クラシックという名の流行

BERUNです。

この1、2年ほど前から、雑誌や店舗でしきりに”クラシック回帰”という言葉を発信しているのを感じます。
そもそもクラシック(古典的な)という言葉自体、流行りが取り巻く渦の中心にいるものであるため、時代に左右されるものではありません。回帰するという表現が、そもそも的外れではないでしょうか。

わたしはよくクラシックと流行を「台風」に例えますが、”クラシックが台風の目”であり、”流行がその周り”です。流行という強い渦は多くのカスタマーを飲み込みますが、その中心にいる者たちは、悠然と自己のファッションを愉しんでいます。
その台風を意図的につくっているのが、セレクトショップや百貨店、そして雑誌です。昨年まで肯定していたものを今年は否定し、毎年カスタマーの購買意欲をかきたてることに尽力しています。

今夏、雑誌は思い切ったように麻(リネン・ラミー)、絹(シルク)を推し、パナマハットを被ることを勧めています。まるで、大正時代にタイムスリップしたかのようなクラシックスタイルです。
しかし、雑誌という媒体では本質的なものを発信しても、なかなか読者を納得させることは難しいでしょう。声なき説得に力はあまりありません。
事実、2,3年前まで毎月のように推し進めていたダブルのスーツですが、相変わらず街にダブルの着用者は増えていません。おそらく、麻のスーツやパナマハットも、雑誌のみの力では購買にいたる人はあまりいないでしょう。今いる多くのショップ店員の方の中に、クラシックの魅力を存分に語れる人が果たしてどれだけいるでしょうか。
本質的なものはパッと見た表面だけではわかりづらく、思想が入ることではじめて魅力を出すものです。

流行を求める人たちは、何事にもスパイス(ほんの少しの毒)を求めてしまいがちです。王道では満足できず、”自分なりにアレンジしたい病”にかかっている人が多いと思います。そのような人たちには、何も変わった味付けをされていない王道な着こなしは、どこか味気なく、つまらなく見えてしまうのです。

クラシックスタイルを求めて量販店に行っても、本質的なスタイルは手に入りません。そこにあるのは、現代風にアレンジされた”今どきのクラシック”です。

雑誌などで、昨年まで極細(ナロー)ラペル、くるぶし丈のピタピタパンツを履いていた人が、今年になり突然、スラックスはフルレングスで裾巾は広めのものを履き出しています。わたしたちは、言うことが毎年変わるような人のことを横目で流し、じっくりと自己のスタイルで地を固め、素直に根をはっていけばいいのです。

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クラシックを心の底から学ぶことは、おしゃれを愉しむことと同時に、その人の教養にもつながっていくと思います。シンプルにいいものを着ることで、その人の立ち振る舞いやしぐさも自然と変わっていき、時間を経て内面まで成長していくことでしょう。時代に流されることなく、自分の人生を愉しむことが大切です。

最後に、日本という国が流行りの国であるため、流行から脱するにはそれなりの知識や出会いがないと難しいということも、付け加えておかなければいけません。

 

 


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