ボンドスーツに憧れて

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BERUNです。

最近、古い映画を見ていて感じることがあります。
それは、往年の俳優たちが着ているスーツのラペルが細いケースがあるのです。
クラシックなスタイルと呼ばれるラペル巾は9.0cm前後。彼らはそれよりもうんと細い6.0~7.0cm程の衿幅のスーツを着ていることがあります。

このスタイルで有名な方は、初代ジェームズ・ボンドのショーンコネリーではないでしょうか。

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彼の着るボンドスーツは1つのスタイルとなりました。
広い肩幅にバストのゆとりをしっかりととり、長い着丈でエレガントかつスタイリッシュなスーツです。
このスーツスタイルは日本のみならず、世界中にファンを増やしました。

しかしこのスタイルは、ショーンコネリーのような恵まれた体格があるから着こなせるものです。
188cmの高身長に、同性でも惚れ惚れするような端正な顔立ちに、大きな肩周りからのバストライン。
そして一般人とは程遠い小顔を持ち合わせています。
体格もさることながら、やはり日本人と大きく異なるのがこの顔の大きさです。

最近は欧米化し、日本人も海外の方と遜色ないほどまで体格も変わってきたと言われていますが、まだまだ個人を見ると日本人は日本人です。
顔の大きさも、西洋の方とは大きく違います。

そんなわたしたちが、ショーンコネリーのスーツスタイルに憧れて真似をしたとします。
そのとき、作品を見ながら、一目見てわかる1つ1つのディテールに着目するはずです。

「肩巾は広く、ラペルは極端に細く。。これがボンドスーツか。」

そうして出来上がったスーツをいざ本人が着たとき、イメージしていた仕上がりとは程遠いものになってしまうと思います。(コスチューム的な感覚で、ボンドになりたい!と思っている方は別ですが)

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なぜショーンコネリーのあのスーツスタイルが生まれたのでしょうか。そこから考えてみるといいかもしれません。
まず彼の体格のバランスを見ます。間違いなく、何を着ても似合うルックスとスタイルです。
そこにボンドらしさを付け加える必要があります。映画とはいかに熱狂的なファンを増やすかにかかっているからです。
そこで、彼の小顔を活かし、極端なまでにラペルを細くしました。これがハマったのです。(その他にもボンドのスーツは様々な拘りがありますが、今回はラペルに注目して書きます)

おそらく、彼に普通のクラシックな9.0cm巾のスーツを着せていれば、ここまでボンド=スーツが格好いいというイメージはついていなかったと思います。映画に出るということは、どこか普通ではない”色”を加えなくてはいけないからです。

反対に、幅の広いラペルのスーツを着せると、ギャング、マフィアものの映画に多く見られるスーツに変わります。

コッポラ映画などによく見られるスタイルですね。あのスタイルはあれでとても格好いいですが、なかなか日本人が格好よく着こなせるものではないでしょう。

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最近ではダニエル・クレイグに変わり、新たなボンド像が生まれました。シンプルに、より”男らしさ”が付け加えられたように思います。彼のはじめの2作品まではよかったのですが、最近の作品は少し”細すぎ”ですね。

立った状態ですでにウエスト部分にXのシワが入っているほどです。彼が鍛えすぎて、今まで持っていた服が全部キツくなってしまったという設定でしたら納得できますが笑
上の写真を見てみても分かる通り、ウエストがタイトすぎでバストラインにも変なシワが出てしまっています。着丈も短過ぎですね。こういったサイジングでは、せっかく素晴らしい仕立てのスーツを着ても台無しになってしまいます。スーツはサイジングが全てといういい例ではないでしょうか。

映画はいつも夢を与えてくれます。ダニエルクレイグに変わってから、わたしの周りでは筋トレを始めた人がたくさんいます。
それはとてもいいことだと思います。事実、スーツを格好よく着るためには、多少なりとも体格の良し悪しは重要です。

映画を見て憧れるのは導入としては素晴らしいことですが、それをそのまま鵜呑みしてしまうのは、少し留まってみてもいいかと思います。

作品に出る方々は一般の人ではありません。我々一般市民は、色やスタイルを持ちすぎず、程々に装いを楽しむのが何よりではないでしょうか。

 


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