BERUNです。
昨年の秋、地元の作家さんに会いに行くと、大きな木が置いてありました。
地元津久井の樹齢約200年の杉の木が切られたため、その木を使ってあれこれできるよ。とのことでした。
早速、自宅のダイニングテーブルにいいのでは!と話を進めていただくことに。
木を開いて左右同じ木目を楽しむブックマッチにして、間には昔とれた屋久杉(今は伐採不可?)を入れる。
半年かけて木が乾いてきたとのことで、ようやく動き出します。
揃いでベンチも作っていただくことにしてもらいました。
店で買うのではなく、直接職人さんにお願いできる距離感がいいです。
BERUNオリジナルシューズ2ndサンプル
1年前から水面化、もはや水中で進めていたBERUN初の試みである、オリジナルシューズの2回目のサンプルが上がってまいりました。
事の発端は、ドレスシューズの顔付きで、スニーカーの履き心地の靴という絶妙な塩梅の靴がない!というところから始まりました。
日本はオンオフ文化ですので、オンは革靴だけど、オフはスニーカー、
という考え方がほとんどです。
私はこの中間がないのがなんとももどかしいのです。
というよりも、この間にこそ、装いを通して人生を楽しむエッセンスが詰まっているからです。
なぜかと言いますと、オンで着る洋服は、ある程度、”仕事だから着る”という要素が強くあります。
反対に、オフとなると、楽をしたい、洋服とか何も考えずにいたい。
というような”手を抜く”日になります。
この間である、
「仕事でドレスコードは決まっていないけど、しっかりとした洋服を着たい」
というラインから、
「休日でもカチッとした服装をしたい」
という、中間の世界線に目を向けることが、装いを通して人生を楽しむはじまりだと私は思うのです。
カジュアル畑からテーラードの世界に来た私だからこそ、
「こういうの、あったらいいのになぁ」
というものがたくさん浮かびます。
数ある中から、具現化できそうなものを徐々に作っているというわけです。
今回の靴作りは、私自身も3足オーダーをしているレコットの津久井さんに相談をしたら、たくさんの職人のネットワークを駆使し、形にしてもらえることになりました。
木型をゼロから起こし、革も1から色の染め、シュリンク具合、厚み、革の種類など、すべてオーダーでお願いしました。
色は手染めで吹きかけており、均一ではなく、肉眼ではわからないほどの手染めならではのムラ感があります。
革は海外の野生のゴートレザー。
靴に使われる牛革は昨今、なかなか良いものが少なく(本当にないのです!泣)、いっそのこと、野生の皮で良質なものでいこう!となりました。
結果、これが大正解。
肉厚な革なのですが、とても柔らかく、毎日履きたいと思わせてくれる履き心地の靴に仕上がりました。
(実際、サンプルが上がってから試験的に毎日履いております)
色はミディアムブラウン。
季節問わず、上に合わせるものもジャケットでもカジュアルでも良しのとてもバランスのいい靴だと思います。
最終の修正を施し、本製作に取り掛かります。
本完成は7月末を予定しております。
いやぁ、手前味噌ですが、これは格好いいです。笑
ツイードスリーピース
能登半島にご親戚が多いというH様。
仕立てるツイードのスーツを着て、能登に足を運びたいというご依頼で、ツイードのスリーピーススーツをお仕立ていたしました。
心の寄せ方、伝え方は人それぞれ。
とても素敵だと思います。
自由業で、あまりかしこまったスタイルの洋服は必要ではないため、H様の雰囲気も見て、スポーツコートスタイルでお仕立ていたしました。
ブラウンのヘリンボーン柄のツイード。
ツイードのスリーピースは結構世界観が出ます。
ですので、実際に足を運んでいただいた方には、
「◯◯さんにはツイードはジャケットの方がいいと思います」
というように、その人に合わせたご提案ができます。
世界観に飲まれてしまうと、その着こなしは◯◯風や、コスプレになってしまいます。
そうではなく、その人が着こなすためには、着る人と洋服とのいいバランス感覚が大切なのです。
お互い高め合ってくれる、良いパートナーのように。
H様、この度はありがとうございました!
スキャバル グレースーツ
昨年末、コートをご注文いただきまして、今回はスーツをオーダーいただきました、I様。
スキャバルのオールシーズン使える軽めの生地をご提案いたしました。
細身でなで肩のI様。
そのようなお方は、一般的な既製服を着ると、細身のスーツしか合わせられなくなってしまうため、小柄で弱々しく見えてしまいます。
スーツは元々軍服から来ています。
つまり、そもそもは、スーツは脱いでいるときより、着ているときの方が立派に見えるものなのです。
これがスーツを着こなす上でとても大切な考え方です。
わたしの妻の祖父が、当時100歳でほぼ寝たきり状態だったのですが、出掛ける用事があるときは、必ずネクタイを締めて、スーツに着替えていました。
着替えたときの姿は、先ほどまで白のステテコで寝ていたお爺ちゃんとは別人の在り方でした。
そう、スーツは見てくれだけ変えてくれるのではなく、その人の在り方、マインドまで変えてくれるのです。
昔知り合いに作ってもらったスーツとのこと。何十年も着ていたそうです。
物を買うというのは、その物を買うという行為だけではなく、その物を買うまでのストーリーも込みで買い物をします。
そのストーリーが入っていることで、その洋服を着るたびにその思いがよぎり、それと共に着るのです。
わたしも師匠に初めて作ってもらったスーツもそうです。
2階の窓から、
「竹内くん、いいものあげるよ」
と言われポンっと落とされたトゥルフィット&ヒルのオーデコロン。(危ない笑)
結婚指輪を作ってくれたのも師匠でした。
そんな思い出が詰まったものを使えるというのは、ただ値段が高い安いではない買い物なのです。
全部が全部そんな思い出ばかりでは気持ちが溢れかえってしまいますので、ただその物だけがほしい、というときはフリマアプリで安く手に入れることをおすすめします。
そうやって物の買い方を分けてみますと、ただ安いだけで買った物と、ストーリー込みで買ったものの、部屋に残っている滞在期間の違いに気がつくと思います。
私は常々、お客様が渋い古い時計を着けていて、
「素敵な時計ですね」
なんてお話をしますと、その時計には必ずストーリーがこもっております。
それに勝る時計はありませんから、ぜひ大切に次世代に繋いでください。
市場に出すと決して高価なものにならないかもしれませんが、ストーリーは市場価格とは別のベクトルです。
ぜひ人生をかけて、”自分市場”を作っていきましょう。
相変わらずの脱線ブログですが、細身の方の特徴といたしまして、手の甲が極端に細い方が多いのです。
I様もその特徴がありまして、手首からそのまま手の甲に繋がっているような手をされています。
そうしますと、シャツのカフスがずるずるっと止まらずに落ちてきてしまうのです。
そういった方には、袖の丈を通常より少し短めにする。
そして、上着の袖丈をほんの少しだけ長めにする。
そうしますと、落ちすぎてしまうシャツの袖がほどよく留まり、落ち着きます。
人の身体は本当に面白く、同じ身体が1つとしてありません。
つまり、既製服というのはどこまで頑張ってもベターにしかならないのです。
ベストはお客様と、フィッター、2人で決めていくもの。それがオーダーです。
グレーウールモヘアスーツ
消防士をされていて、普段は全くスーツを着ないけれど、年に何度かの機会で着るスーツがほしい、というご依頼でした。
美しい光沢とハリがあるウールモヘアの生地をご提案いたしました。
3PLYモヘアは、モヘア45%とかなりの分量が入っておりますので、バリっとした質感と、立体感が出ます。
身体が華奢な方には似合わない、体格の良い方だからこそ着こなせる生地かもしれません。
ダークグレーの無地ですが、モヘアの光沢が美しく、シックな雰囲気ではなく、華やかな印象になります。
まさにお祝いの場にぴったりのスーツです。
同じ生地でブレイシーズもお作りいたしまして、白のフォーマルなシャツ、そしてシルバーのタイも合わせました。
これで祝いの場で困ることは20年くらいはないでしょう。
K様、この度はありがとうございました!
グレーバーズアイスーツ
地方都市まで電車で1時間強、周りには川が流れている。そんな風光明媚な場所からお越しいただいた若いH様。
オーダーのときも、受け取りの際も日帰りでお越しいただきました。
BERUNにお越しいただく方は行動力がある方ばかりで、いつもありがたく気持ちを受けとめております。
せっかく来ていただいた方のためにも、しっかりと間違いのないものをお作りいたします。
H様に選んだ生地は、グレーのバーズアイ。
細身であるH様は、過去にスーツをオーダーしたことがあるそうですが、そのスーツもやはりツルツルピタピタの細身スーツでした。
細身の方に、ゆとりを持たせるというのは、フィッター側からしますと勇気がいることなのだと思います。
まず、全体のバランス感がとても大切です。
少しでもゆとり分を間違えてしまうと、
「こんなブカブカなスーツ着れないよ」
となってしまいます。
そのクレームを避けるために、ゆとり量を減らし、細身にすることで、
「◯◯さんは細いので、このくらいスタイリッシュな方がお似合いですヨ」
となんとか丸められてしまうのです。
細身で背が高く、肩幅が広いH様。
その方の特徴を引き出し、隠したいところは隠す。
それができるのが(特にブリティッシュ)スーツです。
全体を見ますと、細身の作りに見えますが、実はウエストは拳1つ入る余裕があるのです。
ただ細くするだけが、細身に見せるわけではないというのをお分かりいただけるかと思います。
スリーピースの格好良さは、ベストとトラウザーズが繋がっているように見えるか、それがとても大切です。
シックな柄であるグレーのバーズアイですが、若い方が着てもとても似合います。
H様、これをバリバリ着て、20代を謳歌してください!
各国のスタイルとは?
(特にブリティッシュ)
という言葉を入れて、自分自身でほんの少し魚の骨がのどにかかった状態になりました。
一昔前までは、
・イタリアクラシコ
・ブリティッシュ
・アメリカントラッド
・フレンチ
というように、
各国のスタイルをわかりやすく作っていました。
今もそれはあるのですが、そもそも、各国のそのスタイルをそのまま使っているお店なんて、本国であるのか?
ということ。
これは言ってしまえば、島国日本人が、よその国を想像して、わかりやすく解釈したものなのです。
昨今では、サヴィルロウでガッチガチにブリティッシュスーツを作っているお店の方が少なくなってきています。
なぜなら、お客さんが英国人ではなく、世界中が対象になっているから。
「こんな鎧みたいなスーツ着れないよ、今はもっとナチュラルダヨ」
となり、肩周りや仕立てが徐々に柔らかくなってきています。(英国でのその走りはアンダーソン&シェパードだと思います)
私自身、50年前にテーラーが書いた古本を先日読んでいまして、その本はたくさんのスタイルをわかりやすく紹介していました。
20個くらいある中で、もうとっくに無くなっているものがほとんどでしたが、時代の変化と共にクラシックというもの自体も変わっていくというのがとてもよくわかる本でした。
その20個あるスタイルの中で、私が作るスーツは、その中のどのスタイルにも当てはまらなかったのです。
ですが、決して奇をてらったスタイルではなく、あくまで基本はクラシックです。
スタイルを学び、それになぞるのは、勉強ができる人であればできてしまいます。
1930年代の、サヴィルロウのテーラーの型紙を使って、完全再現しました!!
というスーツもありますが、それは研究をすればできるのです(と私は思います)。
どちらかと言いますと、その人が見て学んで感じたものを、解釈をして作る方が、特別で価値があるものなのではないだろうか。
と私は思うのです。
まぁ、これも上下右左、どれも必要なように、正解はないのです。
私はそんなことを思いながら、古きものから学び、今の時代と、これからの時代に必要だと思うものを、勝手に妄想して作り続けております。
私がクラシック!ブリティッシュ!
と言っているのは、わかりやすく私の好みや世界観を伝えられるだけで、決してコテコテなモノづくりではないのは、そういう思いからきているのです。
-Atelier BERUN-
東京表参道のオーダースーツ / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途
自由業の方のツイードスリーピースが特に印象的ですね。
年中Tシャツとジーパンでも文句を言われない立場の人が敢えて
かしこまった格好をするというところに、男の美徳がどうあるべきかというものを感じます。