透けの美学

BERUNです。

オリンピックが始まりました。206カ国、全ての国の入場は観れませんでしたが、忖度なしに英国のユニフォームは格好よかったですね。バラクータのスイングトップのような形をベースに、袖がストライプになっているものでした。あれはあのまま売れるくらいリアルクローズで格好良かったと思います。

NHKのアナウンサーも思わず、「トラディショナルですねぇ」とこぼしていたのが面白かったです。笑

ですが、他の国のユニフォームはいまいちピンと来ませんでした。イタリアのアルマーニは正直「?」と何度も目を疑いました。

アメリカはラルフローレン、フランスはラコステ、シンプルに格好良かったですが、特に感動はなかったですね。

パッと見でしたが、コスタリカの入場ユニフォームが格好良かったです。ネイビーのサファリジャケットに、白のスラックス。シンプルながらスタイリッシュさもあり、個性には欠けるかもしれませんが、それを大勢が着ている姿は壮観でした。

あとは自国のスタイルより、日本をイメージして作られた入場ユニフォームが多かったように思いました。
これは色々な考え方もあるかと思いますが、わたしとしては、そこで友愛のメッセージを届けるのも素晴らしいですが、自国らしいスタイルに磨きをかけている姿の方が見たかったなぁ、と思ってしまいました。

今回のオリンピック、アスリートのためにも成功してほしいですが、始まりが始まりだっただけに、ユニフォームに全力を注げなかったのだろうか?と思ってしまうような印象でした。

シックなリネンシャツもあり

少し写真では色が分かりづらいのですが、グレーとカーキの間のような色で、リネンシャツを仕立てました。明るいリネンシャツというのは鉄板で持っておくべきですが、こういったシックなシャツもまた素敵です。
ノータイで、夏用のリネンジャケットを着るときなど、中に合わせるととても締まって格好いいですね。

ステッチを際に入れることで、フォーマルな印象になります。
カジュアルなリネンシャツのイメージから、脱却した一枚ですね。

透けを愉しんでみる

昨年の夏の終わりから、ずっと真夏にでも着られる真っ白のジャケットがほしいと思っていました。
それに見合う生地を昨年見つけたので、今年の夏に合わせて作成したものが完成しました。

小千谷縮という、新潟県の小千谷市の周辺で作られている織物です。夏の着物、浴衣に使われることが多く、撚りが強い緯糸で織った布を湯もみする事で、独特のシボを出した織物です。

以下、Wikipediaを参照いたしますと、

小千谷縮の重要無形文化財指定要件は以下のとおりである。

  • すべて苧麻を手うみした糸を使用すること。
  • 絣模様を付ける場合は、手くびりによること。
  • いざり機で織ること。
  • しぼとりをする場合は、湯もみ、足ぶみによること。
  • さらしは、雪ざらしによること。

日本の夏には日本の生地が最も優れているのは紛れもない事実ですが、日本製の”洋服地”で洋服を仕立てたとき、格好よく仕上がるものが果たしてどれだけあるか、と考えるとなかなか少ないものです。(あくまでわたしの見解です)

そのため、日本製なら日本が得意としている生地を選ぶのが得策だと思います。これは日本にいるなら日本酒を飲み、海外ではワインを飲むのが最もパフォーマンスが高いということと同じです。

日本人が夏に昔から着ていた素材といえば、縮、ちりめん、麻、この辺りでしょう。

裏地も全て取り払い、一枚仕立てにしました。かなりの透け感です。正直に話しますと、これが最初に仕上がってきたときは、「透けすぎだ。。これはやってしまった。。」
と思いました。(自分の仕立てるものはいつも実験ですから、こんな失敗だらけです笑)

和紙のように薄い生地です。何を着ても透けるため、もう逃げ場がありません。(後ろのステンドグラスの透け具合でお分かりいただけると思います)

どう料理しようか考えていたとき、お客様が奥様を連れてお見えになりました。その奥様は普段から着物を着られている方で、このジャケットを見せたところ、「夏の和服は透けるもの。これはこれで格好いいじゃないですか」とお褒めの言葉をいただきました。

たしかに、和服の夏物は絹100%で、透けてインナーを見せることで涼しげな印象を与えています。

また、和服では、6月にしか着ない着物、7月にしか着ない着物、というように、一月毎の着物というのがあるそうです。そう考えると、洋服が春夏秋冬と4つにしか分かれていないのが、そもそも四季の豊かな日本向きではないことも見えてきます。

つまりこの透け縮ジャケットも、梅雨明けから8月いっぱいまでの1ヶ月半のみ愉しむジャケットと開き直れば、とても活躍する一着になると思います。
オールシーズン、通年、という便利っぽい言葉に釣られていては、本当の洋服の楽しさは見えてこないですね。

そもそも透けを怖がっていては、厚く厚くなってしまい、夏に着られる洋服ではなくなってしまいます。
しかし普通のスーツで背抜きになっていて、背中が白く透けているのは美しくない。
そのため、元々透けることを想定として作られた生地で薄く仕立てる、というのが理想的ではないかと思うのです。

梅雨が明けると、梅雨前までとは気持ちがガラッと変わります。梅雨前までは「白いジャケットなんて、、」と思っていても、30度を超えてくると、白いジャケットが何の嫌味もなく見えてきます。

梅雨は雨が多いので、スラックスは暗めがいいですね。そして梅雨が明けたら思い切って白を選ぶ。日本の季節の変わり目はそのくらい気持ちが変わるものです。

上品でカジュアルなサマースタイル

昨年の秋冬の洋服からお仕立てさせていただいております、Y様。
お仕事で着られるわけではないので、ネクタイは着けないスタイルで全身を考えました。

冬であればウールタイがありますが、夏のネクタイはお好きな方以外には無理強いしません。お好きな方で、我慢できる方でなければ苦行以外の何者でもありません。笑

ジャケットはHarrisons(ハリソンズ)のIcarus(イカルス)、グレンチェックという硬い印象のある柄ですが、肩パッド、芯を抜いたアンコン仕立てのジャケットにしました。
こうすることで、真面目でクラシックな雰囲気が漂いながら、着心地はいたって軽い、カーディガンのようなジャケットになります。

洋服ビギナーの方に英国クラシックスタイルは、少し重すぎる場合もあります。
育ちの良さが顔から滲み出ているY様。
柔らかな印象のあるお方には、フレンチスタイルを提案していくこともあります。

フレンチスタイルってなんぞや??と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、理解は大まかなニュアンスで十分です。
これから洋服を知っていくという方に、ゴリゴリ英国クラシックではなく、わかりやすくオッシャレなイタリアスタイルを提案するのも芸がないなぁというときがあります。

イタリアファッション自体は私も大好きなので何も否定はしないのですが、イタリアはメンズファッションのことを調べれば誰でも最初に辿り着く国です。
せっかくこのような風変わりな店に足を運んでいただいたので、他ではあまりされないような提案をしたいなと思っているのです。(そしてそれは最高の提案を!)
個人店の良さはそこだと思います。

靴はブラウンのUチップ。この手の靴は履けば履くほど格好良くなっていきます。イギリスではこのような合わせの時はブローグを履くでしょう。イタリアではダブルモンクやローファーが多いです。
このUチップは独特の顔付きがあります。この中性的な雰囲気が柔らかさを生み出してくれ、コーディネートを引き上げてくれます。

仕立てや形は、その方のイメージに合わせて選びます。ビスポークなので至極当たり前のことなのですが、その自分らしさをどう出すかというのが、この仕事の面白いところです。

鍛え上げられた肉体美をお持ちのY様。ボタンダウンシャツの襟を通常より少し大振りにしました。こうすることで身体のバランスと合わせることができます。

ビスポークは、その人以外で体型が同じ人が仮に着たとしても、サイズはぴったりですが、やはり本人が着た方が断然似合う!というものが、考えられて作られた洋服だと思います。

カバーで歌のうまい歌手がうたっても、やはりオリジナル曲には勝てない、というのと同じですね。

自分自身のオリジナルを突き詰めていけるのが、ビスポークの醍醐味です。

The Book更新

The bookを新たに更新しました。

今回新たに追加した項目はこちらの2つ。

My favorite things <夏>

アルスターコート

ぜひ、お時間のある時にでも、お読みいただけたら幸いです。

いつもありがとうございます。

-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー

東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301

http://berun.jp/
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