Bespokeの時代が来た

BERUNです。
久しぶりの投稿になりました。
大阪の地震、そして西日本豪雨。
生きていくことの重さをひしひしと感じます。
被害に遭われた方々の1日も早い復興を願っております。

今年はいつにも増して暑いです。この夏の暑さをどう快適に乗り切ろうか、熟考しているところです。
学校にもエアコンを導入するべきだと言われている昨今。さすがにただ単にACBと言い続けていても芸がない時代に入ってきました。
夏をだらしなくせず、優雅に美しく楽しみたい。その策を考えております。

 

さて、しばらく前に、オーダースーツの全く新しい採寸方法が出て、話題になっていますね。
いかにもIT業界の人が考えそうなアイデアで、面白いなと思って記事を見ていました。

わたしも、誰でも簡単に、自分サイズのスーツやシャツを作れる時代は来るだろうとは思っておりました。
近い将来、空港の金属探知機のゲートのような全身入る機械が店に置かれ、そこに立つだけで全身一瞬で測ることができる。そんなようなことができるだろうなぁと想像しています。そして顔色や髪の色、年齢によって自分に似合う柄を数点自動的にピックアップしてくれる。
そしてそのデータが瞬時に工場に送られ、CADでカットされ、その縫い目の通りに機械が縫製してくれる。
今後はそういう機械も大量生産され、スーツ業界以外でも活用されるような気がします。

色々なオーダーの仕方があってよいと思いますが、ここがOrder madeBespokeの大きな違いですね。
いくらでも簡略化・低価格化できてしまうOrder madeと、時代が変わっても時間とコストをかけなければ作り出せないBespoke。(Bespokeの名の由来についてはThe Bookにて)

自分の身体にジャストサイズのスーツが簡単にできてしまうことのデメリットもあります。
そもそも日本人の体型というのは、決して美しいものではありません。(様々な意見はあるかと思いますが、ここでは好きに語らせてください笑)

昔と比べて、時代と共に変化してきてはいますが、顔の大きさに対し肩幅やバストが少なく、胴長で足が短いというのが我々日本人の特徴です。
つまり、自分の身体に合わせたスーツということは、その体型にぴったりとあったスーツが出来上がるということになります。
想像してみていただけたらお分かりかと思いますが、なかなか美しいスーツとは縁遠いシルエットになりそうですね。
そもそも洋服は西洋から来た服です。ハナから我々には似合うはずがないのです。だからこそ、どのように着ればより自分の良さを引き出すことができるのか、それを彼らよりも考える必要があります。

わたしは自分の体型には何ヶ所もコンプレックスがありました。
それらがBespokeに出会ったことをきっかけに、今ではこのコンプレックスがあったからこそ、Bespokeの価値を感じることができた!と思っています。

Bespokeの強みは、人が採寸することによって、その人の短所であるところをどのようにして長所、またはアジに変えるか、ということを、人間の感性で考えて作り出すことができるところにあります。
そのため、必ずしもジャストサイズに作ることはしません。少し余裕をもたせたり、反対にここの部分はぐっとゆとりをおさえたりしていきます。
メリハリをつけていくことによって、実際の身体よりもスーツ姿の方が、圧倒的に美しく男性的な像になるということを作り出すことができるのです。

細身で背が高いモデルのような方もいますが、彼らが体型に合わせたスーツを仕上げるとなると、すらりと細くて薄い、モードブランドのようなスーツが出来上がります。
若い頃はまだスタイルがいいことは武器になるでしょうが、30、40歳と年を重ねていく毎に、それだけでは表現しきれないものが必要になってきます。
機械が作ったものは”アジ“がないのです。どれも単一で平面的なスーツになり、一人一人個性のある人間たちをころしていってしまいます。

Bespokeの醍醐味は、その人の体型だけではなく、職種や年齢、髪の色、普段どんな動作をするか、どんな人に会うのかなど、すべてを聞き入れた上で最上のものを仕立てるところにあります。

人の身体を測って、そのまま合わせて作ることは、誰にだってできます。
優れたフィッターは、その人の体型の悩みを長所にすることが可能です。

吉田茂のような、背が低く腹の出たおじさんが、なぜあんなにもスーツを格好良く着ることができていたのか。それは氏の体型を熟知したフィッターが身体を見て、テーラーが仕立てていたからでしょう。
イギリス人映画監督であるサスペンス映画の神様と呼ばれた「アルフレッド・ヒッチコック」。彼も決して体型に恵まれた人ではありませんでした。
ですが彼が残っている写真を見ると、どれもとても美しいスーツの流線型で、醜い身体を美しく魅せています。

白洲次郎のような、顔や体型に恵まれた生粋の伊達男が、すらっとした細身のスーツを着ていたら、威厳もなにも出すことができなかったかもしれません。海外の者たちに、従順ならざる唯一の日本人と言わしめた彼の威厳は、質実剛健なスーツが作り出したものであることは大いに考えられます。

自分の趣味嗜好を越えたものを提案してくれるのが、プロの仕事です。
そしてそれは、どんなに機械が発展しても作り出すことはできません。
経験を重ねていくことで、磨かれていく感性やセンスによって作られるものは、その人にしか作れません。1人として、同じものを作る人がいないのがこの業界です。

だからこそ面白いのではないでしょうか。
我々のような仕事は、その人にしか作り出せない唯一無二のものを磨き続けていくことに価値があるのだと思います。
ITに負けるわけにはいかないのです。
わたしはなにも機械がわるいと言っているわけではありません。自動化できるところはしていいと思います。ですが、人でしか作り出せないものは、埋もれさせずに文化として後世に遺していく努力をしていきたいと思います。

 


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