夏はイタリア生地にも目を向けてみる

BERUNです。

長い梅雨もそろそろ明けそうで、いよいよ本格的な夏がやってきます。

日本の夏は、おしゃれをするには過酷な条件が潤沢に揃っています。これは、一度でも夏のヨーロッパに行かれたことのある方なら分かっていただけることかと思います。

なぜヨーロッパは、ここまで”ファッション”が文化として成長したのか。もちろん美しいものには対価を払う国民性ということもありますが、なにより気候が素晴らしい。
通年湿気もなく涼しい、おしゃれ心を邪魔するものが何もない。

そもそも湿気を含み、太陽もぐっと近づく日本の真夏は、おしゃれとは無縁の気候なのかもしれません。

またヨーロッパの中でも、真夏でも30度を超える日が数日しかない英国と、太陽が降り注ぐ地中海のイタリアではまたファッション文化が大きく異なります。

 

わたしを含め英国推しの日本の仕立て屋は、夏でもカチッとした生地を勧めます。
英国の夏生地には強撚糸(きょうねんし)という、通気性はありながら糸がしっかりと作られたものがあります。

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強撚糸のメリットはシワになりづらく、”タフ”なことです。たとえば営業や日々の仕事時にガシガシ着たい方にはうってつけの生地です。
しかしいくら通気性があると言いましても、生地が厚手のため、風が吹かなくては熱は抜けていきません。7月も後半に差し掛かると、暑さが苦手な方は我慢の限界です。

糸は木などと同じ自然素材のため、水分によって膨張と収縮をします。
イタリア生地のような細い糸で形成された柔らかな素材の場合、日本の夏の湿気では糸が伸びてしまい、シワが元に戻らなくなることがあります。
そういった理由から、永く着る一着をオーダーしたい場合は、質実剛健な英国生地をまずは揃えておくのがいいとわたしは思うのです。特にスラックスは英国生地を強く勧めます。

しかし真夏にもなるとスーツを着る機会が減り、軽い仕立てのジャケパンで軽快にいきたくなります。そういうときは、イタリアの生地を選ぶのもいいでしょう。

 

伊と英の生地では、耐用年数は格段に違います。
そもそも流行を楽しむイタリアと、文化を重んじるイギリスでは、生地の概念が違うのも仕方のないことです。
イタリア生地は3〜5年、イギリスは7〜10年といったところでしょうか。
もちろん、10年以上着ることもできますが、そのくらい経つと体型も変わってきているかと思います。

イタリア生地で作る、または購入する場合は、経年変化という発想は持たない方がいいでしょう。”今を愉しむ洋服”なのです。

柔らかくしなやかなドレープを愉しめるイタリア生地は、これからの時期にぴったりです。
元々、カンカン照りの暑い地中海のイタリアで作られた生地です。灼熱の日本の夏とは湿気こそ違うものの、日照りの強さは近いものを感じます。

ベーシックなものを数着そろえたら、季節を感じる軽やかな仕立てのジャケットを増やしていくと、より洋服を愉しめるでしょう。
着数が少ないうちからイタリアものばかりを揃えてしまうと、耐用年数が短いため、買い替えるサイクルが早くなってしまいます。

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こちらは伊”Carlo Barbera”社の三者混(Wool50/Silk30/Linen20)の生地を使用して誂えた一着。
BERUNのHigh Grade Lineの仕立てです。柔らかな生地は、立体感を得意とする縫い手にお願いすることで、より魅力が倍加します。(こちらは通常価格から+¥32,400で仕立てることができます。ゆくゆくはこちらのラインをメインにしていきたい、と考えております)

 

それにしても、イタリアの親父たちはおしゃれです。真夏でも必ずジャケットを着用しています。
土壁の色に合わせたオレンジやソラーロ(玉虫色)などの明るいジャケットをさらっと巧みに着こなしています。
ピタピタパンツや、お尻丸出しの短い上着丈のジャケットを着ている人たちなど皆無です。街や風土に合った洋服を自然に選んでいます。
もちろん彼らはノータイで華やかなチーフを挿すスタイルが多いのですが、それが嫌味なくできるのが羨ましいですね。

対してイギリスの大人たちは、、、
いや、何も言わないでおきましょう。。
(小声:98%の人たちはよれたTシャツにジーンズです。イギリスの洋装文化はその残り2%の貴族階級とシティで働くエリートビジネスマンによって支えられています)

まぁ、この2カ国の差を見ると、雑誌が取り上げるのはどちらの方か、容易に察しがつくかと思います。

ビジネスシーンは英国モノ、夏のリゾートファッションは肩の力の抜けたイタリアモノで愉しむというのはいいではないでしょうか。

 


Atelier BERUN

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