BERUNです。
先日届いた、大量のヴィンテージ生地を何とか生地棚に収め、安堵していたところです。
本当だったらこの生地を届いたところから開封して、一つ一つ解説しながら生地を見るというもので、1時間位動画を作れてしまいそうな内容だと思うのですが笑、そんな時間が今はなかなか取れず、気ままにかけるこのブログで、私のその思いを断片的につぶやいていきたいと思っています。笑
BERUNに来ることの価値を一つ挙げるとするならば、本来作りたかったものと注文したものが変わったとしても、結果的にそれで良かった!と思えることだと思います。
これが大衆店であるとそうはいきません。
大衆店であれば、お客様がこういうものを作りたい。という言葉に異論を唱える必要がないからです。
「わかりました、ではこちらのものはいかがでしょう?」
というように、自分が作りたかったものが作れます。
ですが、それは想像の範囲内です。自分の枠を出ることはできません。
私のような”オセッカイ”な男は、大衆店ではお払い箱なのです。笑
個人店に行く明確な理由は、ズバリ、その”オセッカイ”を楽しむことだと思います。
それも素敵ですが、わたしは◯◯さんでしたらこういうもの合うと思いますヨ。
というように、自分の想像の斜め上を言ってきます。
その想像外こそ、自分を引き延ばしてくれるものなのです。
自分のことを一番知っているのは自分。
とは言いますが、それは自分の一部分でしかなく、人間は多面的で、あらゆる顔を持っています。
それを外から見たプロが、
わたしから見れば、あなたはこの雰囲気が合うと思います。
と言う。
それはオセッカイかもしれませんが、それに耳を貸してみる。
そうすることで、自分が知らなかった自分を知ることができる。
そうして人の幅は広がっていくのだと思います。
私たちは、自分の仕事以外では全てお客です。
つまり、出会う人のほとんどの人が、自分より知っているものを持っている人なのです。
そこに素直に、柔軟に聞き入れることができる人が、人生を豊かに生きていくことができるのだと思います。
わたしは何も知らない。
その姿勢で素直に生きることが、本当の強さだと私は思います。(開き直りとは違います)
ホップサックのネクタイ
これからの春秋に向けての新作のネクタイが完成いたしました。
FOX BROTHERS社のホップサック生地を使いオリジナルの金型で作成した、BERUNのスポーツタイ。
こんなネクタイ、なかなか巷にはないので、どんな締め心地なんだ?触り心地はどんな感じだ??
と気になる方もいらっしゃると思います。
一言言いますね。
とってもいいです。笑
BERUNのネクタイは定番で作り続けているものは、
・ソリッド
・ドット
・レジメンタル
・小紋
がありますが、売れる定番を差し置いて、わたしが作りたいマニアックなネクタイというのもたまに作ります。
もうこれは個人店の特権です笑
売れなくてもいいんです。←オイ笑
売れないというより、着る方の想像力が求められるネクタイとでもいいましょうか。
・ペイズリー
・ウールタイ各種
・リネン混タイ各種
・その他変わり種タイetc..
このように、定番で巷に置いてあるようなネクタイではないものが、BERUNにはあります。
その場合、着ける人の想像力が必要です。
その中に、今回のホップサックのネクタイは含まれています。
スーツが道具だと思い、着れればいい!
スーツ🟰作業着だぜ。
着させられてるぜ!
休みの日は完全にスイッチ切ってオフってるぜ!
というお方には、一切響かないもの。
いいわるいではなく、周波数が違うのです。
コウモリの超音波のように、聞こえる民にだけ聞こえる音。
「おお、お前もわかるか、この格好よさ」
「スーツは着たいから着てるんだよ。格好いいよなぁ」
多くの人に理解してもらえる格好良さを一定水準超えると、その先にはわかる人だけわかる美学があります。
メンズファッションは突き詰めるとそこに行きます。
大多数、マスに理解してもらえるだけでいいというのは、流行をおさえておけば十分です。
ですがそれでは、”ファッション”、”トレンド”、”流行”のスパイラルの中で揉まれ続けることになります。
自分という本体に魅力があるのではなく、流行っているその”もの”に良さを感じて集まる人に囲まれる。
それは早い年齢で卒業した方がいいでしょう。
流行に揉まれることも大切な時間、経験です。
その刹那的な時間を過ごし、やはり自分というスタイルを磨かなくては。。!と気づいたとき。
その時がクラシックスタイル年号元年です。
そこから積み上げていく人生が始まります。おめでとうございます。
さて、話が逸れてきたので元の道に戻したいと思いますが、そんなマニアックなネクタイですが、とっても格好いいです。笑
早速、お作りしたものを着けていかれた方がおりますので、少しずつご紹介していきたいと思います。
ブルージャケットとベージュトラウザーズ
いつも遠方からお越しいただいておりますO様。
イギリスから本格的なキャバルリーツイルが届きまして、それが間違いないのでおすすめいたしました。
ベージュのガッチリ肉厚なキャバルリーツイル。
共生地でブレイシーズもお作りいたしました。
ベージュにブラウンのレザー、そしてネクタイは、ホップサックのブラウン。
この色合わせは最高に格好いいです。
合わせたジャケットは、ネイビーブルーのシンプルなジャケット。
これだけシンプルなコーディネートですが、生地やサイジング、仕立てのツボを押さえれば格好良くなります。
あれこれ工夫をする必要はないのです。
オリジナル、源流を知り、それを咀嚼することにこそ、時間とコストをかける価値があります。
これから活躍するアイテム、長袖のニットポロも合わせていただきました。
とても素敵です。
O様、いつも遠方からお越しいただきましてありがとうございます!
もう一方、ネイビーブルーのジャケットに、ベージュのコットントラウザーズという組み合わせ。
合わせたネクタイはホップサックのベージュです。
このブログをご覧いただいておりますと、こんなシンプルでかっこいい格好した人が街にたくさん増えているのか!
と思ってしまうかもしれませんが、それは錯覚です笑
皆さん、全国それぞれのコミュニティーで、孤軍奮闘しております笑
それだけ、普通に良いものを着るということが難しい世の中なのでしょう。
だったら、気づいた人が押さえたらいいと思うのです。
周りにそんな装いをしている人がいないので、やんややんや言われます。
ですが、わたしが言いたいのは、
だから何だって言うんですか。
流行服を着ている人が評価される時代なら、私は評価されなくていい。わかるはわかってくれる。
そういう人と分かち合っていきたい。
わたしははじめ、そんな思いで、この世界に飛び込みました。
20歳の頃からクラシックスタイルに目覚め、36歳になろうとしてますが、
知れば知るほど面白いのです。
流行服のように、刹那的に過去を切り捨てていくのではなく、積み上げていくスタイル。
洋服はシンプルで、自分を磨いていくことが、より良い洋服を着こなしていくために必要なことなのです。
やることは至ってシンプル。
シンプルだからこそ、難しい。
HOW TOやノウハウにまみれた現代では、
自分磨き?
え?
“どうやって”磨けばいいんですか?
となります。
すぐに正解を出そうとするのではなく、人生という長い旅の途中、回り道して、遠回りして、それが深みになる。
そんな人が着るクラシックで普通な洋服が、とても格好いいのだと思います。
ですが、迷ってばかりではあっという間に歳をとってしまいますので、行き先案内人は必要だと思います。
それが師匠、メンター、先生という存在です。
信頼できる人に出会えたら、まずその人の言うことを一語一句聞いてみる。
出てくる疑問や否定は過去の自分が作り出した批評ですから、耳を貸す必要はありません。
バランスをとって、自分が理想としている先を見つけたら、そこに向かってまっすぐ歩いていきましょう。
着る力
わたしは自分の言葉で、洋服を着こなすのが巧みな方を、着る力がある人。
というように、着る力という言葉をよく使います。
着る力がないと、何を着ても着られてしまうのですが、その反対に、着る力があれば、初めて着た洋服も、昔からずっと着ていたように着こなすことができます。
この着る力というのは、どうやってつけるのかということですが、ズバリ洋服と向き合う時間を増やすことです。
筋力は筋トレでつけるように、着る力は自分自身と洋服と向き合い、考えることです。
先日、お客様であるY様がお母様を紹介してくださいました。
お母様は、若い頃から洋服が好きで、おしゃれを何十年と楽しんでいる方でした。
昔読んだある本の考え方を参考にし、そこから洋服の組み立て方のベースを覚え、今では自分のスタイルが確立しているとても素敵なお方です。
今回ジャケットをご注文いただいたのですが、結果的に2着オーダーをいただきました。
こちらはラムウールのフランネルジャケット。
こちらは軽めのツイード生地でお仕立てしたジャケット。
ご要望にお応えしまして、フランネルのジャケットは少しゆとりを持たせて、ツイードの方はジャストサイズにしてあります。
中に何を合わせるかが明確であれば、そのようなお話も聞きます。
着る力がある方は、自分の考えを持ちながら、柔軟に受け入れるところは聞くという、
1本筋の通ったしなやかな素直さを持ち合わせている人。
早速2着とも着ていただいたのですが、初めて来たとは思えない位素敵に着こなしてくださいました。
これは若い方では到底身に付くスキルではありません。
時間をかけてじっくりと向き合っていくことで、いつの日か、自然と何でも素敵に着こなせるようになる時が来ます。
何でもと言いましたが、この頃になると、自分の中では明確に似合わないものというものがわかってきます。
つまり、似合わないものは、今世ではきっぱりとあきらめ、自分の魅力を最大限生かしてくれる洋服で、スタイルを突き詰めていくということです。
何でもかんでも着るのではなく、自分の似合うものが少しずつ見えてきたら、少しずつ的を絞り、自分のスタイルを作ることに邁進していく。
それが着る力をつける方法です。(あっHOW TOとか書いてる!)
クラシックスタイルの魅力は、歳を重ねることが楽しみになることです。
20代より30代、40代より50代、60代より70代。
その方が似合う洋服がある。
そういう人生、とても魅力的ではないでしょうか。
Y様、ありがとうございました。
フォーマルスーツを1着持っておく
昔のお客様からご紹介していただき、そこからのお付き合いのN様。
今回は部下の結婚式に合わせて、フォーマルなスーツをオーダーしたいというご要望でした。
フォーマルなスーツと言いましても、色々な考え方があります。
ですが、ベクトルが360度どこに向いているのかわからないのは危険です。
プロが悩むところは、10度か15度、どの辺りだろう。
その程度です。
今回選んだ生地は、限りなく黒に近いダークグレー、ハリソンズのプルミエクリュ。
カシミヤが少し入った上質な生地です。
ラペルはピークドラペル。
前ボタンは1つ。
腰ポケットのフタは付けない。
仕様はディナージャケットの作りをとことん踏襲します。
ですが、スーツ生地で仕立てもスーツ。この絶妙なバランスがなかなかないのでとても格好いいです。
腰ポケットのフタですが、付けないのと、フタはあるけど、フタを入れてしまえば同じなのだから、付けておいていれたらいいじゃない?
と思う方もいらっしゃると思います。
ですが、入れないことを選択すると、フタにしつけ糸が縫われます。
しつけ糸が付けられることで、フタが浮かずにピタッと身頃に寄り添い、綺麗なシルエットが出ます。
男の美学というのは、ストイックさ、制限された中に宿ります。
シンプルを極める。生地と仕立ての一定水準を超えたら、あとは着る人の力に任せる。
そうすることで、着る力が増していく毎に、同じスーツでも見え方が変わっていきます。
クラシックスタイルで、同じ洋服を長く楽しめるのは、そういう理由があるのです。
N様、いつもありがとうございます!
-Atelier BERUN-
東京表参道のオーダースーツ / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途