BERUNです。
「THE・梅雨」という天気が続いていますね。
周りの方々でも、この時期特有の体調不良を訴える方がちらほら見受けられます。
私もこの時期はそのうちの一人ですが、先日、薬剤師の友人が勧めてくれた漢方を服用し始めたら少し緩和されたように感じています。
東洋医学万歳、ですね。
今は夏物は作り終え、秋物の準備をしている段階ですので、仕事は落ち着いています。
この時期に、秋に向けてどういう物作りをしていこうかなんて考えていますが、今の空いた時間を使って動画製作も久しぶりに取り掛かっています。
落ち着いた時期でなくてはできないので、このときにできる限り製作していきたいと思っております。
今回新たに製作したのはこちら。本日アップいたしました。
靴とベルトの色は合わせるのが正解??
色は必ず合わせなくてはいけないのか??と日本の一辺倒なイメージに疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
一般的な角度からのお話ではないため、困惑される方もいらっしゃるかもしれませんが、こういった考え方もあるのか、と思っていただけたら幸いです。
モヘアリネンの季節
真夏で着用するためのジャケット、トラウザーズ、リネンシャツをお仕立ていたしました。
シャツとトラウザーズはリネン100%。
ジャケットはモヘア54%、リネン46%という面白い生地。
なぜ面白いのかと言いますと、モヘアもリネンも主役を張る生地ではないからです。
モヘアやリネンという素材は風合いを出すためにある素材なので、そのメインにはウールやコットンというような万能な生地、いわゆる主役が使われることが多いです。
ウール80%、リネン20%というようなバランスが、一般的には多いです。
英国の盛夏用のスーツ生地では、キッドモヘア60%、ウール40%という生地があります。「スーパーキッドモヘア」や、「サマーキッドモヘア」というような名称で呼ばれています。
やはりこの配合も、名脇役が主役よりも目立っているので、味わい深い演技をしてくれるのですが、モヘアは少し繊細さんのため、危なっかしいところもあるのです。
モヘアは摩擦に弱い、横の力にも弱い、という欠点があります。多用しすぎてしまうとボロが出るのが早いのです。
(余談ですが、モヘア60%、ウール40%というバランスでありながら、びくともしないというような例外の生地もあります。それがドーメル社のヴィンテージのトニックです。
400gms前後ほどある極厚の夏生地(?)は、モヘアの美しい光沢が冴え渡る”美しい鎧”です。
私も日々いい柄が出るたびに抑えるようにはしているのですが、年々ベーシックで使いやすい柄は出にくくなっているというのが現状です。)
さて、話を戻します。
モヘア・リネンのこちらのジャケットは、どちらも夏の素材の王者がタッグを組んだような生地ですので、夏でもとても快適に着ることができます。モヘアの硬さ、ハリ感と、リネンの柔らかく涼しげな風合いが相まり、なんとも言えない不思議な生地感なのです。
弱い生地ではありますが、それを上回るほどの魅力はある生地です。私も2013年に同じきじでジャケットを仕立てていますが、今でも問題なく着用しております。
ですが、ヘビーユースする生地ではありません。6〜9月の夏の時期に、週に、1、2回着れれば大丈夫、という方に向けた生地です。
季節を限定すればするほど、素材感はよりストイックに選ぶことができるので、楽しみが広がります。
I様は、怒り肩で、かつ肩の真ん中に骨が出っ張っている特徴的な肩をされていました。
この骨の出っ張りというのが結構難しいもので、肩パッドが入っている場合であれば大きな問題ではないのですが、今回は真夏用なので、裏地もパッドも省いたアンコンジャケットにしています。この骨の出ているのを感じさせなくするため、色々と工夫しましたが、綺麗に入ってよかったです。
いいフィッテングの洋服は背中に表れます。
BERUNでお作りしているトラウザーズは一般的なサイズよりは、少しゆったりとしています。(本来はそのサイズ感が理想なのですが)
上下ともに理想のサイズ感で合わせることができれば、当たり前ですが違和感は無くなります。
BERUNで作ったジャケットに、手元にある細身の”パンツ”を合わせようとすると、ジャケットが大きく見える場合があります。
しっかりとお尻が隠れる着丈、そしてそのジャケットの裾から”繋がるように”トラウザーズのヒップのラインが表れます。
この繋がりこそ、ビスポークならではです。
I様、この度はありがとうございました。
合わせてお作りさせていただいたリネンシャツの袖はギャザーカフスにしてあります。まくるのがもったいなくなるシャツですね。
四者混の春秋ジャケット
お洒落なご友人と一緒にお越しいただいたT様。
今の時期に初めて来られるお客様には、私は夏物ではなく、春秋物をお勧めします。その方がお客様も、幅広い季節で1着の洋服を楽しんでいただけます。
ある時期までは季節になぞって今の時期は夏物を作っていたのですが、その洋服を”勝負服”として、「神棚に上げてしまった」方が何名かいらっしゃったのです。
(私はお作りさせていただいた洋服は、神棚に上げず、たくさん着てたくさん使い倒してくださいと伝えています。タフな英国生地はそのためのタフさですから)
そうなりますと、季節のことは置いておいて、一番気合の入る洋服を着て、大事な場面に出向いてしまうのです。
結果、真冬の結婚式に列席する場合でも、ライトグレーのモヘア混のスーツを着て参列する、ということが起こってしまいます。
それを防ぐべく、初めてお作りする場合は夏物の生地は避けるようにしています。
想像してみていただけたらと思いますが、初めて高級紳士靴を買おうと思い、梅雨の時期に靴屋に行くと、
「今は雨が多いので、ラバーブーツがいいです」
と勧められ、革靴を買いに行くはずがゴム靴を買っていた、というくらい、夏物の洋服は着る時期が限られるものです。
ネイビーのヘリンボーン柄。ウール・モヘア・シルク・リネンという4種類の素材が入っている生地です。
あれこれディテールを変えたりしたくなる気持ちを十分に受け止めた後、
「シンプルがいいです」とお伝えしました。
見る必要があるのは、”今”だけではなく、「10年後も普通に着ている姿」です。
若気の至りであれこれやった洋服は、知れば知るほど恥ずかしさしか残りません。(私が1番の経験者です笑)
ビスポークは永く着るためのことを考えて作りましょう。今を楽しみたい洋服は既製品で、単発で楽しむのがいいのです。
-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー
東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301