BERUNです。
昨日まで、家族で休暇をいただいておりました。
本日、1年がかりで仕込んでいた秋冬物が入荷しました。今年の秋冬ものが本格的にスタートします。
昨年までは秋冬物の開始はお盆明けでした。しかし大変ありがたいことに、年々来られる方の意識が高くなってきていて、早々にその季節が来る前に、シーズンものをすでに作られているという方が多くなってきているのです。
今までは7月に夏物を頼まれ、なんとかお盆前に、、というケースも少なくはなかったのですが、今年はほぼありませんでした。
むしろ、7月の段階から、秋冬物の相談をいただく方が多く、それなら早めに入れてしまおうと思いました。
今回の仕入れは過去最大の量です。
量、質、どちらもとても満足のいくセレクトで、棚を整理しながらひとりで鼻息の荒さを抑えることができませんでした。
一つ一つ、どれも妥協のないセレクトです。
この暑い中に秋冬物。。と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今月オーダーされたらちょうど10月に完成しますので、時期としては早すぎることはありません。
少しずつ紹介していきます。
W Bill LAMLANA
まず初めにご紹介する生地はW BillのLAMLANA(ラムラナ)です。
確か最後に仕入れたのは4、5年前だったかと思います。
その当時、もう本国にも在庫がない、と言われて、結構多めに入れたのですが、それはありがたいことに全て無くなりました。
今回、本国で在庫整理をしていたらまた新たに出てきたそうで、それをすかさず仕入れました。
こちらはすでに10数年以上前に廃盤になっているシリーズですが、とても品のいいカラーリングがたくさん掘り出し物で出てきました。
選定しきれず、絶妙な近い色柄をいくつか仕入れました。これがたくさんあるうちは選ぶのが大変になるのです笑(それがまた面白いのですが)
ヘリンボーンは、ブラウン、ライトブラウン、ベージュ、ネイビーの4色。
無地は、ネイビー、モスグリーン、ブラウングリーン。
本当にこの生地は見た目、触り心地、仕立て映え、全てが高水準で、ぜひお勧めしたい生地です。
ラムウール75%、アンゴラ23%、カシミア2%という、マフラーのような柔らかさがありながら、しっかりとコシのある生地は、秋冬のジャケット生地としてとても優秀な1着になります。
おそらく現在のW Billでは作らないであろうクオリティの高さです。
こちらの生地は買収される前のW Billの生地ですので、現在のものづくりとは理念が違います。
中肉の320gmsで、光沢感もありながら、程よいカジュアルさもあるので、さまざまなシーンで着用することができます。
MOON BEAM
上のLAMLANAに最も近いイメージで、現在も製作している生地といえば、Harrisonsの MOON BEAMでしょう。
ラムウール75%、アンゴラ25%という、同じような生地感ですが、ムーンビームの方がもう少しふわっと柔らかな印象です。
一番奥のグレーのバーズアイはW BillのPhoenix(フェニックス)。
ハリソンズとW Bill、同じ会社で作られる同クオリティの生地の違いは、ハリソンズの方が少し柔らかく、W Billの方がガシッとしたものが多いです。私はどちらかと言いますとW Billの質感の方が好みです。
W Bill Tweed
お次はW Billのツイードです。ハリスツイードよりも軽い生地感で、よりタウンユースなツイードといった仕上がりです。
ザ・カントリーツイードをお求めの方には物足りないでしょうが、街でさらっと嫌味なく、コスプレ感も出さずに自然にツイードを着たいという方にはうってつけです。
ツイードの柄といえば、ザ・定番のヘリンボーンです。
左から、モスグリーン、レッドブラウン、シーブルー、スカイブルー。
グリーンという自然な色から、冬に着る寒色まで押さえました。
こちらはウィンドーペーン。ヘリンボーン、ウインドーペーンは、いくつあっても欲しくなります。笑
ツイードの魅力が存分に発揮される柄だからこそ、妥協のない生地で仕立てたいですね。
FOX BROTHERS
さて、今回最も買い付けの量が多かったのがFOX BROTHERS。
フォックスフランネルからフォックスツイード、コート生地まで仕込んであります。
フォックスフランネルのチェックシリーズ。色柄はどれも使いやすいものばかりです。グレー、ネイビー、ブラウンベースでまとめているので、柄が少々大きくても派手になることはありません。
全てウール100%のため、使い勝手に困ることはないですね。
シックなグレンチェックから、少し華やかなものまで。グレンチェックという柄はやはり男心をくすぐりますね。
続きます。
右がネイビー/ブルーのギンガムチェック。
左はダークグレー/グレーのギンガムです。
こういう普通の柄だからこそ、生地の質と仕立ての良さで見た目の印象が全く変わります。
この辺りの生地は、誰がどう見ても美しい仕上がりになる予感しかしません。
本当にどれもスペシャルな生地ばかりで、よくまぁここまでベーシックで上質な生地が揃ったなぁと感慨深くなります。
左はブルーのギンガムチェック。美しい光沢が魅力的です。
真ん中はFoxのベーシックなグレンチェック(プリンス・オブ・ウェールズ)。フランネル生地のため、スーツでもよし、トラウザーズでもいいです。
右はFoxではなくハリソンズのCru Classe。ダークグレーの上質なフランネル。
秋冬用のフォーマルなスーツでしたら最上級の仕上がりになるでしょう。もちろん、トラウザーズでもとても格好いいです。
この辺りはまだ先の季節ですが、フォックスツイードです。ハリスツイードのような硬さがなく、上質さと粗野な雰囲気を持ち合わせたツイードの生地感はさすがフォックス。
左はコート生地。右はジャケット用のツイードです。
こういった絶妙な雰囲気のものは、やはり実物を触ってみていただかないと伝わらないものがあります。
特にコート生地のものは、これだけ幅広のヘリンボーンで、ワインレッドという色味、センスのある方が着られたらとても格好良いコートになりそうです。
アルスターコートのような、ダブルの仕立ての方が映えそうですね。
この時代に伝統芸能に触れる意味
時代がどんなにオンラインになろうと、リアルでなくては伝わらないものがありますし、男女という性別の垣根を無くそうという動きが今世界中でありますが、男らしいもの、女性的な美しさという変えられない魅力というものはあると思うのです。
お茶を習い始めて1年半になりますが、同じ舎中(生徒)の方がこのようなことを話されていました。
「今時代が目まぐるしく、とてつもないスピードで変化しているからこそ、伝統芸能を学んでいてよかったと思います。伝統の中にいることで、流れに巻き込まれず、俯瞰して見ることができているのを感じます」
これにはわたしもいたく納得しました。そして、おこがましいかもしれませんが、洋装を身にまとうことも同じだと思いました。
今やTシャツに短パンで仕事ができてしまう時代。その流れの中で、自分を律してあえて襟を正す、という選択をすることで、世の中の激流に流されず、冷静に物事を見ることができるようになると思います。
ありがたいことにBERUNに来ていただける方々は、
「時代がどう変わろうと格好いいと思ったものを着たい」
とおっしゃっていただく方が多く、とても元気をもらいます。
Special Fabrics
最後に、今回とびっきりの生地を仕入れたので、ご紹介いたします。
なんと、約40年以上前のハリスツイードの生地。手織りのシングル巾、1柄ジャケット1着分ずつ、4着分手に入れることができました。
ハリスツイードの生地を使ったヴィンテージのジャケットというのは、古着市場でたくさん出回っていますが、やはり他人のサイズであるということと、時代を感じるフィッティングがほとんどであるため、この時代も格好良く着こなすことができるものはなかなか見つかりません。
ヴィンテージの生地を自分のサイズで形にすることができるというのは、この上ない贅沢な選択だと思います。
しかも、これだけ現代でも使いやすい柄というのもなかなか見つかりません。
これはわたしも個人的に仕立てなくてはと、勉強勉強、、と言いながらボタンと裏地選びを夜な夜なやっていました。笑
正直、ずっと寝かせておいてもいい生地です。それだけ熟成しますから。
ぜひお店に来られた際には、ご覧になっていただけたら幸いです。
夏物の生地をどかしたのですが、それでも入りきりません。笑
↑入りきらない生地たち。
ぷよぷよでいえば、もうゲームオーバーですね。笑
仕立て屋の秋はもう始まっています。
ぜひ、皆さまに良いものをお届けしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー
東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301