美意識を昇華させる

BERUNです。

先日、友人のKeiichiro氏にお願いしていた時計の革ベルトが完成しました。

黒のクロコダイルのヌバックという、あまり市場では見かけない革です。写真ではわかりづらいですが、うっすらと起毛がかっています。柄の取り方によって表情が全く変わるため、ベルトのサンプルを当てながら理想の柄の部分を探していく時間がとても楽しかったです。
ビスポークのため、穴は1つのみ。25歳のときに意を決して購入したレベルソですが、革ベルトが一新したことで、とても新鮮な気持ちになります。

衣食住の概念が変わる

いい靴はいいところへ連れて行ってくれる
という格言がありますが、
いい服はいいところへ行きたくなる」ものです。

今、「衣食住」という言葉の存在が見直されるかもしれないところにきています。このどれにも重きを置かない”新しい種族の人たち”が、これからの時代を作ろうとしているからです。
そもそも、今の世界の美意識の基準は西洋から来ています。日本は戦後、その基準に合わせていくだけで必死でした。土壌が育っていない荒野の上に煌びやかで壮大な建物を建てようとしてここまできました。これまで我々は、土壌を育てるということを怠ってきました。その影響で、衣食住に本質的な価値を見出せない人が増えてきたのです。そのツケが、今まさにここに来ています。

すぐに役にたつものは、すぐに役に立たなくなる

高度経済成長の急速な成長で、日本は目まぐるしいスピードで成長していきましたが、こと土壌・文化を育てることには重きを置いてきませんでした。それは急速に成長することを考えると致し方ないことです。次々と新しいものを生み出していくなかでは、立ち止まっている時間はありません。

日本はアジアで最も先に成長を遂げた国です。現在ではGDPは中国に抜かれ、今後、経済発展している国々に抜かれていくでしょう。その流れにあらがうように、これからも成長をと邁進するのもわかります(今までそのやり方で勝ってきたので)。ですが、われわれ日本人が進むべき、また望まれている道は、アジアの文化国として発展していくことだと思います。

1970年代に日本のファッションデザイナーが世界に渡り、注目を集めたのをきっかけに、日本人らしい解釈の洋のセンスで、世界と戦えることを示しました。
その後、食でも世界を圧巻するようなシェフが次々と現れていきます。住環境では、安藤忠雄のような(好みはありますが)、日本を代表する建築家も現れてきています。最近ではnendoのように、日本のデザインチームが世界のデザイナーの注目を集めるようになっています。日本が世界に名を残すような行動は、これまでたくさんの偉人たちがしてきました。

初めの入り口は、親や周りの人によって替わることはありますが、その道のプロを目指そうとでも思わないかぎり、多くの人がはじめに興味を持つのは、3つの中で「衣」ではないでしょうか。思春期の頃、外見をよりよく見せようと、ファッションに興味を持つ方は多いと思います。
この流れは、日本が何から世界に名乗りを上げたのか、歴史から順番をたどっていくと見えてきます。大きな波では、やはり衣⇒食⇒住です。
これは人間が感性を磨いていく流れでも、理想的だとわたしは考えています。

現在は、「衣食住」や、勉強することに時間がかかるものに重きを置かず、すぐに成果が出るものばかりに手を伸ばすようになっています。その結果、世の中の流れについて行き続けなくてはいけなくなってしまいます。今の時代は良いが、1,2年後には綻びができているような人間では、自分らしく生き続けるのは難しいでしょう。何事も基礎を学ぶことで、生きたいような生き方を選択することができます。

ファストファッションの影響で、人間もすぐに結果を求められるファストヒューマンがもてはやされるようになってきています。自分自身に価値を与えるためにも、じっくりと時間をかけて、文化、歴史を学ぶことはこれからの時代だからこそ大切です。

美意識の成長

美意識の成長は上昇気流のようにぐるぐる回って登っていきます。円を描いたバネを想像してみてください。一周しても、同じところには戻りません。必ず、上か下かに移動しています。このように一周するごとに、自身の感覚が研ぎ澄まされていくことを上昇気流だと思ってみてください。


新しい洋服を新調すると、その洋服に見合った場所に身を置きたくなります。いつも言っていますが、少し背伸びする、緊張するくらいの物の方がいいでしょう。感性が活きてくると、それに見合った住まい、食事、その他いろいろなものをより愉しみたいと思うようになります。
それが回り回って一周して、自分のワードローブを見てみると、過去に手にしたものが、物足りなく感じることがあるかもしれません。もしくは、購入したときは不釣り合いだと思っていたものが、自然と似合うようになっているかもしれません。それは他の世界の物を見てまわり、センスが磨かれていったからです。

昨今は、物を増やさず、物に縛られない、というような考え方が取り上げられています。
ですが、わたしは20,30代の本物をまだ何も知らない若者が、これでいいと言い切るのは、とても寂しく、もったいないことだと思います。
自分が本当にこれだと感じた、または見ているだけで心が満たされるものの空間に身を置くことは、とても豊かな人生になるとわたしは思います。
そこに行きつくまでには、もちろん不必要なものを買うこともあるでしょう。それは間違えた買い物として自分を戒めるのではなく、そのときに欲しいと思わせてくれたことに感謝をして、手放しましょう。(こんまり理論です)

そうすることで、本当に必要であったものだけが自分の身の回りに置かれます。美意識の上昇気流の旅は終わりませんが、雲の上まで突き抜けたとき、自然とミニマリストになっているかもしれません。それが本当の意味で、鞄一つで世界中に行けるということだとわたしは思います。

 


Atelier BERUN

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