神楽坂5年目 着倒して直して紡いでいく

BERUNです。

6月はたくさんの方に来ていただき、忙しく楽しく過ごさせていただきました。
2019年も半分が終わり、下半期に入りました。

本日、7月1日は、BERUNが神楽坂に移転してきた日です。
気がつけば丸4年が経ち、5年目に入りました。古巣の赤坂見附が懐かしいです。
HPにブログを書くようになり、過去に書いていたアメブロの記事が、どんどん置いていかれているような気持ちがあります笑
お恥ずかしいですが、存在すら知らない方がいるかもしれないので、URLを貼っておきます笑

〜伊達男日和〜  ameblo
https://ameblo.jp/fassione/entrylist.html

傷は直して着続ける

最近、お直しの依頼が立て続けに来ました。
作った日付を見てみると、2012,3年頃に作ったものが多いです。”ヘビーに着ている方の場合は”、そのくらいで一度目の修繕を行う頃がやってくるのでしょう。
大切にしすぎて、着ずにしまっておくのは本当にもったいないです。いい服だからこそ、第二の皮膚のように、着倒して付き合っていってほしいです。

BERUNの想いは、まず10年。そこからより深い付き合いをしていく、真のパートナーになっていってほしい。

<FINTES Super 110’s 2012年>

こちらは2012年に完成した伊FINTES社のフランネルスーツ。鋭利なものに引っかかってしまい、肘が破れたと言われ、預かり修理いたしました。
襟の裏の日付を見ると、その当時の生活や思いが戻ってきます。FINTESは今ではもうBERUNでは扱っていない生地メーカーですが、当時は結構使用しておりました。このようにわたしの作風が変わっていく様を、お客様と共に歩んでいけるのもありがたいです。
イタリア製のSuper 110’sという、あまり耐久性は望めない生地ですが、最初のメンテナンスまで7年もちました。

K様は今ではBERUNの洋服は20着ほど持ち合わせていて、360日はBERUNのコーディネートという、トラッドを地で行く方です。
氏曰く、全身BERUNだと何を合わせても合うため、洋服のことを何も考えなくてもよくなり、とても楽になった。そして気が付いたら、周りが自分を見る目、評価が変わっていった。そこで改めて洋服の力、必要性を感じた、と話してくれました。
もう他にもたくさん着る洋服はあるのですが、この一着目に強い思い入れがあると仰ってくださり、直して着続けていくという選択をされました。
肘やヒザの破れには、かけはぎ修理はあまりお勧めできません。かけはぎはあまり負荷のかからない場所には適していますが、アクションがあるところには、このようにミシンでたたく修理が適しています。このミシンでたたく修理も、職人の腕とセンスが試されます。

<EDWIN WOODHOUSE Summer Comfort 2013年>

同時期に、反対側の肘が破れた上着を他のお客様から預かりました。商談やPC作業で肘が人一倍擦れるため、同じ場所が破れたスーツを2着お直しすることに。
もう一方の上着は、英国に在庫がまだある生地でしたので、腕部分のみを生地から交換して仕立て直すという修理をすることにしました。上の写真のスーツは、すでに廃盤になっている生地であったため、ミシンでたたく修理を行いました。

このように長く洋服を着ていると、その人の「着方の癖」が見えてきます。そこに気付いて直そうと行動に移すためには、まずこうやって目に見えるショックを体験する必要があります。

特にわかりやすいのは靴だと思います。靴はその人の歩き方や癖が顕著に現れます。どこか部分的に凹みや傷がある場合、それは放っておくよりも、歩き方を見直す方が、自分自身の健康のためにもいいと思います。
わたしも初めて購入した高級靴で、深い傷をつけてしまったことから、メンテナンスの技術をもっと磨いて、その傷を目立たなくしようと決心しました。
歩き方から腰の位置がずれていき、そこから肩、首と全身のゆがみへと派生していくケースもあります。洋服はその人の「今」を映し出す鏡です。だからこそ、自分の身体に合っているものを着る必要があるのです。

エルボーパッチで肘を補修

<Holland & Shelly Tweed Jacket 2013年>

こちらのツイードジャケットは、元々エルボーパッチは付いていませんでした。お客様がこのツイードジャケットを本当に気に入ってくださり、「冬は作業着のように毎日着てます」と話してくださいました。本来のツイードとしての正しい着方でガンガンにヘビーローテーションしていただいたジャケットです。身頃や袖が汚れやシミだらけであったので、さすがに、、ということで修復と合わせてクリーニングをしました。
クリーニングと修理を経て仕上がってきたものは、「これから納品です」と言っても納得してしまうくらい綺麗な状態に戻りました。

元々エルボーパッチを付ける前はこういう状態でした。

ヘビーに着ていただいたので、広く破れていました。ここまで着ていただけたらツイードとしては本望です。本来、エルボーパッチというのは先に付けておくものではなく、こういう風に破れた場所に貼りつける、アップリケの役割でした。それを現代のこの消費社会で、現実にやることがとてもうれしいです。

<British Tweed Hand Knit>

BERUNのオリジナルニットですが、一部の方からは、「パジャマのとき以外はこれ着てます」というくらい気に入っていただけているアイテムです。オーダーで、サイズ通りに一着ずつハンドの編み機で織られる贅沢なミドルゲージニット。着れば着るほど、自分の肌のように馴染んでいくのがこのニットの特徴です。

良い服を直して着続けていくということ

良い仕立ての服を、修理をして着るという思考が、素朴で素敵ではないでしょうか。しっかりと自分のサイズに合った洋服を、このように修理して着続けている人がいたら、わたしは好きにならずにはいられません。

まずは10年。人は10年も経てば身体つきも変わってきます。10年目以降からは、自分自身が律して一つのものを着続けていく努力をする必要も出てきます。使い捨てることが当たり前の時代ですが、しっかりとコストをかけて、一つのものを直して使い続けることは、とても有意義で、豊かな選択だと思います。

自分が納得したものを手直しして、愛するものに囲まれた人生は、誰からも価値基準を付けられない自分だけの人生です。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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