BERUNです。
フランスのある仕立て屋でのお話。
彼がお客様の仕事先まで、オーダーをいただいていたジャケットの納品に行ったときの出来事。
そのときはランチタイムで、お客様は女性と食事をしていたところでした。
納品されたジャケットを見るとすぐに、女性はあまりの美しさに、
「これは美しい生地ね!カシミアかしら?」
と聞いたそうです。
するとそのお客様が、ウインクをしながら、
「カシミアは女性が着るものだよ」
と言ったそうです。
なんとも微笑ましく、美しい話だなぁ~と感心したのを鮮明に覚えています。
今日はそんなカシミアを筆頭とする、ラグジュアリーな生地のお話です。
年に数着、お作りします。
カシミア100%コート。
男として、一着は揃えておきたいアイテムではないでしょうか。
イタリア製の柔らかな生地のため、芯はなるべく薄く、着心地の良さとドレープの美しさを追求しました。
ダークグレーですが、カシミア独特の色が白っぽく色が抜けているさまがなんとも美しいです。
背面には背ベルト仕様。
ポロコート風の仕立てです。
コート丈は膝下120cmと、クラシックなロングコートスタイルです。
肩幅がっちりの、映画に出てくるようなコスプレじみた雰囲気にならないよう、そこは軽めな仕立てにしてモダンな印象を出しています。
柔らかな仕立てのため、前を開けてもきれいに落ちるので、格好良く着られます。
わたくし、冬はツイードツイードと口うるさく言っていますが、カシミアのようなラグジュアリー感あふれる素材もとても好きなのです。
冬はダウンがあればいい、というこんな時代だからこそ、本質的な装いを見直していきたいものです。
カシミアの話に合わせて最近、極上の生地たちを入れました。
すぐ無くなる見通しはありませんが、生地はやはり出会い。
いいものを見つけたら手に入れたくなるのは、仕立て屋の一種の病でしょう。
こちらはなんと、生地の宝石ヴィキューナ(ヴィクーニャ)10%、そしてカシミア90%という極上のラグジュアリーな生地。フランス製です。
35年前のデッドストックのもので、コート1着分の要尺。
写真で見ていただいただけでも、光沢のすごさがお分かりいただけると思います。
はじめは、なんのご褒美かわかりませんがわたしが作りたいと思って仕入れたものです。笑
ですがお作りになりたい方がいるようでしたらと思い、しばらく寝かせておくことにしました。
極上ヴィキューナのデッドストック、なかなか触れる機会はないと思います。
ぜひ、触りにきてください。
こちらも30年以上前に織られたヴィンテージのErmenegildo Zegna、カシミア100%
現行の物と全く比べ物にならないクオリティです。
厚みとハリが素晴らしく、それでいてしっかりと柔らかい。
現代ではこの生地を再生産することは不可能でしょう。
昔のものはよかったと口々に皆様おっしゃいますが、まったくその通りなんだと強く実感した生地でした。
一生もののカシミアだからこそ、真剣に選んで長く着続けていきたいものです。
最初の話ですが、カシミアは男性が着てもいいんです!
ただ、その人の思想と言い方が素敵だなぁと思い、フランス人の女性に対する敬意に素直に感心したわけです。
おしゃれはそもそも女性がするもの。
男性はあくまで引き立て役に回る。
それが紳士淑女の関係なのではないでしょうか。
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