自分を保ち続けるために

BERUNです。

麻、フレスコの洋服の受け渡しが続いております。
日本の夏に適した生地といえば、日本製であるに越したことはありません。

ふた昔前、日本の生地メーカー「M毛織」のSリックという生地が日本の夏で爆発的に流行りました。さらさらとしていて、真夏でもとても過ごしやすい!と当時のスーツ着用者はこぞって夏はSリック一択!となった方も多かったと聞きます。
その生地は確かにとても涼しい生地です。が、世界に通用する格好良さがあるのかといえば、そうは思えません。

時代が進み、洋服文化が熟成されてきた現代、国産生地で果たして本当に格好いい洋服ができるのか。
格好いいの観点は人それぞれですが、わたしが国産の生地でこれだ!と納得のいくものは限りなく少ないです。(わたしの勉強不足なだけかも知れません。わたしは根っからの舶来主義なので笑)

やはり麻ひとつとっても、アイリッシュリネンの格好良さは格別です。
日本でもフレスコと同様の作り方をして販売している生地がありますが、やはり仕上がりを見ると差は明らかです。
これは現在の美の基準が西洋になっているので仕方のないことです。

持って生まれたものをそのまま伸ばせばいい西洋人と、土俵の違うところで新たに一から挑み続けなくてはいけないアジアでは、この差を縮めることはなかなか難しいですね。

白スニーカーは夏に履きたくなる

カジュアルなスニーカーはジャーマントレーナー!とドイツ派のわたしですが、夏になるとスペルガも履きたくなります。

そんな中、いつも行くトランクでまた見つけてしまいました。

イタリア製のスペルガ。90年代で生産が終了したものですが、ほぼ未使用でシンデレラサイズでした。夏のジャケットスタイルに合わせたくなります。

夏はアンコンストラクテッド(非構築的)なジャケットや、洋服の生地のボリュームも薄くなるので、スニーカーで合わせるコーディネートがしやすくなります。
ジャーマントレーナーはジャケットに合わせる靴ではありませんが、スペルガはアリです。

古着を見漁っていると、当時、本国で生産していたものなど、オリジナルに行き着きます。
何も盲目的に、当時のものがいいんだ!と言いたいわけではありません。
ですが、シンプルにやはりそのものが生まれた場所で作られていたものがリアルであるから格好いいのです。
もっと大量生産を!と舵を切った途端に、ものづくりは本質から外れていきます。その流れは止めることはできないので、せめて当時のものに触れて、熱量を感じていたい、という男心なのです。

FOX Fresco Jacket

こちらはFOX BROTHERSの春夏向けの生地。ウール100%のフレスコ織のため、肉厚ではありますが通気性があります。

こちらの生地はわたしが個人的に作りたいと思い、アイデアを膨らませていた途中だったのですが、わたしよりも似合うお客様が来られたので、思いを託すことにしました。
色はカーキですが、ネイビーのウインドーペーンが入っているため、はじめてのグリーン系ジャケットにも取り入れやすいです。

ベージュのコットントラウザーズを履けばカジュアルになりますし、ネイビー、ダークグレーのトラウザーズを履けばビジネス用に使うこともできます。

Irish PubからIrish Linenへ

アイリッシュリネンのスリーピーススーツが完成いたしました。
代官山でセンスの光るアイリッシュパブを営むお客様。

1着目はツイードのスリーピーススーツ。そして今回はアイリッシュリネンのスリーピースです。
スコットランド、アイルランドを愛する方だからこそ、中途半端なものを使わず、夏用のスーツはわたしの中でアイリッシュリネン一択でした。
その方のイメージを創作して、その人をより作り上げていくことができるのが、洋服の醍醐味だと思います。

ブラウンとカーキの間のような色です。

一目見て、「この色にしましょう!」と決めました。リネンは色が退色していく生地です。頻度よく曲がるところから色が白くなっていきます。
そのため、わたしはあまり濃色のリネン(ネイビーやグレーなど)は勧めません。
退色していった様が格好いいと想像できる色だけをご提案しています。

硬い生地であればあるほど、タックが引き立ちます。2タック、どちらともかなり深めにしてあるため、履き心地もとても軽やかですし、何より格好いいです。

ウエストコート(ベスト)は襟付き、そして背中にも表地を使っています。こうすることで、真夏はジャケットを着ずにウエストコートだけで成立する着こなしができます。

ビスポークの真骨頂は背中に現れますね。
最高に格好いいクラシックカーに乗っていても、乗っている本人はその外側から見ることができないように、本当に格好いい洋服は自分のためではなく、周りのために存在しているのだとわたしは思います。
最高に格好いい車、センスのある人を見かけたときは、一日中幸せな気持ちになりますね。そういう人たちは、周りに夢を与えているのだと思います。

380gmsという肉厚な生地。
アイリッシュリネンを前にすると、麻は夏に適している素材です。とは言いづらくなります。
この肉厚さ、下ろしたての数年は日本の夏では苦行に近いでしょう。
しかし、何年か着ていくうちに、柔らかく身体に馴染んでいきます。そのあとは、夏でも存分に楽しむことができます。(身体が暑さに慣れるというのもあるでしょう笑)

季節を問わず、会社の中で服装が自由になってきたという話をよく聞きます。だからこそ、簡単な装いには手を出さず、自分で考えてみて、本当に自分がしたい(してみたい、またはなりたい)服装をするのがいいのではないでしょうか。

ネイビー、グレーでなくてはいけないという時代は終わりましたから、素材や色も制限なく、自由に考えてみましょう。

自分を保ち続けるために

あるニュース記事に目を通したところ、現代の20,30代の若者のうつ傾向にある人が増加しているという内容でした。
これはコロナによって、人間が人間らしく生きることを抑え込められたのも原因のひとつではないかと、個人的観点では感じます。
今までの当たり前が当たり前にできなくなった今、何を信じればいいのか、わからなくなってしまったという方も多いでしょう。

わたしがシンプルに感じることとしては、必要以上にメディアに触れない方がいいと思います。出回る情報を無闇やたらに信じ込みすぎない。何事もほどほどにしましょう。何が正解かわからない世の中です。
そして、このような時代だからこそ、自分という柱を持つことがとても重要だと思います。

わたしが自分を崩さずに自分らしくいられるときは、美しいものを見たり、感じたりしているときです。自分の好きな洋服を着て街を歩く時間に喜びを感じています。

やはり芸術や文化、美しいものは人の心を豊かにしてくれます。

柱は洋服に限らず、人それぞれであってもいいと思います。
何かを信仰するということが諸外国に比べて少ない日本では、自分一人で立ち続けるのはとても大変なことです。
だからこそ、これが自分である!「This is me!」というものを見つけたら、それを磨き続けていくことで、何かが揺らいだとき、大変なことが起こったときに、それが大きな支えになってくれます。

アフターコロナこそ、「自分とは何か」を見つけた人が、自分らしく豊かに暮らしていけるのではないかと思うのです。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301

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