BERUNです。
なかなかブログを書く時間が取れず、久しぶりの投稿です。
最近は洋装や西洋の近代史を読み漁っておりまして、インプットに時間を使っております。
本を読むのは得意ではないのですが、興味のある本だけは集中して読むことができるという、そんな単純な男です。
知れば知るほど、自分は無知だなぁということを感じる日々です。
新しいことを知るたびに、洋服への興味関心が深まっていきます。
わたしが伝えたいのは、ファッションは決して軽率なものではなく、考えて楽しむものだということ。
その考えることをさせずに、表面的なモノを売ることに徹した結果、洋服は軽んじられてしまいました。
多くの人は考えることをしたくないので、大衆に売ることを考えるとそのような方法になるのは致し方なかったのでしょう。
しかし、結果的に考えたい人たちにとっては洋服がツマラナイものに見えてしまったままになっているのが、非常にもったいないのです。
考えて着る洋服。
その方が遥かに愛着も湧くし、モノを大切にすることは、自己愛にもつながります。
モノを大切にし、人を大切にし、自分を大切にする。
さぁ、なんだか匂ってきましたので、本題に入ります。笑
ジャケット着て、ジャーニーしよう
ミリタリーやレザーウェアがお好きなY様。
ツイードのラグランコート、モールスキンのトラウザーズと来て、今回はスポーツコートをお仕立ていたしました。
生地は英FOX BROTHERSの強撚糸、FOX JOURNEY。
オリーブとネイビーの格子柄なのですが、これが意外と合わせやすいのです。
下はネイビー、ベージュ、ダークグレーは合わせられますので、大抵のトラウザーズは大丈夫です。
グリーン、着てみたいけど、難しそう。
と思う方には、ぜひ参考にしていただきたいです。
また、グリーンの色目は落ち着いたものの方がいいでしょう。
あまりカチッとした服装ではなく、カジュアルな着こなしが多いという方には、シンプルなテーラードではなく、このような形のジャケットは日常的にも使いやすいと思います。
Y様、ぜひたくさんご着用ください!
ウールリネンジャケット
高校の部活の後輩であるT君。お互いラグビー部でフォワードだったため、スクラムの中でわちゃわちゃしていた仲でした。
たまたまBERUNの動画を観て、タメになるなぁと何度も観て、概要欄を見て気がついたそう。笑
確かに、高校の私はバンドマンだったしごちゃごちゃ古着ミックスコーデをしたり、モードファッションをしたりでしたので、面影ないですね笑
そんなこんなで18歳のとき以来の再会で、以後何度も遊びに来てもらっています。
誰しも洋服にかけられるコストというのは決まっていると思います。
それをどこにどのようにかけるかで、その人のセンスはわかりますし、その後の変化・進化も大きく変わっていきます。
限られた資金の中で、これはお金をかけないといいものが見つからないよね。というもの、それはズバリ、
テーラードです。
はい、ポジショントークです。笑
これはお客様にはいつも話しているのですが、コートや靴、鞄など、身体から遠いところよりも、まずコストをかけるべきは身体の中心に近いところです。
身体に近い部分というのは、それだけ可動域が影響してきます。身動きのしやすさやストレスに直結する部分なのです。
一般的には、靴にお金をかけるべき。という意見があります。
靴にはスーツの3倍金をかけろ。ということも聞いたことがあります。
それは一理あるでしょう。ですが、たとえば靴に3倍かけるとしましたら、靴が10万円のものだとすると、スーツには3,4万円しかかけられません。
これはわたしの一意見ですが、3,4万円で良いテーラードの洋服を手に入れるのは不可能です。
物事には限度というのがあるもので、100均で買ったほうき、すぐ折れちゃったんだけど!なんでよ!
というくらいズレてるという感覚です。
この値段だからこのくらいだよね。という認識を持っておく必要があります。
では、”靴はいいものを理論”でいいますと、靴はいいけど、スーツはそれに見合っていない。となると、その靴の本来の価値が発揮されないのです。
靴の良さに目が行く前に、まずは大きな部分にどのようなこだわりがあるかを見られます。
まず一番面積の大きいところから仕上げる。そして、余裕があれば、身体から離れた部分の洋服を固めていく。というのが、わたしは順番としてはよいのではないかと思います。
以前Xでも書きましたが、若い方で、予算が限られているという場合は、コートは1,2万円で古着でアクアスキュータムやバーバリーのステンカラーコートを買えばいいのです。
ステンカラーコートのようなざっくりとしたコートは、袖と着丈さえ間違えなければ、いけてしまいます。
そして、ステンカラーコートは流行に左右されないアイテムのため、長く生き続けることができます。
また、靴も今は美中古を扱う店がかなり増えてきました。
10,20年前の革がまだ良質だった時代の靴を今の定価よりもはるかにリーズナブルに手に入れられる方法はあります。
それらは巷で手に入れることはできますが、ことスーツとなると、やはりブランド物だから良いというわけにはいかず、大切なのは仕立てとサイジングです。
このようにして、お金の使うところを考えていくと、余計なコストをかけずに間違いないものを揃えていくことができます。
残った予算は、スーツやジャケットなど、時代が変わっても流されない自分のためだけの洋服を揃えていけば良いのです。
一般的な洋服屋さんと、仕立て屋は根本的に考え方が違います。
流行を作り、洋服を通じて経済を回していくのが洋服屋。
変わらない洋服を作っていく、考える洋服を作るのが仕立て屋。
つまり、”流行服を作る仕立て屋”というのは、本来の考え方とは逸脱しているのです。
それこそ最初の話に戻りますが、流行服を作るというのは、その店のスタイルがないということで、すなわちそこに思想や哲学がないのだとわたしは思ってしまいます。
個人の設計士なのに、イマドキの建売みたいな住宅を勧められたら、それ、あなたじゃなくてもいいよね?となるように。
個人店ならではのやり方があるのです。
流行服をオーダーで仕立てるということは、”考えなくてもいいオーダー服”ということです。
そこには流行服のような最先端な煌びやかさもなければ、仕立て屋の作る普遍性もないため、いいとこ取りのように見えて実際はどちらも掴めていないことになります。
仕立て屋に足を運び、店員が、
「今はこんな形が流行ってますよ」
と言われたら、そこにはスタイルがないお店なんだな。と思っていただいて間違いはないと思います。(まっこれも持論です)
T君に今回仕立てたのは、ウールリネンの春夏秋用のジャケット。
ベージュは3シーズン使える便利な色です。
トラウザーズはネイビーのベンタイルコットン。
これがあれば雨の日も困りません。
ネクタイもウールリネンで、季節感を合わせました。
BERUN初の試みである、オリジナルの靴(のサンプル)を履いてもらいました。
ジャケパン、カジュアルスタイル、どちらも合わせられる靴。
8月には完成させたいですね。
自信を与える洋服
良いものに触れるというのは、感性を磨くということもありますし、自分に自信を与えてくれるという面でも人生で大いに役に立つと思います。
素っ裸(に近い)状態で、何も持たずに、自分に自信を持てるという方はかなり稀有な存在だと思います。(そういう人はネジが外れてるというか、、)
性別の話をするのはこの時代憚られるのかもしれませんが、オスとメスという動物としての違いで言いますと、オスは自らを大きく、強く、格好良く見せるために、飾り立てる生き物です。
毛を生やしたり、華やかな色や模様を付けたり。
このようにしてオスはメスの気を引いたり、外敵から身を守るようにしています。
「おれは自信まんまんなんダゼ」
という人よりも、
「私は自分に自信がない。だから洋服や他のものの力を借りているのです」
ということを強く誇れる人の方が、わたしはよっぽど人間味を感じますし、大きな方だなぁと思います。
洋服の力を借りるということは、謙虚さと器の大きさの表れだと思います。
等身大という意味は、人それぞれの解釈でいい。
何も全部が全部、そのままでいるのがいい。というのが本質だとはわたしは思いません。
人は生まれてから死ぬまで、自分の理想像を追い求めて、成長して、魂を磨いていく。それが生きる何よりの醍醐味だと思います。
生まれた状態がスタートで、そこから色々と学んでいく。その道中で様々なものに出会い、自分を作り上げていく。そう考えると、等身大なんていう言葉の定義自体が難しくなってきます。
自分をよりよく見せること、それは生き物の習性としてあるべきことだと思います。あえて小さく見せること、それは反対のように感じるかもしれませんが、わたしは同じことだと思います。
「カッコつけるのなんてだせぇよ、おれはありのままでいくんだ」
という方は、その人なりの格好のつけ方なのです。笑
今回初めてお越しいただいたT様。
上背もあり、眉目秀麗でありながら、どことなく自信のなさがある。
自己啓発的なもので、自信を与えることはできるかもしれませんが、それは一過性のものであり、永続的ではありません。
やはり自分の内側から呼び起こすことが最も大切だと思います。
そのために、装いの力を借りる。
まずはベーシックなネイビージャケットに、グレートラウザーズというスタイルを提案いたしました。
柄物は着たことがない。
そんな方につい柄物を提案したくなってしまうわたしです。笑
ネイビーにダークネイビーのウインドウペーンが入った柄。
このくらいあっさりしているウインドウペーンというのも、品を感じます。
今回靴のお話はしていなかったのですが、T様が長年愛用していた靴が、なんとも、、本格的なテーラードの世界には不釣り合いなものでしたので、靴についてもお話しさせていただきました。
履き心地を優先して選んだ靴ということで、かれこれ何足もオーダーをしてきたそうなのですが、それは格好良さと履き心地のバランスでいいますと、0:10で、履き心地に全振りしているものだったのです。
上質な革靴というのは履き心地がわるいわけではありませんが、やはり硬さはありますし、多少の不都合は起きるものです。
その格好良さと履き心地のバランスを、8:2にするのか、6:4にするのか。
それはその方の好みやライフスタイル、あとは年齢によって変わってきます。
これは靴に限らず、洋服もすべてそうで、着心地全振りでいけば、感動パンツにスニーカーに洗えるシャツにリュックで仕事着は完了なのです。
ですがこの格好で、果たして仕事をしていて楽しいのか?というところです。
仕事の時間は人生の3分の1以上を占めています。
その3分の1を楽しまずに、ただ快適さ、楽ちんさだけを求めて生きるというのは、わたしはなんだか物足りなさを感じてしまいます。
T様には、わたしが以前安く手に入れたのですが、サイズが大きく涙を飲んだオールデンのロングウイングチップの靴をお譲りいたしました。(サイズがドンピシャリ!)
体格のあるT様には、オールデンの外羽根靴が非常に合います。
この靴であれば、休日にデニムに合わせてもよし。
まさにオンオフどちらも使える一足です。
今まで愛用してきた履き心地全振りの靴は、ワンマイルウェア、またはアウトドアの日に使っていただけたらと思います。
後日談、奥様から、「垢抜けたね!」と言われました。
とご報告をいただきました。
嬉しい限りです。
決して押し売りではなく、ですが、多少のお節介はあります。笑
でも、人の人生観を変えるのは、ある程度気持ちを伝えないと難しいと思います。
T様、これからも垢抜けていってください!
ブルー&ベージュ
イギリスに滞在中のM様。
一時帰国の際に受け取りに来れるよう、2ヶ月程前にzoomでお話しいたしました。
今回は春夏用のジャケパンというご依頼でしたので、ブルーのウールリネンのジャケットに、ベージュのリネントラウザーズをご提案。
ウールリネンはいいとこ取りで本当に好きな生地です。
ウールの立体感と、リネンの涼しげな雰囲気、どちらも楽しむことができます。
背中がとても綺麗です。
この背中を見るたびにキュンとします。笑
上下別々で着ていただいても良し。
下のリネントラウザーズは、ポロシャツやリネンシャツに合わせることでカジュアルシーンでも使うことができます。
オンオフどちらでも使えるけど、決してカジュアルすぎない。
この塩梅が大切です。
日本人はカジュアル好きなので、大人のカジュアルスタイルとなると途端にお手上げになってしまいます。
オンオフという言葉ではなく、その間のスタイルも調光ライトのように、シーンや出会う人に合わせて微調整していけると、洋服がより楽しくなります。
M様、いつもありがとうございます!
-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途