想像力と提案力

BERUNです。

先日、お願いしていたパナマハットを受け取りに行ってきました。
わたしは常日頃、自分がお客さんの立場になって、どのような接客であったり、モノづくりだったら嬉しさを感じるかなぁと、日々意識的に買い物をしたり、オーダーをしています。日々の買い物も学びの連続です。

今回お願いしたハットは、お店で帽子の洋書を見ながら、写真のイメージで決めたもの。
パッと見た印象で、「コレカッコいいですね!」となり、ではこの形で。とお願いしたわけです。


完成したのを早速、被ってみたのですが、これがまぁ、、

なんともしっくり来なかったのです。笑

誰に見えるのかなぁと思ってましたら、ハンバーグ師匠でした。笑
(ハンバーグ師匠は好きです)

あー、こういう人いるよね。という感じ。
正直なところ、わたしのスタイルではありませんでした。苦笑

とは言いましても、今回はいつものハットの形ではなく、新しい形に挑戦してみようと思ってオーダーしたというのもありますので、どんな雰囲気になるのかは100%想像しきることはできませんでした。
しかし、だいたいのイメージは、こんな風になるだろうと、一応そういう想像をする仕事ですから、していたわけです。
しかしその想像外をいってしまいました。

想像力と提案力

わたしはこれからの時代に確実に必要な力が2つあると思っています。
それは、想像力と提案力。

まず、大前提として、お客さまはすべてをイメージできるはずがありません。すべてイメージできたら、その道で仕事ができているはずですから。
そういうときに、お客さまの想像を汲み取って、自分とお客さまの想像を共有していくこと。そして、お客さまの想像を、自分の想像の方へと導いていくこと

プロですから、そのモノに関してはお客さまより知っているのは当然です。
お客さまの想像が、今20だということがわかれば、まず20にいるということを汲み取ります。そして、プロのいる100の世界まで、一緒にゆっくり連れていく。
(30しか理解していないようなプロもどきが世の中には沢山いるのが事実ですが、それは今回は割愛します)

登山のガイドさんをイメージしていただきたいです。
例えば、普通の主婦が、
「エベレストに登りたい!!」
と言ったとします。

山登りに例えると、おいおいそんな馬鹿な笑
となりますが、これが現実社会となると、意外とこういうトンチンカンなことがあるのです。

「おっ!いいですね!行きましょう!」
というようなミスリードが平気で起きてしまいます。

その時、真剣なガイドさんでしたら、
「その気持ちわかりました。ですが、あなたの実力だと確実に4にます。なので、まずは高尾山をロープウェイなしで登りましょう。
そしてそれを何度もやって、余裕で登れるようになったら、次は南アルプスの小高い山を挑戦していきましょう」

その中で、食事のメニューや日頃の運動なども提案していくでしょう。

今回の私のハットのオーダーは、私が登りたい山を伝えて、そこに連れて行ってくれたという案内でした。

しかしその山は、実際私が登りたかった山ではなかった。
プロがお客さまの話を聞いているとき、

想像力「あれ。もしかしてこの人、緑の中をハイキングのようなイメージで山登りしたいんじゃないかな?だとすると、今富士山登りたいって言ってるけど、富士山はそんな山じゃないぞ」

そして、そのことを説明したとします。そして、

提案力「わたしでしたら、あなたには◯◯山をお勧めします。標高は2,000m近くで、頂上近くまでゆるやかな登りで、見晴らしもよく、緑も綺麗でとてもいい山ですよ。この山はあまり知られていなくて、人もごった返していないのがいいです。あと、〇〇さん、ラーメンお好きですよね?その途中にある山小屋の味噌バターラーメンがとっても美味しいんです」

こんなことを言われたら、
「あぁー。この人は自分のことを本気で思ってくれてるんだなぁ」
となりますよね。

今年の初めに、オーダーしていたビスポークの靴が完成してきましたが、その時、職人の津久井さんは想像力と提案力を見事に駆使してくれました。

「竹内さん、背も高いし、体格もいいので、シングルソールにすると華奢になって靴が負けると思ったんです。なので、シングルとダブルの間の厚みにしました」

私の体格や好みをイメージして、私が頼んでもいないことをやる。
これがまさに想像力と提案力。
これがばっちりハマったときは、さすがプロ!!と唸ります。

現代は、すでに良いものを作ることができる人はたくさんいます。
見本があり、この通りに作ってください。ヨーイドン!で、そっくりそのまま作れる人はたくさんいます。我々日本人は、元来器用な民族ですから。

ですが、真似事だけでしたら、確実にソノサキへはいけません。上手く作れる人たちのマジョリティの中で埋もれてしまうでしょう。
そこから先は、自らが何を見てきて、何を感じてきたかの想像力の世界です。そして、その人に納得してもらえるような提案をする力。
この2つが確実に必要になってきます。

一流の仕事

わたしが昔、何度かお邪魔していたフレンチがあるのですが、そのオーナーシェフは、昔フランスで初めてフレンチのお店を始めて成功したという日本人。
フランス人が日本で寿司屋を始めてミシュランを獲るようなイメージです。すごいですよね。

晩年その方は中目黒で小さなフレンチをやってまして、数えられるくらいしか行けなかったのですが、その方がフランスで営んでいたお店の屋上にはヘリポートがあったそうです。

お客さまがヘリコプターで来られ、レストランまで降りてくる。
そして席に着くなり、
「さぁシェフ、今日はどんな料理を作ってくださるのかしら?」
という会話から始まるそうです。

これはつまり、お客さまがシェフ(プロ)の想像力と提案力にお金を払っているということ
ここで余計な注文を言うのは野暮だということを、十分理解しているのです。
そしてこれはプロも責任重大です。

つまり、お客さまに選んでもらうということは、プロが責任を取らずに済むということにもなるわけです

これはプロもどきの方は気持ちが楽になりますね。

勝手に選んでくれて、それが変なものになっても責任を取らなくてもいいわけです。
ですが、そこで本物のプロだったら黙っていられるはずがありません。
プロは少し口うるさいくらいの方が、わたしは気持ちがいいと思う人です。

自分が関わる人は、純度の高い方がいい。
ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨かれないように、自分が輝きたければ、輝いている人と多くの時間を共にする方がいい。

日々学びの連続だなぁと感じます。

新しいものを続々と

先週、長袖ニットポロを紹介したばかりですが、今お作りしているのは、夏に活躍する半袖のニットポロ。
2回目のサンプルが上がってきまして、それをチェックしていたところでした。

BERUNのオリジナルのニットは、全て糸から作っています。
そのため、糸の太さ、硬さ、厚み、起毛させるかどうか、撚りはどのくらい強くするのか、、、
そういったことを決めていって、完成させていきます。

1度目のサンプルの生地感は、薄く、柔らかすぎてしまいだめでした。
1度目の倍の量の糸を使い、さらに撚りを加えてお願いした2回目のこちら。

もう写真では伝えられないのが悲しいくらい、完璧な質感です。
初めての感触です。ざっくりしていながら、上質さもある。
ガシガシ着られる、まさに私の求めているクオリティでした。

襟の形と、全体のサイズ感を微調整して、仕上げに入りたいと思います。

暑くなる前の6月には完成させたいと思っております。
ぜひ、完成を楽しみにしていてください。

オリジナルネクタイのこだわり

次の秋に向けて、新しいネクタイもオーダーいたしました。
ペイズリー、小紋柄、新しい色のソリッドタイ、レジメンタルタイ。

かなりいい雰囲気のものが仕上がりそうです。
ちなみにネクタイ工場の方に、今更ながら、金型から起こしているお店はあるんですか?
と聞いたところ、「私の師匠の店と、BERUNさんだけです」とのことでした。笑
(大手はもちろん完全オリジナルでしょう)

ヨーロッパ中のネクタイを見てきて、100点に出会えなかった私としては、柄やデザインだけをオーダーしてセレクトするというやり方では我慢できませんでした。

なので、今BERUNのオリジナルのネクタイをこうして作ることができて、本当に満足です。
唯一無二の究極のベーシックなタイです。

個人店だからこそ、妥協なく良いものを作り続けたいと思っております。

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-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

03-6434-0887

https://berun.jp/

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