何のためにスーツを着るのか

BERUNです。

阪急メンズ館のイベントも6日目です。
明日が最終日になりますので、お近くに来られた際は、ぜひお待ちしております。

GW明けの一週間ですので、百貨店自体にご来店される人も少ないです。お一人お一人の方とゆっくりお話しさせていただいております。
このブログを通してわざわざ着てくださった方々もいらっしゃいました。本当にありがとうございます。
これからも気を引き締めていくきっかけをいただきました。

洋服は秋からが本番の世界ですが、夏には夏の楽しみ方があります。

こちらのシアサッカーのスリーピーススーツは、はじめハンガーにかけていたのですが、阪急のマネージャーの方が大変気に入っていただき、急遽トルソーを出して飾ってもらいました。業界の方々にはとても反応のいいスーツです。ジャケットだけではなく、スーツで作るから価値があります。

夏はクールビズ制度によって、上着やネクタイを締めない方たちが増えます。
アンチクールビズ(ACB笑)の我々は、着なくていいのであれば、何を着てもいいですよね?と、半袖シャツ姿よりも涼しげに見えるジャケットを羽織り、正々堂々と夏を楽しみます。
そのため、オンにしばったダークカラーのスーツスタイルには限定せず、リネンやコットンなどの、素材感のある軽快な生地でスーツを作ることも、これからの季節は考えてもいいスタイルです。

わたしは昔から、20万の高級ダウンジャケットを買うなら、20万でチェスターコートを仕立てるか、ツイードのスリーピースを仕立てた方がいいと伝えています。
限られたお金をどこに払うかが、自分の人生の豊かさが増すだろうか、と考えたとき、後者を選んだ方がいいとわたしは思うのです。
夏なら、休日はTシャツ短パンにサンダルで過ごすのも何もわるくはないですが、リネンやシアサッカーを着て、テラス席でゆっくり過ごす。そんな日もあっていいと思います。それこそ、お金では買えない”至福の時間”です。
人生を愉しむことにお金を払う。それが生きることの大部分であると思います。

こういったスーツは、恥ずかしそうに着るのではなく、かと言って自信満々に着るものでもありません。
あくまで普通に着てほしい。まるでポロシャツ姿でいるかのように着てもらえたら本望です。そのように着こなせるまでには、やはり長い年月がかかりますが。

展示会中、周りのスタッフの方とお話ししていると、多くの方が口を揃えて、「フォーマルウェアは興味があるが、きっかけがない。または、勉強したことがないからわからない」というようなことを話してくれます。
それだけ難しい業界だと認識されているのを感じたと同時に、多くの可能性があることも分かりました。

平日の日中、お客様が落ち着いているときには、スタッフの方々に生地の話や仕立ての話を色々伝授してました。

簡単な話では、英国式とイタリア式(北、中央、南)の大きな違い。仕立ての良いスーツとは。なぜわたしが英国を勧めているのか。イタリアクラシコはどんなシーンで着用するのが望ましいのか、etc。。

洋服も簡単な話で結構です。うんちくではなく、洋服とは?の部分を知り、人に自分の想いを伝えられるようになってほしいのです。ただ着させられているのと、それをどんな想いで着ているのかを自分自身に落とし込んで着ているかの違いは、周りの人たちには伝わります。

洋服は、ただ単に自分をよく見せるものではありません。控えめで、周りの人や町を引き立たせるために自分があるという在り方が、この世界の本質であることを、もっと多くの人に気付いてほしい。
装っているときは、いつも以上に人に優しくなれる。穏やかな気持ちでいられる。
アンダーステートメントで、質実剛健なさまが、正統派で生きる人たちの力です。

新卒のとき、BERUNが神楽坂に移転してすぐに外営業の飛び込みで来たH君。ミイラ取りがミイラになったとお互い笑いながら、気が付けば4年の付き合いになります。

彼は22歳当時からトラディショナルなスタイルを好み、最近できたパートナーから服がおじさんくさいと言われようと、一切動じない若き戦士です。パートナーに言われて服の路線がイマドキなスタイルに変わるようではまだまだです。(20代でバラクータのG9を私服で着ていたら、そう言われても無理はないでしょう笑)
もちろん紳士服は安い買い物ではありません。ですが、20代というプルプルの脳みそのときに、本物を着て装うという体験は、何物にも代えられない経験になると思います。
彼は昨年栄転し、新しい会社にリネンのスラックスに三者混のチェックジャケットで行き、上司を驚愕させた逸話を話してくれました。
マイノリティの世界ですが、同じ共通言語をもった人と出会えれば一瞬で高い水準で仲良くなれます。

今回、英Edwin Woodhouse(エドウィンウッドハウス)社のMohair混のメッシュジャケットを納品しました。一切遊んでいない真面目なネイビージャケット。
肩パッドは入れてません。生地に十分なハリがあるため、構築的な作りに見えます。そのため、見た目以上に着心地はいいです。

タイは2年前にBERUNが作ったシルクリネンのレジメンタルタイ。色合いがきれいで、これからの季節とても活躍します。

他人からの借り物ではない、自らが選んで納得したスタイルを身にまとうことが、その人の人生を限りなく昇華させてくれます。

わたしが思うにスーツとは、自分をよりよいところに連れて行ってくれるもの、だと思っています。少し背伸びをして格好をつけることを続けているうちに、それが自然なさまになっている。美しく生きたい人には、学んで感じて、知っていただきたいと願っております。

 


Atelier BERUN

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