Final Isle of Harris~Japan

BERUNです。

今日は10時から行われている、生地工場の見学に行くことに。

行ってみると、もくもくと煙が外まで出てきています。

外まで広がる油の含まれたウールを熱で乾燥されるニオイ。

わたしはビアードパパのニオイよりも香ばしいその香りにつられて吸い込まれていきました。

着いてみるとわたしの勘違いで、10:30からでした。笑 (チェックアウトギリギリだったからめちゃくちゃ急いだのに笑)

その間、工場に併設してある小さなショップを物色。

ツイードで作られたティーウォーマーやミトン、人形など、わたしの心をくすぐるものばかり。

結果、ティーウォーマーとミトンとツイードのブルゾン2着を購入。

1着、袖裏が破れていたので、安くしてくれました。笑 (君はテーラーだろ?自分で直せるだろ?と言われましたが無視しました笑)

10:30から工場見学開始。

そこは糸から生地にするまでの全ての工程を行っている場所。

なかなか見ることができる現場ではないため、ワクワクが止まらない。。!

真っ白な毛糸から一つ一つ工程を踏んで、生地になるまでの流れを説明してくれました。

ハリス訛りのスコティッシュイングリッシュでしたので、1割も理解できませんでしたが、感覚で大事なところは覚えました。笑

毛糸を染め、

染めた糸をこの中に入れ、長いトンネルを通り、

この部屋にまとめられます。

毛糸をロールにかけていき、徐々に紡いでいきます。

しばらく回っていると、ここまで形になってきました。

ほら、ここまで形になってきましたよ。

ロールの針先は一方通行で、とても硬い。

その硬い針をぐるぐる回り、糸が紡がれていきます。

少しずつまとまってきた毛糸を今度は一本の糸に撚り合わせていきます。

ぐるぐる回して撚り合わせていきます。

するとこんな状態になります。

その糸を縦糸と横糸と繋ぎ合わせて、ツイードが完成します。

洗いをかけます。

そして乾燥させます。

生地を真っ直ぐに伸ばし、

最後は検品。

後ろからライトを当てて、傷がないかをチェックします。モノづくりはいつまでもとてもアナログ。

こうして完成するツイード生地。

このようにすべての工程を担う場所はハリス島では3ヶ所のみだそうで、こうやって見学ができるのはここだけでした。

人気の色はと聞くと、「ブラック、ブラウン」

とのこと。

ネイビーは次点なのか。意外。

そして続けざまに、

「こんな色(黒や茶)より、わたしはグリーンやベージュのような温かい色がいいよ。君が着てるみたいなね。」

と言いました。

確かに、ハリス島という環境にいてモノづくりをしていると、ブラックというのは強すぎる色です。

やはり牧歌的な自然な色合いの方が、作り手は作っていて楽しいのでしょう。

確かにWeaverさんたちの部屋には黒や強い色はなかったなぁ。やはり自然な色合いばかりだった。

そしてハリス島にはテーラーが1人もいないそうです。

完全にモノづくりだけの島。そこに強い信念と美学を感じました。

時刻は11:30。

工場見学を後にした我々は、フェリーの出港時間が14時で、13時までに港に着かなくてはいけないため、港に向かいます。

その前に少しでも時間があれば、この生地たちをどうにかして送りたいのです。笑

今日中に車を返さなくてはいけないし、本島に戻ったらあとは足早にグラスゴーに戻るだけですので、この島で完結させたい。

そう思いながら、港へ向かいます。

ハリス島は舗装されている道が一車線あるだけで、すぐ隣は未舗装の草や小石がある道です。

話しながら緩やかなカーブを曲がっていたとき、軽く道を踏み外しました。

ドンっ!!!

路肩に肩輪が落ちてしまいました。

しかしそこまで段差はなかったため、すぐに本道に戻る。

竹「いやぁー!危なかったですね!大丈夫でした?」

髙「いや、おれこういうのある方が目覚めるんで大丈夫です」

そんな話をしていたら、

「ピーン」

おや、画面が変わったぞ。

空気圧の低下を知らせる画面です。

((((;゚Д゚)))))))

やってしまった。。

パンクです。

たったあの衝撃でタイヤってやられるのか。と驚きとショックが入り混じる。

徐々に左前タイヤの空気圧が減っていく。

245あった空気圧が、240,235,230,225,と減っていく。

しかも今は広大な大地しかない一本道。

店もなければ民家もない。

おわった。

高見氏が車関係の店を調べると、16km先にあるという。

じゅうろっきろ、、

間に合わないだろぉ。

しかし行けるところまで行くしかないため、徐々に微妙に左に傾いていく車をゆっくり走らせる。

空気圧が残り25となったところで、なんと奇跡的に車の修理屋に着きました。

声をかけると、なんとタイヤの修理はやってないとのこと。

orz

もう少し街に行けばもう一軒修理屋があるぞ?そこに行けばいい。

と言われましたが、もう行けるタイヤではありません。

空気だけ入れてくれないかと聞くと、快く入れてくれました。

これで空気圧は250に復活!

しかし、さっきより減りが早い。

大雨の中、なんとかもう一軒の修理屋に着く。

が、なんと。

定休日。

orz

落ち込んでいても、ただ空気がなくなるだけなので、すぐ近くにあるガソリンスタンドまでかけよる。

そしてダメ元で聞いてみると、やはりここではガソリンを入れるだけで修理はやっていないとのこと。

修理屋を呼ぶことはできるけど、時間はかかると思うよ?

現在12:30。

終わりです。

するとすぐ近くにいたお客さんが、

「タイヤの修理屋さんならそこにいたわよ。外でお弁当買ってたわよ」

なんだとー!

そして外に出てみると、出張タイヤ修理の車を携えて、イカしたガタイのいい髭面の兄貴がキッチンカーの弁当が完成するのを待っていたではないか。

こんな奇跡、あるのか。。?

そして状況を伝えると、

「弁当来るまで待て。弁当受け取ったら行くゼ。」

とイカした兄貴の返事。

こっちは一分一秒の世界なんだが、、と待っていると、弁当と色のついた炭酸水を片手にイカした髭面の兄貴がタイヤチェック。

「このタイヤは今持ってないから、一旦店に戻る。5分で戻ってくるゼ」

5分、、頼みます。。!

そして待つこと10分。

時刻は12:45。

フェリー乗り場までは5分。

これは、、どうなるんだ。。

そしてタイヤを車から軽快に外し、ゴムを軽快に外し、新しいタイヤを魔法のような手捌きではめ込み、空気を入れ、チェックをする。

そしてタイヤを車に戻す。

この時間5分。

完成。

「ハンドレッドトゥエンティパウンド」

払います!払います!!笑

ハリス島から本島に向かうフェリーの数はとても少なく、車を乗せられる便となると、2日に1本くらいで、かつ予約がいっぱい。

この便に乗れなければ、私たちはロンドンまで戻ることができず、帰ることができませんでした。

時刻は12:55。

映画のような流れです。

そしてフェリー乗り場に向かい、13時に港に到着。

さっきまで激動に激動を繰り広げていたとは思えない我々は、フェリーに乗るまでの1時間、車の中でゆっくり待つのでした。

無事フェリーに乗り込み、ハリス島へ別れを告げます。

最後の最後に特大の思い出をくれましたが、すべてひっくるめて、最高でした。

もう最高以外ないです。

もしこれを読んでいる方で、自分がイタリア派か英国派かまだわからない。という方がいらっしゃいましたら、わたしはこの2つの選択をお出しします。

①🇮🇹8月のナポリで炎天下の中、リネンのカプリシャツに短いバミューダショーツを履き、足元はエスパドリーユ、海の見えるテラス席でボンジョールノ!と店員に陽気に語りかけ、ピザを食べながらスパークリングワインを飲む。

②🇬🇧🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿8月とはいえ極寒のスコットランドの最果ての地、ハリス島で、何もない広大で美しい自然に抱かれ、強風と羊しかいない景色でただただその絶景に良いしれる。晩御飯はぬるいエールビールに決して美味しいとは言えないフィッシュ&チップスに酔いしれる。

さぁ、あなたはどっちですか?

ドラクエ5世代の人であれば、ビアンカかフローラかというくらい究極の選択ですね。笑(わたしはフローラ派です)

極端かもしれませんが、このくらいの極論クイズだからこそ、本当に好きなものが見えてくると思います。

フェリーの中で2時間40分、疲れ果てた我々は2時間熟睡。

最後の20分でフィッシュ&チップスを平らげました。

スコットランド北部の港町アラプールに到着。

ここからグラスゴーまではGoogle上では4時間ちょっと。

現在5時前、レンタカーの返却が22時なので、よほど何かがなければ大丈夫でしょう。

しかしわたしの気がかりは、

「ツイードの生地、送れてない。。」

です。

ハリス島での奇跡の出来事に時間を取られ、まだ後部座席には大量の生地が鎮座しています。

これをなんとか送らねば。

グラスゴーに行く道中に、POST OFFICE、DHLを探すことに。

するとインヴァネス(ネス湖で有名な街)の近くに、夜22時までやってるという郵便局を発見。

しかし、地図を見る限りとっても田舎。

やってないでしょ笑

一縷の望みをかけ、そこに向かうことに。

道中事故渋滞にも巻き込まれ、そこに着いたのは19時。

なんと、コンビニに併設してある郵便局でした。

こんな大きい荷物、送れないでしょ。と半ば諦めるも、聞いてみると、できるわよ。と即答。

やったー!しかもここには梱包材も売ってる。しっかり梱包をして送れる。よかった。

そしてやけに高い梱包材を買い、梱包をし、住所を書き、支払おうとしたとき、店員のおばちゃんの様子がおかしい。

「あら。ごめんなさい。やっぱりここの郵便局だとこの大きな荷物は送れないみたい。」

なんだと、この時間はなんだったんだ。。

「隣町に大きな郵便局があるから、そこならやってくれるわよ。明日は朝8時からやってるわよ」

サンキュー。明日までこの街にはいられないんだ。。我々は。

そして梱包された生地たちをもう一度車に積み込むことに。

現在19:30過ぎ。

グラスゴー到着予定時刻、23時。

間に合わない。笑

こうなれば、荷物は一旦手放して、グラスゴーまで帰ることに。

グラスゴーまでの道のりは、高見氏と、自分自身の感情や人間性を見つめ続けるセッションをしているような時間でした。

自分がどういう人間であるか。今回の旅で動いた感情の答え合わせをこの道中にしていました。

完全に遅刻しながら、無事グラスゴーに到着。

いままでのハイランド地方の風景から打って変わり、いきなり都会に来ました。

今夜のホテルは、レンタカーの返却場所の目の前の宿を取りましたヨ。疲れてるから、気が効くでしょう、ワタシ。

車から下ろすと、果てしない荷物の量。

これ二人で持っていける量じゃないヨネ?

高見氏はわたしの生地を持ち上げて運んでくれました。笑

そしてなんとか道路の向こう側へ渡り、ホテルのベルを鳴らすと、噂には聞いていましたが、これがグラスゴー訛りか。

何を言ってるか全然わからない。笑

そして聞き取れたのは、「そんな名前で今日予約入ってないぜ」

なんだと。

そして中に入れてもらい、確認をしてもらうと、グラスゴーには同じ名前でもう一軒ホテルがあるとのこと。

きっとそっちだぜ。と言われ、そこまでの道のりは、徒歩20分。

この荷物を持って20分。

無理です。

すると、高見氏がすかさずUberを呼んでくれました。(わたしの携帯はネットが繋がってないので、彼には非常に助けられました)

しばらく待ち、Uberに乗り、無事ホテルに到着。時刻は0時。

もうへとへとだと言うのに、高見氏という男は酒を飲まないと眠れない男なんです。

そのままホテルの下のパブでお疲れ乾杯。

気がつけば時計はAM2:00。

では、ここで当初の予定をお伝えします。

最終日、早朝5時台の鉄道に乗り、11時にロンドンに着く。

帰りの飛行機の時間を考えると、16時まではロンドンにいられる。

5時間ロンドンを少し楽しむ。

そんな最終日でいいんじゃないですか?

もう無理です。

そして荷物を預ける方法を調べ、眠ったのは3時。

朝起きれるわけもなく、9時に目が覚めました。

そして郵便局で”あの”荷物を送ります。

これがまた非常に面倒だったのですが、小一時間ほどかかり、なんとか送ることができました。

グラスゴーを少し散策しようと思っていましたが、もうそんな時間はなく、そのまま鉄道に飛び乗り、ロンドンのユーストンまで向かいます。

ユーストンからキングスクロスまで歩き、そのままガトウィック空港まで向かいます。

ロンドンに名残惜しさを感じていたかと言われますと、一切なく、どちらかと言うと、カントリーサイドでの思い出が深すぎて、ロンドンは乗り換えでちょうどいいやというくらい、我々の心はハリス島に置いてきてしまったようです。

牧歌的というとなんだかほわんとしてぼけぼけしているようなニュアンスに聞こえますが、自然の中で生きるということは、都会で生きるよりもタフさが必要で、だからこそ心が鍛えられるのだと思います。

強い心を持っているからこそ、人に優しくできる。

ガトウィック空港で、レストランの店員が全員4んだ魚の目をしていたので、思わず、

「みんななんでこんなつまらなそうなんですかね?」

とあまりにも素朴に出てきてしまった質問を高見氏にすると、

「世の中はこれがデフォルトですよ。我々がいい人に会いすぎてたんですよ」

と。

なるほど。

人は人でしか磨かれない。本当にその通りだと思います。

日本にいて、あまり尊敬する大人という人に出会うことは多くはありませんが、今回ハリス島の2日間ですでに数人尊敬できる人に出会いました。

乗り換えを経て、長旅も終わります。

今回は、安い航空券、とても評判のわるい航空会社で、心配でしかなかったのですが、結果的に何ともなかったじゃん!

機内食が美味しくなかっただけで、あとは特に不満はなかったよ?

よかったよかった。

と思い、無事羽田空港に到着。

しかし、待てど待てどわたしのグローブトロッター(赤い方)が来ない。

すると、ベルトコンベアーが止まった。

もう来る荷物がない。

.

.

.

ロスバゲや、、

人生初のロスバゲです。

本当に、最後の最後にネタを持ってきますね、わたしの人生というのは。

遺失物届けを出し、数日待つも、連絡は来ず。

こちらから何度連絡をしても、航空会社と繋がらず、

やられた。。

と思っていたとき、1週間後、上海にあるという連絡があり、無事受け取ることができました。

ヨカッタヨカッタ。

体力のある男2人だからこそできた、今回の英国縦断8泊10日UKツアー。

非常に実りのある10日間でした。

そして英国で大量に仕込んできた生地たちがBERUNにやってきます。

ぜひ、これから秋冬シーズンが始まりますので、楽しみにしていてください!

長々と駄文にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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