BERUNです。
もうすぐ夏の予感。
5月も終わり頃になり、昨年までと違う流れを感じているのが、既に冬物のご注文をいただく方がちらほら増えてきているということ。
夏物は1月2月に頼み、季節が来るずっと前から洋服を準備しておく。
これは非常に良い循環だと思います。
BERUNでは今までは8月のお盆明けから本格的に秋冬物が始まっておりましたが、この早い流れに大変嬉しさを感じております。
今この時期ですと、まだ本格的に秋冬が始まっていないため、生地のストックがたくさんあります。
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新作のネクタイ完成
3月にオーダーをしていた新作のネクタイが完成してまいりました。
これから日本国民総ノーネクタイの時期に入るというのに、このタイミングでネクタイが完成したのにはわけがあります。

3月に家族旅行でグアムに行っておりまして、滞在中ずっと長い時間海に浸かってのんびり佇んでいたのですが、その時に見た海の色と空の色のコントラストがあまりにも綺麗で、子供を寝かしつけてから、色見本を思い出しながら、ずっと新しいネクタイを作りたいと創作に燃えていました。
帰国後、プルプルになっている脳みそをキープした状態で、ネクタイの糸色見本を眺め、色合わせをしていました。
色見本と言いましても、小指の第一関節くらいの大きさしかない色から想像するわけです。それはなかなか骨の折れる作業です。(小指なだけに、というのは心の中だけに留めておきます)
そんなこんなで2時間強、色見本とお見合いを続け、計10パターンの新色を作ることにいたしました。
ものづくりは日々変化、進化し続けていくものです。
昔から変わらず作り続けているものは、ベーシックで間違いのないもの。
新しく作っているものは、私の今の感じているものを投影しているもの。
ビートルズの初期と後期のようなものでしょうか。(例えのハードルが高い)
ネクタイという小物だからこそ、色々と遊ぶことができます。
今回作りたかったものは、自然からのインスピレーション。
そして日本人としての引き算を考えました。
我々日本人は足していく考え方は適していません。
民族的にも引いていく考え方が合っていると思います。
そういったところから、今回の色を選びました。
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まずはソリッド、今回は2色新しい色をお作りいたしました。
左はブルーグレーと言ってしまえばそれで終わってしまうのですが、これもなんとも言えないいい色合いに仕上がってきました。
ここ最近のネクタイは色の名前をつけるのに非常に困る色ばかり作っています。(自分が作っているくせに笑)
もう一色は、ボルドーとダークブラウンの間のような色。色の名前で言いますと、マルーンでしょうか。これもまた何色と言えばいいんだ?という困った色です。
BERUNは完全個人店ですので、こんな感じのものづくりでいいのだと思っています。
大手であれば、パキっと明瞭さが求められるものですが、
「これ何色?でも、かっこいいから良くない?」
くらいのニュアンスの中にこそ、美学が潜んでいるのだと思います。
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こちらはヘリンボーン。
意外と作っていなかった、ネイビーのヘリンボーン。
これは定番になる予感。非常に使いやすい、とても上品なタイです。
グレーヘリンボーンはフォーマルな場面で活躍します。
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こちらは今回かなり作りたい意欲があったドットタイ。
今までBERUNでお作りしているドットタイは、ベースの色に白のドットでした。
今回は、ベースの色と、それにほど近い同系色のドットをあしらいました。
これが意外とありそうでないのです。
グレーにグレーのドット。
ダークブラウンのブラウンのドット。
モスグリーンにオリーブのドット。
この辺りが私の今の気分です。
なんだか、侘び寂びを感じます。
イギリス人は作らないだろうなぁ。この色を作るのは、きっと日本人だけだろうなぁ。
だけれど、トラディショナルなスタイルにすっとハマる。
そして、決して欧州の真似事のスタイルではない、日本人としてのスタイルを作りだすことができるタイになると思います。
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はい、きました。最後はレジメンタルタイ。
今回は挑戦でした。
真ん中のブルーの3色レジメンタルタイこそ、私が海で浸かっていた時に見た海、空、雲の色です。
3色のレジメンタルというのは、色を決めるのが非常に大変なのです。
なぜかと言いますと、色は青と一言で言っても、赤みがかった青もあれば、緑みがかった青もあります。
そのトーンを◯みがかった◯を統一させ、その中で3色全てが合う色を決める必要があるからです。
それを小指の第一関節くらいの色見本を並べて、想像するのです。想像力が全てです。(ちゃんと仕事してますでしょ?笑)
インプットも大事ですが、それをアウトプットする力も試されます。
もう一本の3色レジメンタルタイですが、これこそ何色?のオンパレードの一本です。
一色たりとも色の名前を決められません。笑
でも、こういうのが作りたかったのです。
ディンプルを決めると、陰影でグラデーションのようにも見えるのです。
そのくらい、曖昧な色合わせがとても格好いい。
もう一本は二色のレジメンタル。ブラウンとベージュという組み合わせ。
なんだか美味しそう。
これはブラウンやベージュのジャケットスタイルにぜひ合わせたいです。
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気がつけば、ネクタイの種類もこんなに増えていました。
準備が出来次第、オンラインショップにアップしていきます。
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ベージュ&ブラウン
山形からお越しのK様。
今回は春物のジャケットコーディネートのご依頼でした。

ジャケットはFox Brothersのホップサック生地を使用してお作りいたしました。
トラウザーズはブラウンのコットントラウザーズ。
ベージュとブラウンの上下の組み合わせです。
カチッと合わせたい時は、トラウザーズの色をネイビーにすると、もう少しかしこまった印象になります。


ネクタイは、ベージュのジャケットとはとても相性のいい3色レジメンタルタイ。

K様、いつもありがとうございます!
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ジャケットスタイル着回し術
いつもお越しいただいておりますM様。
今回はジャケットスタイルを2パターンお作りさせていただきました。
もちろん、そのどちらも何を合わせても合うように考えて生地を選定いたしました。
しかもオッドベスト込み。
ジャケット+オッドベスト+トラウザーズの組み合わせでしっかりと合うものを選ぶのは、プロの腕の見せ所だと思います。

お作りしたのは、Fox Brothers社のウール100%のネイビーチェックジャケット。


オッドベストはウールリネンのブラウン。

トラウザーズはグレージュのフレスコ。
とてもお似合いです。

2着目にお作りいたしましたのは、ブラウンのウールリネンのジャケット。
ウールリネンっていいんですよねぇ。

トラウザーズはネイビーのフレスコ。
上にアースカラーの上着を着ることがある方でしたら、ネイビーのトラウザーズはとても使いやすいので、おすすめです。

こちらはオッドベストをもう1着のベージュのものを合わせたスタイル。
とても合います。

最初のジャケットに、ネイビーのトラウザーズを合わせたスタイル。
こちらもいいですね。


せっかくお洋服を増やしていくのでしたら、はじめの頃に揃えるものはそれぞれ違和感なく合わせられるものがよろしいと私は思います。
そうして自分であれこれコーディネートをやっている内に、洋服選びやおしゃれの楽しさに気づいていただけると嬉しいですね。
M様、いつもありがとうございます!
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地球防衛軍
北海道からお越しのH様。
昨年にツイードジャケットをお作りさせていただき、今回はリネンのスタイルのご提案です。
お身体が尋常ではなく立派な作りをされていて、洋服が合うものがないからアウトドアブランドばかり着ています。というのですが、H様のお身体を見ますと、「ですよね。」というお身体です。
一般的な洋服は合うはずがありません。
そして、安価なパターンオーダーの店でも、なかなかこのような方のお身体にピッタリと合わせるのは難しいと思います。
H様のような方からしますと、BERUNは最後の砦のような心持ちでお越しいただいているに違いありません。
「(ここでダメだったら、自分の身体はもうテーラードは合わないんだ。)」
そう思わせたくないために、しっかりと身体の作りを見てお作りいたしました。
H様は地球を楽しんでいるお方です。
お話を聞いていますと、街にいる時間より、ネイチャーをしている時間の方が長いのではないか?と思えてきます。
冬にモールスキンの生地をご提案した際、
私「モールスキンって直訳で、モグラの肌っている意味なんですよ」
と言いますと、
H様「なるほど!確かに、いい線いってますね」
なんと、もぐらを何度も触ったことがあるという。笑
そんなH様、お身体があまりにも立派すぎるので、私は勝手に、宇宙から何者かが地球に接近してきたとき、地球防衛軍の日本代表として出ていただきたいと思っています。
宇宙人が来たとき、たいそう立派な身体をお持ちの方が勢揃いすると、きっと宇宙人方も、
「くっ来る星間違えたぁァぁ!火星に行くべ!」
と退散するに違いありません。(さっきから何言ってるんだ?笑)
そんなことは置いておきまして、リネンのジャケットとトラウザーズ、リネンシャツをお作りいたしましたが、とても格好いいです。


もう、身体のボリュームが全方位に規格外です。
ですが、出すところは出し、おさえるところはおさえる。というようにフィッティングをしておりますので、ぼわんと広がりすぎずに、綺麗に身体に沿っているシルエットに仕上がったかと思います。
H様のような、一筋縄ではいかないようなお身体の方こそ、フィッターの腕の見せ所です。
立体的なお身体の方にこそ、メリハリが大切です。
袖丈とトラウザーズの丈ははじめはかなり長めにお作りしております。
最初の1年は長く感じるかもしれませんが、2,3年経ってきますと、ちょうど良い長さに落ち着くのです。
これは私の長年の経験で確実に言えることです。

自然を愛するH様は、私の考えに共感していただき、特に、ツイードとリネン、これがあればいい。と銘打っているほどこの2つの素材に関心を持っていただきました。

ブラウンのリネンジャケットに、ベージュのリネン。
どちらも厚みはしっかりとしたものです。
お身体の大きさに比例するように、身体の大きい方は生地の重いものを選ぶと、綺麗にハマります。
日頃はアウトドアファッションで無問題ですが、このような洋服に身を包む日も月に何度かあると、人生に奥行き、厚みが生まれます。
私ももっと地球を楽しまないとなぁと思います。
H様、この度はありがとうございました!
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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途