BERUNです。
今年の秋は最高ですね!
秋の長雨もなければ、こんな日が1ヶ月でもあればなぁっと毎年思っているような、清々しい秋が続いていますね。
しかし暑いです!笑
ようやく汗をかかずに夏服が着られる、そんな季節が11月の今も続いております。
ヴィンテージ生地で仕立てるジャケット
ヴィンテージのエルメネジルドゼニア社の生地。
今やオーダースーツ業界では右も左も「ゼニア!ゼニヤ!銭屋!ZEGNA!」
の日本ですが、私個人的にはそこまでゼニアをお勧めしておりません。
その理由はいくつかあるのですが、ちょっと長くなるのでまたの機会にしたいと思います。笑
今はテリテリテロテロの光沢バッキバキのゼニアも、昔の生地はとても質実剛健でハリがあり、とても仕立て映えのする生地をたくさん作っていました。
どこかで会社を存続させるために方向転換をしたのでしょう。結果的に経営的にはうまいことにはなっているのでヨシだとは思いますが、昔のモノづくりを知ってしまえば、今の生地はうーむ。とならざるを得ません。
これがゼニアのヴィンテージ生地。素材はカシミヤ100%ですが、弾力性が高く、カシミヤ特有の光沢感もそこまで出ておらず、何よりもこの柄の地味さ!
今のゼニアを見れば、
「えっ整形したの?笑」
と聞きたくなるくらい、この当時のゼニアはシックでこだわりを感じる良い生地を作っていました。
こちらは推定80年代のもの。
時代の変化に耐えられず閉業するブランドや工場もあれば、変化し続けて残り続けるブランドもあります。
物価が上がり、賃金が上がる中、昔と今は同じモノづくりをすることが厳しくなっています。
それは致し方のないことです。
今の時代、教会の天井壁画を描くことができないように、過去のモノづくりを超えられない働き方を我々は選択しています。
なので、天井壁画やアートに胸を躍らされるように、昔こだわって作られていた生地に想いを馳せることも楽しんでいいと思います。
今のモノづくりも素晴らしい。
昔ながらのモノづくりも素晴らしい。
どちらも選べる、いい時代だと思います。
ヴィンテージ生地というのは、古着と異なり、手にしたものをもう一度料理しなくてはなりません。
なので、調理師の腕が試される世界ですので、まだ掘れば発掘できる許容があります。
だからわたしは気がつけば、壁一面生地という状況になっているのです笑
ゼニアが垢抜ける前の生地、クオリティは格別です。
H様、いつもありがとうございます。
ベージュヘリンボーンジャケット
H様にお仕立てしたのは、私の大好きな生地、今はなきLAMLANAのベージュのヘリンボーン柄のジャケット。
300gmsで微起毛という、日本の秋冬春にぴったりの生地です。
こういうばっちりでいい風合いの生地が無くなってしまうのは本当に残念ですね。
もう無くなってしまった生地ですが、あえて大切にしすぎず、気に入っていただける方がいらっしゃいましたら、おすすめしております。
柔らかさと、奥に感じる英国の生地の張り。
秋冬に明るい色の洋服を着る。冬はつい暗く塞ぎがちな色合いが増えるので、街に灯りを灯すような気持ちで、より多くの方にどんどん明るい色を着ていただきたいですね。
ネイビーフランネルとグレージュ
Y様にお仕立てしたのは、ネイビーのフランネルジャケットに、グレージュカラーのフランネルトラウザーズ。
フランネルはカシミヤが入ったSuper 120の生地。チャールズクレイトンという英国のメーカーのもの。
英国生地ですが、繊細なタッチのする上品な生地感です。
トラウザーズはグレージュのウールカシミヤ。
生地が柔らかいため、上品な光沢感を楽しむことができます。
本業の傍ら、マジシャンとしても活躍するY様。
ポケットの大きさや深さなど、マジックをする上で今まで妥協していたところをとことん合わせていきました。
結果、「(コインを)出しやすい!入れやすい!」ととても喜んでいただきました笑
美しさだけではなく、その人のためだけに作られたものがオーダーの醍醐味ですので、使う物の不満がなくなることが一番理想だとわたしは思います。
クロケット&ジョーンズのボストン2。
これは名作ですね。
わたしもイギリス留学時代、ファクトリーで買ったボストンをいまだにレギュラーで愛用しています。
2011年頃は、イギリスのノーザンプトンに行き、英国靴を買いまくっていましたが、実際手元に残っている靴はというと、このボストンのみです。
他は勢いで買ったり、サイズがうーん。だったけど、安いからえい!と買ったものだったり、デザインが面白いからえい!と買ったものがほとんどでしたが、やはりそういう買い物は残りませんね。
10年クローゼットにいて、なおかつレギュラーでい続けるというのは、その物がシンプルであり、普遍的で、物が良い。
それにつきます。
人はバイオリズムの生き物ですので、どんなに普遍的なものでも、何年かなぜか気に入らなくなったり、手に取らなくなったりします。
そこで流行の洋服はそのまま忘れ去られてしまいますが、本物はその後またちゃんと波が戻ってくるのです。
お笑いコンビも、仲の悪いときを経て今めっちゃ仲がいいとかあるように、人と物の関係も、そのようなものです。
本当に良いものを揃えていくと、クローゼットは自然に潤沢になっていきます。
いつまで経っても満たされない。いつも取っ替え引っ替えしているというのは、世の中の流れに踊らされているのかもしれないと考えみてもいいかもしれません。
ツイードで仕立てるバルマカーンコート
日本ではラグランコートと呼ばれていますが、正式名称はバルマカーンコートです。
ツイードでバルマカーンコートをお仕立ていたしました。
炎のランナーの宣教師エリックが妹に、宣教師としての道を進むことと、走ることへの喜びを伝えるシーン。
エジンバラのカールトンヒルでの場面です。
このときエリックが着ているようなコートのイメージでお作りしました。(オーダーの仕方がマニアック笑)
もちろん炎のランナーはわたしが一番好きな映画ですので、容易にイメージができます。
バルマカーンコートはチェスターフィールドコートやアルスターコートと異なり、Aラインでゆったりと着るコートです。
そのため、中に着るものも選ばず着ることができます。
また、シルエットで格好良さを表現するコートではないため、大人さが必要なコートです。
若い方より、歳を重ねた方の方が似合うコートですね。
家の周りが田んぼだらけという若きS様。
そのような街並みでは、ネイビーやグレーよりも、アースカラーの方が合います。虫もいる場所に合わせて色を変えていきますから、自然な思考なのです。
グリーン・ベージュ・ブラウンといったナチュラルな色が織り交ぜられた優しい色のツイードです。
時代は進み続けますが、変えない方がいい事の方が多いと私は思います。
例えばこれは私の考えですが、家電やメカなどは、最新の方がいいでしょう。
ですが、食事はなるべく原始時代のときの食事が理想だと言われているように、人間が発展だと思い進み続けてきてはいるが、実は何も加工をせずに、昔の食生活が一番身体にいいというのは皮肉なことです。
このカプセル一粒飲めばあなたはもう健康!みたいなことを謳う会社もあるでしょうが、その叡智よりも、魚を食べて米を食べて野菜を食べて、運動する方が、人の身体にはフィットしていると思います。
衣服であったり、乗り物のような、所有する物に関しましては、もう便利さどうこうではありません。
もはやTシャツとジーンズとマウンテンパーカとダウンがあればあとは何もいらない世の中ですが、それをあなたは着たいのかどうか?という選択の時代です。
選ぶことができない人は、流されるしかありませんが、自分の生き方を決めている人は、世の中がどんなに進もうと、自分がいいと思った場所に錨を下ろし、強く生きることを選ぶでしょう。
持つものはもはや必要かどうかではなく、その人の趣味思考の世界です。
自分がコレを持つことで喜びを感じるのでしたら、ぜひ持ってください。
人生は私にはコレが必要!というコレ探しです。それを人生かけて楽しんでいきましょう。
-Atelier BERUN-
東京表参道のオーダースーツ / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途