精神論

BERUNです。

大変ありがたいことに、年々作る洋服の数も増えてきており、そこからのフィードバックから得られるものがとても多いため、より良いモノづくりをと日々研究しているところです。

これはモノづくりの宿命でもありますが、こだわればこだわるほど、多くの人に気づいてもらうというポイントから離れていきます。
気付いてもらう必要がないなら、こだわる必要はないのではないか?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、このことについて、最近わたしの中でようやく綺麗に消化することができましたので、今回はそのようなお話をしたいと思います。

まず、第一フェーズとしまして、装いにこだわる理由としては、社会的にどう見られるかという要素があり、そこは洋服にお金をかける上で最も大切なところです。

その人の着る洋服を見ることで、
「わたしはこういう人です」
と周りに指し示すことができます。

人は第一印象が9割というのは有名なお話ですが、その9割を得るために洋服に関心を持つのはとても大切なことだと思います。

「オレは人からどう見られたって構わねぇぜええェえぇ」
って方は、わざわざ洋服にお金をかける必要はないのです。

そして、ある一定の条件を超えた先、第二フェーズへと行きますと、そこからは他人のためではなく、自分の気持ちが満足しているかどうかというラインにいきます。

一定水準を超えた辺りから、理想的な大人としての装いが確立していきます。
富士山でいうと、7号目くらいでしょうか。
まぁまぁ見晴らしが良くなってくるところです。
ここで十分だという人もいるでしょう。
社会的に評価されたから、もう洋服にこだわる必要はナシ!!
山小屋で蕎麦を食べて帰ろうっと!!富士山最高だったわぁ🎵

という判断もあります。

ですがここ最近感じることは、そこから先の世界である第二フェーズから得られる”精神的なベネフィット(利益・恩恵)”こそ、装いの本当の価値なのではないかということ。

最近BERUNでは、ボタンホールを手縫いでかがるという裏メニュー(ここで書いてるのでもう表ですね笑)を遂行しています。
ボタンホールの手縫いはわたしも学生時代にやったことがあるので、何ヶ月か練習をすれば誰でもできるようになります。
工房内でも縫える人はいるため、工場でオプションとしてやってくれるところもあります。
ですが、わたしが欧州で見ていた、
「うおおぉー!なんという美しさ。。!」
と唸るような仕上がりは意外と少ないものです。

今回、ご縁があり、昔ながらのサヴィルロウスタイルに造詣が深い職人の方にお願いをする機会があり、その方の仕上がりを見ますと、圧巻の美しさでした。

ナポリスタイルのような、ぱっと見でわかる手仕上げではなく、見る人が見ないとわからない仕上がり。(これはどっちが良い悪いではなく、好みです)

わざわざ「手縫いなんだゼ?」と強調する必要がない。というストイックな姿勢を感じます。

この手縫いの仕事が入った上着に気が付く人は一体どれだけいるのでしょう。
おそらく、1万人に1人、いるかいないかだと思います。
そのくらいマニアックな世界です。

ではそこにわざわざ時間とコストをかけなくてもいいのでは?と思うかもしれません。
ですが、この極上の手仕事の入った洋服を着ているという精神的な強さは、必要か必要ではないかで測れるものではないのです。

誰にも気づかれなくてもいい。ただ、自分は今、高尚なレベルの洋服を身にまとっている。

この精神性が、気持ちに余裕をもたらし、自信を与えてくれるのです。

まずは社会性を身につけるために洋服に気をつかう。
それが第一段階だとしますと、”そこから”先の世界は、自分の精神を上げる洋服を着る。

装うという本当の価値は、”そこから”なのだと思うのです。

この精神論と呼ばれることは、こと洋服に限らず、私たちのこの人生は、ほぼ全て精神論なのではないかと感じます。
例えば、学生時代で言いますと、すこぶる練習をして、とにかく練習をして、ひたすら練習をした。
だから次の試合は絶対大丈夫だ!
というのも、一つの精神論です。
それは技術が身につくというよりも、どれだけやったと自分に言い聞かせられるかが大切で、その精神の強さが勝敗を握ると言っても過言ではないからです。

音楽発表会や、テスト勉強もそうでしょう。

人は精神論で生きていると言っても過言ではないと思います。

わたしはご多分にもれず、モノが好きな人ですが、そこにはモノだけではなく、誰から譲ってもらった、旅先でこういう出会いがあって、手に入れることができた。など。
実際のものの価値には乗らない体験が、自分自身の中だけで価値になっていることが多くあります。

そしてモノの価値を最大限高めるためには、この精神性をどれだけ込められるかが大切なんだと私は思います。
それには大前提として、その物自体が良い物である必要もあります。
残酷なお話に聞こえるかもしれませんが、大切な方から譲っていただいたものが、あまり品質の高いものではなかった。
その物は永く使う前提で作られたものではないということもあります。
やはり本当の意味で精神を整えてくれるものは、良いものである方がいい。
手をかけて、じっくりと考えて作られたものこそ、持つ人の気持ちを引き上げてくれるのです。

良いモノを持ち、それを持つことで、自分の精神情態が常に心地よいところにおいておけるか。それが最も大切なことだと思います。

リネンスーツを着る

2年前にスーツをご注文いただき、久しぶりにお越しいただきましたS様。
S様はまだ20代前半ということもあり、当時のわたしは少し遠慮気味に、ベーシックな生地で若い方でも着こなせるスーツをご提案していました。

わたしはその方の雰囲気や現在地(今どのレベルの洋服を着こなせるか)などをわたしなりに考えて生地や仕立てをご提案しております。

そのような仕事の仕方ですので、久しぶりに来られると、その方がどのくらい変化をしているかというのもやんわり感じるのです。

S様はぐっと大人な雰囲気になり、着るものもネイビーやグレーでなくてもOK。ということでしたので、グレージュのリネンスーツをご提案いたしました。

共生地のブレイシーズを合わせております。

細身のS様ですが、しっかりとゆとりを出すことで、貧相なスーツではなく、エレガントなシルエットになります。

「リネンのスーツは涼しいですか?」

と聞かれることもありますが、即答で、

「いえ、涼しくありません!」

と答えます。笑

まぁ、ウール素材のスーツと比べるとひんやりとして涼感を得ることはできますが、リネンだからと言って涼しいわけではないのです。

だって、Tシャツでも暑いんですから、上に着れば暑いわけです。

ですがここは発想の転換で、どうせ何を着ても暑いのだったら、好きなものを着ようよ。という考え方もいいのではないでしょうか。

それこそ、リネンスーツこそ精神的ベネフィットがとてつもなくある洋服だと思います。着る必要がないのに、わざわざ着る。

その無駄と思われる行いをあえて楽しんでみる。というのが大人の遊び方だと思います。

着込んでシワを楽しんでいただきたいです。

S様、ぜひたくさんご着用くださいませ!

ヴィンテージカーキスーツ

栃木からお越しのE様。
秋冬にグレーフランネルのスーツをお作りいたしまして、今回は春夏秋にむけたスーツのお話です。

ウール・モヘア・リネンのヴィンテージ生地でお仕立てするサマースーツ。
色は明るめのグリーンカラーで、爽やかな夏らしい色合いです。

こちらももちろん共生地のブレイシーズで4ピーススタイル。

リネンが入っているスーツの場合は、袖やトラウザーズの丈は少し長めにお作りいたします。

1年2年と着ていくと、シワが刻まれていき、短くみえてくるためです。

お仕事で着られるとのことでしたが、E様自ら、このくらいの色味のものがいいです!とのご希望でしたので、それならぜひ!とわたしもその優雅波に乗ったわけです。

夏にスーツを着るなら、このくらい色味がある方が、暑苦しさがなくていいと思います。

プライベートスーツと呼ばれる色合いですが、こういうのをビジネスでも使う方が増えてくると、街が映えますね。

E様、この度はありがとうございました!

Specialなサマーブルースーツ

BERUNのストックしてある生地の中でも、特にスペシャルな生地がありまして、今回はそちらで仕立てたスーツをご紹介いたします。

チラッ🫣

もう言葉はいりません。

80年代のヴィンテージ生地。
紡績業が栄えた80〜90年代は素晴らしいクオリティのものが多いです。
40年前のもので、このような使いやすい色が残っているというのは奇跡に近いです。

見つけたときは、よくここまで、ハサミを入れられずに残っていてくれた、、!
と歓喜します。

ネイビーブルーカラーのサマースーツ。
夏らしく貝ボタンにいたしました。
鍛え上げられた身体に映える、シンプルながら華のあるスーツです。

スペシャルすぎるスーツですが、これこそ最初にお話しした、精神的なベネフィットがとてつもなくある一着です。

繊細な生地のため、2パンツでお作りいたしました。永く着続けていっていただきたいです。

Special2 モカブラウンスーツ

こちらもスペシャルなお生地。
ドーメルのスーパーブリオは今も続いているシリーズですが、こちらは80年代のヴィンテージもの。

お色はモカブラウン。

シングルのピークドラペルに、1つボタン。

いやぁ、こちらも言葉はいりません。
ヴィンテージのジャケットやスーツというのは巷ではありますが、当時のハイエンドなヴィンテージ生地を使い、一から今この時代に仕立てるというのは、この上ない贅沢だと思います。

なんとも言えない上品な色。
定番色ではありませんが、飽きずに長く使い続けることができます。

M様、この度はありがとうございました!!

-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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