男はメンドクサイよ

紳士とは?

先日の「老舗の流儀」から、日本人にとっての紳士とは何か、をより知りたくなり、古めの本を読み漁っています。

こちらは日本対欧米、男の作法。
池波正太郎氏は生粋の江戸っ子。日本人の粋をこの本で語ってくれています。一度は読んだことのある方は多いでしょう。

この本を初めて読んだ直後、当時の私は、今の妻との初デートを控えていました。
蕎麦屋で、蕎麦の食べ方はこうするんだ。ビールはグラスになみなみ注ぐものじゃない。ちびちび注ぐんだ。なんて至極メンドクサイ男をやっていました。笑
思わずそう言いたくなるような、胃もたれするくらい男くさい本です。歳を重ねる毎に読み返したい名著。

対して板坂元氏は、英国と米国合わせて27年暮らしていた方。
そんな方が語る世界基準の紳士とは。という本。
名指しで人をばんばん批判していますし、こうするのが正しい、これは間違いだ。と言い切っているのもとても気持ちがいい。
こちらも胃もたれ必至の本です。

そういえば近頃、このような濃厚な本が少なくなったなぁと思います。
昔の人は上司や目をかけてくださっている方が色々指南してくれていましたが、現代では、我々は教えてもらう人がいません。

SNSやインターネットで簡単に情報が調べられるようになった反面、生きた教育が行き届かないという欠点が明るみになってきました。
SNSで良い悪いを判断できるのは所詮2Dです。立体で、そのもののリアルな空気感を感じることが、感性を養う上で何事も大切です。

いかに無駄を愛せるか

昔テレビでお笑い芸人の人がスーツの歴史のことを仕立屋さんから教えてもらったという話をしていていました。
その時の話はこうです。
なぜスーツのズボンの裾が今折れているかというのが、昔イギリスの貴族がアメリカの社交場に行った時に雨が降っていて、とっさに裾をまくって出た。
それを見た現地のアメリカの人たちが、こういう着方が今はイギリスで流行っているのか、となり、ダブルの裾が誕生した。と言う有名な話。
その方は続けざまにこう言いました。
「じゃぁ、もう必要なくないですか?」

スーツのフラワーホール、昔は詰襟の形だったものが、襟が寝る形になり、そのフラワーホールはその当時の第一ボタンの名残である。
「じゃぁその第一ボタンももういらなくないですか?」
と言っていたのです。

これはもう一つの笑い話だったので、面白おかしく話していたものですが、これがネタになっている時点で、いかがなものかと私は思ってしまいました。

紳士とは何か、と言われたら、一言で説明するのは簡単ではありませんが、要約するならば、無駄を愛することができる人、という考え方があると思います。
損得勘定に振り回されるのは紳士ではない。と板坂氏は語っています。

そんなことに感化されておきながら、燃費の良さで車を選んだわたしは、紳士と最も遠いところにいるのは間違いありません。

洋服をギアとしてだけ見るのであれば、毎日アウトドアブランドの洋服を着ていれば充分です。
あれに勝る機能的な服はありませんから。
しかし、春秋冬はノースフェイスのマウンテンパーカがあればOK。そして夏は速乾生地のポリエステルTシャツが数枚あればOK。
そんな格好が果たして本当に豊かなのでしょうか。まぁ、それが根っこからいいという方もいらっしゃるので全否定はしませんが、時代がそっちに傾きすぎているような気がします。

何も持たないことが美化されすぎている昨今。自分がこれだと思ったものを持つ喜びにフォーカスを当てているところはあまりありません。

しかし、この時代だからこそスリーピーススーツを着る。丈の長いチェスターフィールドコートを着る。という選択をできる稀有な人が、時代に流されず、生きたい人生をタフに生きていける人だと思うのです。

そのカジュアル化の流れに伴い、ワークマンのように洗えるスーツ、そして青山のようにパジャマスーツというようなアイテムが爆発的に売れているのが日本の現状です。

人生を生きるために必要なもの以外は全て無価値であるという発想になってしまえば、気持ちが疲弊してしまい、生きている喜びを見いだすのもとても難しくなるでしょう。
人生の旨味とは、はねつきのたい焼きのはねの部分のように、本来は必要のないところにこそ、面白み、旨味があるのだと思います。
わたしはそのはねを思う存分楽しみたいのです。

さて、ゴタクのような長い前置きが済んだところで、秋冬服が完成してきております。

これからの季節、この手の服はとても活躍しますね。

この秋はグレンチェックに限る

改めて、グレンチェックのスーツの格好良さに陶酔しております。
わたし自身でも今、Holland & sherryのグレンチェックの生地でダブルのスリーピースを仕立てております。
グレンチェックは色の明るさ、柄の大小、格子の色合いによって、全く異なる表情を見せてくれるので、同じ柄はありません。
英国ではグレンチェックは無地とみなす。という言葉があるように、もはや永遠の定番の柄です。
チェックのスーツなんか着られないよ、、という方にこそ着ていただきたい。
そして、普通な生地こそ、徹底的に普通に作るのが正解です。

グレンチェックにドットのタイ、まさしく「セントオブウーマン」の世界!!
昨日久しぶりに観ましたが、何度観ても素晴らしい映画です。
ぜひ皆さまにご覧になっていただきたいです。

生地はfox brotersのもの。冬にFOXのフランネルを着るというのご今の時代、いかに贅沢で素晴らしいことか。

わかる人には分かる。それでいいのです。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301

http://berun.jp/
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