BERUNです。
先週末の土日はたくさんの方が遊びに来て下さいました。
馴染みのお客様と、初めて来られた方、朝から夜まで楽しい時間を過ごさせていただきました。
今のお店に来たのは2015年の7月。当時は27歳の若造でした。こんな若造が神楽坂なんてオトナな街に来ていいものなのか!とまごまごしていましたが、気がつけば5年と3ヶ月が経ちました。
先週末で現在の店舗での営業は一息と言いたいところですが、まだまだ片付けが終わりません。次の土日くらいまでいることになるかと思います。
昨日、店の外の植物を抜きました。
1日手伝ってくれたのは、10年来の付き合いになる美容院cocoluのオーナー鮎澤氏。
カット鋏と剪定鋏を巧みに使い分ける庭師兼美容師です。
抜いた植物は私の自宅に移植しました。何もなくなってしまうのは、やはり物悲しさがありますね。
現在の店は退去後、オーナーの意向でスケルトンになります。
内装の造作は前々借主が有名なインテリアデザイナーに依頼をして手がけてもらったものなのですが、それも取り壊されるということを聞いたときはショックを隠せませんでした。
この日本では、美しいものを残していくということはとても難しいんですね。
自分でいうのもおこがましいですが、この通りにこの植物と洋服屋があった事は、少しばかしは街の景観に貢献していたのではないかと思います。
街の方からたくさん声をかけていただき、改めて良い店づくりをしていたのだなぁと嬉しく思います。
私はこの歴史ある街をたかだか5年ほどしか知りませんが、この5年の間でも長く続いていた老舗が何件も閉店し、その後に大手資本の香りがするおしゃれでイカした飲食店がどんどん立ち並んでいくのは、勝手ながら少し寂しさも感じています。しかし、変化というものには必ずノスタルジックな気持ちはセットで付いてまわるものです。この東京にいる以上は、昔を懐かしみながら、前を向いて変化を肯定していかなくてはなりません。
私は路面を離れ、マンションの奥へと引っ込みますが、神楽坂の街並みを見届けていきたいと思います。
二極化は始まっている
お客様とお話しさせていただいていて、コロナをきっかけに大きく2つに分かれているのをひしひしと感じます。
Aチームは、仕事がリモートワークになり、外に出る機会が無くなってしまったため、洋服のことを考えることがなくなってしまった。という人たち。
Bチームは、出社や人に会う機会は大きく減ったが、それでも格好いいものは着たいから着る。という人たち。
どちらがいいわるいという話ではありませんが、わたしが感じることは、「それは本当に自分で決断したことなのか?」ということです。
どちらの答えも、自分自身で決めたことでしたら、その選択は素晴らしいことだと思います。
しかしそれが、世の中の風潮や周りの人たちの流れに任せてした選択なら、いつかどこかで後ろを振り向いたとき、あのときの選択はどうだったのか、と感じてしまうことになるかもしれません。
これは洋服に限ったことではなく、人生のあらゆる場面で置き換えることができます。
今年は日本、世界中で悲しい話をたくさん聞きます。
それに流されない、惑わされないためには、いつも自分自身の人生を生きることに尽きます。
「自分の人生これでOK!」と思える日を、少しでも増やしていくこと。
洋服が人の歴史と同じ長さだけあり続けるのは、やはり防寒具だけではない、人の本能に訴えるものがあるからでしょう。
わたしは日々洋服の力を感じています。好きな洋服を着て街に出る、人に会うということの素晴らしさは、決してなくしてはいけません。
なんだか今日は熱っぽくてすみません笑
変化していく世界
人の歴史と比べると、現代のスーツが確立されたときなんぞまばたきほどのものです。
今の姿形に固執していては、本来プルプルであるはずの脳味噌も固くなってしまいます。
トラディショナルであるということはベースでありながら、常に時代に合わせて変化していくことがなによりも大切です。
先月サンプルを頼んだカーディガンが完成しました。写真ではどうも格好良く見えないので笑、どこかの折で着用写真を撮ったときにでもご紹介できればと思います。
夏のポロシャツに秋のカーディガン。昨年までのBERUNであれば考えられないことかもしれませんが、常に時代を見ながら、わたしのフィルターを通したアイテムをこれからも提案し続けていこうと思っております。
着々と冬支度
8月の時点で、フランネルスーツやツイードをオーダーしてくださった方もいます。今、秋冬洋服の完成ラッシュです。いやぁ、やはりカッコいいです!洋服は秋冬に限ります。。!!
こちらの写真のスーツは、K様のオーダー。よりクラシックに、より男性的に。ということで、ダブルのフランネルスリーピーススーツ。生地は英マーチンソンの400gmsのヘビーウェイト。イマドキの”やわい”フランネルではない、本物のフランネルです。
ノーベント、トラウザーズのピスポケットは無し。インのツータックに襟付きのウエストコート。完璧なクラシックスタイルです。
ノーベントのスーツはポケットに手を入れたときが最高に渋いです。イメージは「ローマの休日」のラストシーン、グレゴリーペックが一人で歩いていく名シーンです。
逃げ場のないベントがたくし上がるこのドレープがなんとも美しい。これはノーベントでしか表現できません。この格好よさに魅了されて、ノーベントしか着たくないという方も世の中にはいらっしゃるかと思います。
これから続々と秋冬物が立ち上がっていきます。10月上旬には新しい店舗でのご案内もできるように頑張ります。
FOX TWEED
ありがたいことに、基本お任せしていただくお客様が多く、今の時期は脳内フル回転状態が続いております。その方の表面だけではなく、内面、性格、わたしなりのフィルターを通してイメージを膨らませて、生地をご提案しています。その方の想像通りの物を作っては面白くありません。お客様がドキドキして完成を待ち、想像を超えるものでないとビスポークの意味はないでしょう。
その分プレッシャーもありますが、それがこの仕事の醍醐味です。
石川からわざわざお越しいただきました、T様。
FOX TWEEDを使い、ジャケットスタイルをお仕立ていたしました。
トラウザーズはヴィンテージのランバンのフランネル。ウェイトは軽めですが、しっかりとハリがある上質なフランネルです。
タイは現在ウールタイを製作中です。
すでにカシミヤ混のコートをオーダーいただいたり、数年前と比べて、皆様の動く早さに感動しています。
混沌とした世の中だからこそ、お洒落を愉しむのは、間違っていないんだと切に感じます。
Atelier BERUN
東京神楽坂のビスポークテーラー
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