BERUNです。
今夏、わたしは小千谷縮で仕立てたネイビーと白のジャケットを交互に着ています。
これ以上涼しい生地はないと言い切れるほどの薄さです。しかし耐久性もないため、あくまで酔狂の世界。
日本の夏に適した素材といえば、他にはちりめんなどもあります。
和洋折衷という言葉に振り回されないようにしながら、日本の夏に快適に着られる理想が詰まったサマージャケットを考案中です。
1%の住人
わたしは2人目の子供を助産院で産みましたが、今助産院で産む人の割合はなんと全体の1%以下なんだそうです。(助産院0.8%、自宅0.2%)
助産院での出産に立ち会えたことは、わたしにとってとても素晴らしい経験になりました。この体験を多くの人にもっと感じてほしい、心からそう感じた出来事でした。
1950年代は自宅・助産院を合わせたら96%だったそうですが、病院ができたことで流れが大きくかわっていきました。
これは出産に限らず、あらゆることに通じることかと思います。
日本羊毛振興会の統計によりますと、1958年には紳士服の既製品の割合が38%で、注文服の割合が62%だったそうです。
1960年前までは、注文服が6割を超えていたのです。
その後、既製品の割合がどんどん増えていき、1982年には既製品が9割と、オーダーをする人が1割以下になってしまいました。
これによって、「オーダーが当たり前」という時代から、「オーダー=格好いい」という方程式ができ、シャツに自分のイニシャルを腕やカフスにつけるというような見せびらかすおしゃれが急増しました。
(シャツの正しいネームの位置についてはこちら)
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今は空前のオーダースーツブームによって再燃してきてはいますが、これは大きく数字を動かすほどの変化にはならないでしょう。
ましてや、オーダーをするというだけでなく、クラシックなスーツスタイルをビスポークする人、となると、1%以下になるのは明確です。
ITバブルによって、スーツを着ない社長が格好いいという風潮が表れ始め、そしてコロナによって、人に会わないからスーツなんて必要ない、という流れに拍車がかかりました。
余談ですが、今やワー○マンでスーツを販売している時代です。もはや同じ”スーツ”という名前でいいのでしょうか?と疑問に思ってしまうくらい全く別のものです。
同じ名前に括らない方がいいのでは?というものはあらゆるジャンルにありますね。わたしはそういうものはすべて、◯◯風、と付けていただきたいです。スーツ風と言われたら納得できます。
◯ークマンのスーツ風がちょうどいいという仕事、人柄の方もいらっしゃると思いますので、そこは争う必要はなく、共存していきましょう。わたしはこういう類のものはあっていいと思います。
古き良きものはどんどん絶滅していくのか、と思うかもしれませんが、この流れはあるところで止まります。
もうすでに1%の中にいる人は、そこから99%の起伏のない一辺倒な大海原に飛び込むことはしないでしょう。
ですが反対はあります。99%の住人の中から、1%の世界を知ることにより、こっち側に飛び込んでくるという流れはあります。
この1%というのが、熱心な人たちです。あらゆる業界はこの1%の人たちによって支えられています。
もしこの1%の人たちがいなくなればどうなるでしょうか。(そんなことは億万にひとつもありませんが)
世の中からスーツが無くなり、白黒のフィルム映画はなくなり、10年以上まえの映画はすべて廃止。クラシックカーはなくなり、古典文芸がなくなり、便利さ、快活さ、単純な楽しさだけを追い求めたものばかりが溢れてしまいます。
多少オーバーに聞こえるかもしれませんが、それに近しい流れを今の世の中にわたしは感じています。
大勢の人たちが、時代の先端を行き急ぐことの影響がここにあると思います。
これから向かっていく未来は、多くの人が、夏はTシャツにジーンズにハイテクスニーカー。冬はその上にダウンジャケット、というような簡素な服装の人たちが街に溢れるでしょう。
もはや後ろ姿は、男性か女性かわからないことも多くなってきましたね。
今の時代が求めている、ジェンダーレスな世の中になっていきます。性別、年齢を超えた”究極の普通の服”をみんなが着るようになります。
ハンドルを握らない宇宙船のような空気抵抗の無駄のない曲線を描いた車が溢れ、分かりづらい古典文芸は隅に追いやられ、すべて売れっ子の構成作家によって、各国の人の笑いとツボを研究され尽くして、気持ちのいい起承転結で笑いと感動を与えてくれる作品ばかりになり(TVはすでにそうなりかけていますよね)、無駄と呼ばれるものはすべてスッキリなくなる世の中になります。
ですが、わたしはどうもそんな世の中に魅力を感じられません。
この世の中にいい味わいを出していくのは、あらゆる業界にいる、1%の人たちだとわたしは思います。
そのためにも、世の中の流れ云々で惑わされることなく、自分の信念を強く持つことが何よりも大切です。
絶滅危惧種でいいんです。
日に日に流れが強くなる逆流の中にいるからこそ、自分を強くもった人はこれからの時代も力強く生きられると思います。
-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー
東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301