春物生地とコートのお話

BERUNです。

まだまだ寒い日が続く2月ですが、洋服屋の脳内はすでに春夏です。

私自身もこの春夏に向けて作りたい洋服はすでに仕込んでいて、3月に完成する予定で製作しております。

特別な生地を使ったスプリングコートも現在製作中です。完成したときにご紹介いたします。

日々わたし自身の感覚も変わっているので、生地の仕入れのセレクトも変わっております。

明確な変化としては、今までは堅くゴリっとした生地でなくては生地ではないと思っていたものが、そうではなくなってきたということ。

ソフトさの中に芯のある生地にも惹かれるようになってきました。

そんな生地のご紹介をいたします。

まずはこちら。すべてDORMEUILのもの。ドーメルは日本でも名が通っているので知っている方も多いと思いますが、こちらの生地は英国の生地商人から直接買い付けたものです。日本では出回ることのなかったシリーズも潜んでいます。

面白いものでは、春夏用生地でありながらカシミアが入っている四者混のものなど。わたしもはじめて出会ったような生地もちらほら買い付けました。

いつまでも見ていたくなる美しいブルー、シックなグレーと、春夏秋に使いやすい色柄を揃えました。

お次はHolland & sherry(ホーランドシェリー)。プレーンな生地で程よい肉感のあるこちらのシリーズは、春秋のジャケットにとても活躍します。

ここからは英Harrisons(ハリソンズ)。

ICARUSという2,3年前に廃盤になった夏向けのジャケット生地です。

こんなにも日本の夏に使いやすいジャケット生地はなかったのですが、英国は極東の小国を見放したのでしょうか。。笑

わたしのお気に入りの生地なので、ストックはしっかりしておきました。

ウール・シルク・リネンの三者混が程よい光沢を与えてくれて、夏の強い日差しといいパートナーになってくれます。

わたし個人的な意見としては、春夏秋の3シーズンに至っては、ベージュ・グリーンほどいい色はないと思っています。

目が覚めるようなブルーも春夏には着たくなりますが、やはり夏の終わりから秋になっていくときには、少し気持ちは重ための色を着たくなるものです。

その3シーズン、どの季節にも対応できるのが、わたしはベージュ・グリーンだと思っています。

グリーンなんか自分には到底着られない。

と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ、そういう方にこそ着てみていただきたいです。

まったく不自然さがなく、自分の中に入っていくのを感じていただけると思います。

そもそも我々は自然界の生き物ですから、ベージュやグリーンが似合わないはずがありません。

上の生地のように、グリーンの中にネイビーのチェックが入っているものでしたら、合わせづらさもなく、はじめてのグリーンに挑戦するのにいいと思います。

こちらもグリーンのシアサッカー、夏に着たくなりますね。。!

文章を書いている最中に、新たに春夏生地がドンっと届きました。

もうすでに生地棚に収まりきらないです。笑

ピーコート

季節は戻って冬の装い。

今は年末にオーダーをされた方の洋服の納品が続いております。

こちらは以前紹介したFOX BROTHERSとHackett londonの生地。一着しか仕入れることができなかった生地です。極厚な質感は、腕の膨らみと襟のロールでおわかりいただけるかと思います。

ブラックのヘリンボーンですが、織はほとんど見えません。

小柄でありながら、とても着る力のあるA様。本来このくらい厚手な生地は、やはり身長、体格がある程度ある方でないとお勧めできないのですが、着る力のある方はそのルールを守る必要がありません。

熱くお話ししたいのは、このピーコートの着丈のことです。

ハーフコートのような中途半端な丈でもなく、チェスターフィールドコートのような重々しさもない、抜群な丈感です。(写真ではあまり伝わりづらいかもしれません)

この一見、(?)と思うところがポイントです。

こちらのピーコートは国内旅行のときにとても役に立ちます。

着丈の長いチェスターフィールドコートは、地方には少し格好がよすぎるなぁ、という心持ちのとき、このくらいのドレスとカジュアルの間のコートは本当に便利です。

ピーコートと聞くと多くの方が、大学生が古着で着てるもの?と思われていますが、そのピーコートとこちらのものはまったく異なるものです。

ピーコートも、作り込み、そして全体のバランスをとことん突き詰めたら、ここまで美しいコートになります。

大振りな襟周りでクラシックな印象を与え、肩、着丈はしっかりと適切なところに合わせます。

それだけでは野暮ったい古臭いコートになってしまうので、袖のバランス、ボタン位置、ウエストにかけてゆっくりと絞られていくウエストライン、そこを突き詰めることでビスポークの雰囲気が出てきます。

Joshua Elis(ジョシュアエリス)のダブルフェイスのマフラーを合わせました。このボルドーとカーキの色合わせ、もう言葉が出てきません!なんて美しいマフラーでしょう。(わたしが欲しい笑笑)

Cashmere Vicuna Coat

そして最後にご紹介するのは、スペシャルな生地でお仕立てしたコートです。

お店に来られたことのある方でしたら、この生地を見た、触ったことがある方も多いと思います。

わたしが長年暖めておいた特級スペシャルな生地です。

CASHMERE90%、そしてVICUNA(ヴィキューナ・ヴィクーニャ)を使ったコート生地。

Loch Lomondという聞いたこともないフランス製の生地。推定40年前の生地です。

ネイビーですが、うっすらパープルを思わせる色。

ヴィキューナは現在、国を渡って流通するのがとても難しい生地です。

こちらはわたしが40歳になっても残っていたら自分で作ろうと思っていたものでしたが、この生地を素晴らしく着こなしてくださる方に選ばれました。

生地の長さも、小さく短く作ってはもったいない、絶妙な長さでした。お仕立ていただいたK様は身長180後半あり、体格もしっかりとしている方でしたので、ダブルで着丈を膝下でたっぷりと作り、残すことなく使い切りました。

全貌はまたフィッティングされたお写真でお伝えします。

昨年はわたしにとって、長年暖め続けていた生地がかなり旅立った年でした。

また新しい出会いを求めて、お宝探しはおそらく一生続くでしょう。

ものは形になることではじめて魂が宿ります。

その物にどのように命を吹き込むかがわたしの仕事です。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301

http://berun.jp/
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