時間をかけて育てていく

BERUNです。

納品ラッシュが続いております。
全ての方の洋服を撮影できているわけではありませんが、撮影させていただいたお洋服を少しずつアップしていきたいと思います。

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旧加地邸探訪

半年以上前から決まっていた予定。
葉山にあるフランクロイドライト建築の建物を見学しに行ってきました。
設計者はフランクロイドライトの愛弟子である遠藤新。

もうすぐ築100年となる名建築へいざ探訪。

石、木、植物。
これらを使い建てられる建築物を超えることはありません。
新素材や、新しいものが日々次々と生まれてきてはおりますが、自然から作られるもの以上に美しいものはないのです。
最近では数百万で簡単に建てられる家なんていうのが話題になっていますが、そのような家はまさに今しか見えていない人のための商品だと私は思います。今が良ければいい。とても刹那的な生き方です。

本物とは、時間を経てはじめて評価されるものです。

こちらの建物で間違いないことは、新築当時よりも今の方が圧倒的なオーラを放っているということ。

視野が狭くなり、回転も早くなり、何もかもが消費されていく昨今。
そこに虚しさを感じる心がある人は、人間らしさを忘れていない人だと思います。

同じ時代に同じ建築家によって建てられた都内の建物が、先日取り壊されたそうです。
相続の問題で、受け継ぐではなく、壊すという選択をせざるを得ない今の日本。
こういうものこそ残していきたいです。

今回の旅のお供は、大学で建築学科を卒業した友人のKeiichiro Fukushima氏。

美意識マックスの彼とのこういう時間はとても有意義でした。

こちらはなんと風呂。
寝転び湯もできる。もうここは一生いれるやつです。

こちらの建物は宿泊も可能。
36万円らしいですが、6人まで泊まれるので、1人6万円で日本の名建築に泊まれると考えると安いと思います。
大学生の卒業旅行なんか、最高じゃないですか。。?
こんな場所で男たちで朝まで語り合う。これ以上の夜はないでしょう。

この宿泊費で、名建築が次の100年へと繋がっていけるなら、喜んで宿泊したいです。

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ツイードon ツイード

いつもお越しいただいておりますT様。
今回はスコットランド土産のLovat社のツイード生地でジャケットをお仕立てさせていただきました。


アースカラーを基本としているツイードですので、牧歌的なツイードでブルー系の色柄がこれだけ入っているのは意外と珍しいです。

トラウザーズは今年のヒット作、ブラウングレーのキャバルリーツイル。
なんにでも合わせることができます。
こんな一見難しそうに見えるジャケットにも合わせられるわけですので、これが合わせられたらもはやなんでもいけますよね。

オッドベストは、今年見つけた生地で非常に気に入っております、イタリア製のモールスキン。
色はベージュカラー。
モールスキンのオッドベストはスウェードの質感を感じることができ、綿ながら非常に立体的なベストに仕上がります。

英国のブリスベンモス製のモールスキンでも良いのでしょうが、私の個人的な感覚で言いますと、英国のモールスキンだと少し硬すぎてしまうんです。
あと毛並がない。


わたしが個人所有しているスウェードのヴィンテージのオッドベストがこちらなのですが、それが非常に良い雰囲気で、なんとかこういうイメージのものを作れないかと考えていたのですが、レザーものは縫うスキルが変わってしまうため、なかなか難しかったのです。
そう思っていたところにこの生地が見つかりました。
これはいいとなり、ベージュとブラウンをまとめ買いしたわけです。

暖かみがあり、ほどよいカジュアルさが生まれる。
非常におすすめです。

T様にはピーコートもお仕立ていたしました。
仕事の時に着られるコートは以前お作りいたしまして、今回はカジュアルな場面でも着られるコートを求められておりましたので、ハーフコート丈のピーコートをご提案いたしました。

生地はMOON社のもの。肉感が通常の生地よりも厚く、質実剛健なコート向けの生地です。

ブラウンベージュの大きな目のバーズアイ。
このような形のコートがあれば、あらゆるシーンで使えるためとても重宝します。

こちらのコートは1番上のボタンまで留められます。
本当に寒いときはこの仕様で着られます。

T様、いつもありがとうございます!!

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ツイードのチェスターフィールドコート

最もシンプルで、タフで、オンオフ使える便利なコートと言えば、なあに?
と聞かれましたら、

グレーヘリンボーンのツイードコート

と答えるでしょう。
そのくらい、老若男女、そして人種も超えて活用することができるコートだと思います。

夏にスーツをお作りいただき、今回は秋冬物ということでコートをご注文いただきました。T様。

お子様が生まれたばかりで、とても忙しい中、お越しいただきました。

ツイードのコートですが、着丈をあえて短くはせず、しっかりと膝下でお作りしております。
丈の短いコートしかない今、見慣れない感覚はあるかもしれませんが、その見慣れなさを優先して、丈をズバッと切ってしまってはもったいないです。
なぜなら、このコートは20、30年と続けていくものですから。
未来の事なんて、到底誰も想像できるものではありませんが、ご自身の年齢+30歳と考えたとき、果たして腿くらいまでの短い丈のツイードのコートを自分は愛用しているだろうか。
「その時にはその時の好きな服を揃えるから、そんな先のことなんてどうでもいい」
という刹那主義的な方は、おそらく閲覧するページを間違っておりますので、どうぞ閉じてください。笑

何度も言っていることですが、なぜヨーロッパの人は若い人よりもおじさま、おばさまの方がおしゃれな人が多いのか。
それは、若い時からタイムレスで長く使えるものを少しずつ揃えていっているため、それが似合う年になる頃には、間違いない洋服のワードローブが潤沢に揃っているという状況になるわけです。

そして、そのような買い物の仕方を邪魔しているのが、流行トレンド、そしてモテです。

そもそもこれは甚だ疑問でしかないのですが、モテというのは、一体誰にモテたいのでしょうか?笑

このような人たちを対象にした人にモテたいというような明確なものがなければ、何を目的に洋服を揃えるかということすら見えないはずなのですが、そのように考えることをさせずに、ただ闇雲にモテという最強に無価値で、意味のない言葉を振りかざし、ビジネスが成り立っているのがこの日本です。

例えば、モテるということを念頭において洋服選びをしてみますと、

20代前半の、原宿のパンケーキに目がなく、行列があれば、とりあえず並んでみるというような方。そのような方であれば、自分の装いや、あり方というのをその方に向けてシフトしていく必要があります。

もうひと方、週末は映画館や美術館に行き、本を読むのが好き。ファストファッションよりは手の込んだものづくりのものを使いたいという方であれば、先程の方とはまた異なる装いやあり方を考えていかなくてはならないと思います。

最後にもうひと方。住まいは六本木。何よりもキラキラしたものに目がなく、高級なもの、ブランド品が大好き。週末は必ずパーティに出かけている。
という方であれば、その方に向けたモテを考えなくてはなりません。

あえてこのように並び連ねて書いてみたのですが、そのように自分を変えていくのって、非常にめんどくさくないですか?笑
そのくらい、モテという言葉は、わたしの中では近道に見えて、最も遠回りな考え方のように思えてしまうのです。

私は洋服を通じて、自分を磨いていきましょうということを常に伝えています。
何か武器の力を借りるのではなく、その武器を通じて、自分を鍛えていく。
物に頼りきってしまっていては、その物が使えなくなってしまったとき、その人は空っぽです。
自分磨きをしていくことによって、気がついたら洋服よりも自分が先に進んでいる。
そのような変化を感じるときがきます。
そのために、洋服は流行り廃りのものではなく、タイムレスで長く使えるものを選んでいただきたいのです。
物に一喜一憂するのではなく、自分の内情の変化により、飽きが来ないもの。それが本物だと思います。

わたしは常に、物に頼るな、自分が輝け。と思っています。(STAY GOLD!笑)

タイムレスな洋服は無口です。その人次第でどうにでも見えてしまいます。
だからこそ、着る楽しさがあるじゃないですか。
難しい物に挑戦し続けているうちに、自分が成長していくんです。

T様、最初は着負けするくらいのツイードコートですが、ぜひたくさんご着用いただきたいです。

この度はありがとうございました!

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アースカラーコーディネート

初めてお越しいただきましたK様。
今回はオッドベストも含めたツイードのジャケット&トラウザーズスタイルでお作りいたしました。

オッドベストは最初にご紹介いたしました、モールスキンのブラウンのもの。
トラウザーズはFox Brothersのフランネル。
色がとても綺麗です。

ジャケットはこちらもスコットランド土産のLovatのツイード生地を使ったもの。
550gmsほどあるかなり肉感のあるツイードです。
写真だけでもそのハリは感じていただけると思います。

ベージュ・ブラウン・グリーンと、全て自然界にある色でコーディネートしました。
アースカラーでまとめますと野暮ったくなることがありますが、サイジングや仕立てによりそう感じさせないようにしております。
ネイビーやブルーというお色でしたら、色自体がスタイリッシュですので、そこまで気にする必要もありません。

その色自体がすっきりとしない印象の場合は、ネイビーやブルー系とはまた異なるサイジングやフィッティングのイメージを持っておく必要があります。
まぁ、そんなことを言いながら、色でフィッティングを変えることはわたしは特にしてはいないのですが、色の持つ印象というのはかなり変わりますので、そのような観点から物を見る必要があるというお話です。

K様の柔らかなお人柄に、ツイードとフランネルのセットアップは非常に合っておりました。

この度はありがとうございました!!

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ブラウングリーンの千鳥格子

初めてお越しいただいたのがコロナの頃でしたので、もう来られて4年が経つH様。
そのくらい前になりますと、わたしのモノづくりもかなり変わってきております。
生地の買い付けの仕方から、縫製のレベルから、フィッティングの技術から。
成長するためには、圧倒的な数をこなさないといけません。
数をこなさずにトップスターに上り詰めた人はおそらくゼロ人だと思います。

ビートルズも駆け出しの頃は、リバプールの小さな会場で毎日ライブをしていたそう。

アスリートはわかりやすいですよね。
シュート一日何百回、素振り一日何百回。
その積み重ねは技術の向上にはもちろん繋がりますが、何より自身のメンタルに強く作用すると思います。

「これだけやったんだから大丈夫」

自信は自分を信じると書くように、ありえないほどの練習を積むことで、自信につながります。

それが高いパフォーマンスを生むのです。

ありがたいことに年々忙しくさせていただいておりまして、それにより、より多くの方のフィッティングをすることで、わたしのものづくりのレベルも上がり続けております。

モノづくりの人は、「これでいい」と言ってしまえばそれで試合終了です。
日々より良い物をと歩みを止めないことで、自分のモノづくりに飽きずに心を燃やし続けることができるのです。(なんか今回のブログ熱いなぁ笑)

変わらないものだけど、変わり続けている。
地球のように、我々は止まっているように感じるけれど、日々ものすごく変化し続けている。
それが自然の流れであり、成長なのだと思います。

ただ変わらないものは風化していくだけです。その先にあるのは、レトロ、ノスタルジーという表現。

日々モノづくりが変わり続けるBERUNにお付き合いいただいておりますH様に今回お作りしたのは、ブラウンとモスグリーンの千鳥格子柄の生地でお仕立てしたラムウールのジャケット。
Fox Brothersの生地です。

そして下はこちらも今年の個人的ヒット作でした、グレージュのローデンクロス。350gms前後のとても使いやすい肉感の生地です。

H様は怒い肩で、フィッティングは簡単ではありません。
よくお越しいただく方で多いのが、なで肩だということをあまりよく思っていない方がいらっしゃるのですが、スーツの美は流線型です。
スーツはなで肩の方が美しく見えるのです。

首から肩先に向けて降りていく傾斜が、男性的で格好いい上半身を作ります。

そう聞いた全国の怒り肩のみなさま!

「おれはスーツが似合わないのかー!」

と、怒り心頭じゃないですか?

ご安心ください!!笑

怒り肩の方は、できるかぎり肩がナチュラルに見えるように合わせるのです。
つまり、肩が強く見えすぎないように柔らかく作るということ。

怒り肩の人に似合わない洋服というのがあります。
それは、

ラグランスリーブと、マニカ・カミーチャ(シャツ袖・雨降袖)の2つのデザイン。

このどちらにも共通しているのは、肩の傾斜が命だということ。
「怒り肩で肩が張っているから、パッドを無くしてシャツ袖で作りましょう!」
という作り手の方がたまにいますが、それはやってはいけません。(そういう人は洋服のことを知らない人です)
怒り肩の人こそ、薄くでもパッドを入れることで、肩の流れを穏やかに”隠す”ことができるのです。

肩先を柔らかくすることで、怒り肩の肩も自然に見えます。

これに関してはブリティッシュやクラシックという話ではなく、わたしの美意識の話です。

硬く構築的な方がいいという話ではなく、どうした方が美しくみえるか。
という、歴史やスタイルより大切な、美の話です。

また、肩が張っている方は、体格云々ではなく、トラウザーズもゆとりのあるものを選んだ方がいいです。
なぜかと言いますと、トラウザーズにゆとりを持たせ、裾を広くとることで、肩の張りを中和することができるからです。

H様、とても素敵です!
いつもありがとうございます!!

流行、トレンドではなく、ただ自分の身体に合っている。ということが、何よりも格好いいということを、もっと多くの方に気づいていただきたいです。

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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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