいい環境でした。
皆さま、この仕事に誇りを持っているのでしょう。

ハダーズを後にし、ロンドンへ向かいます。
道中、乗り換えの列車が運行停止。
リーズという駅で1時間ほど足止めをくらい、無事ロンドンへ着きました。

久しぶりのロンドン。
今日はホテルの近くをぶらっとし、明日、歩き回りたいと思います。
 


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