厳冬

BERUNです。

2月、冬の寒さ本番中です。
この肌に刺さる感じがいいんですよね。
たまに店から近場へふらっとハットを被らずに出ることがあるのですが、この寒さになると、ハットのありがたみを感じます。非常に暖かい。

あと、コートを着る季節はハットがあった方がいい理論を説きたいです。
コートはスーツと比べて肩幅が広いアイテムです。
ゆったりとした肩幅のコートにはハットを合わせることで、全体のバランスが取れます。

肩幅の広いゆったりとしたコートが廃れていったのは、ハットを被らなくなった人が増えたことも要因の一つだと思っております。

ハット選びといたしましては、カジュアルな形をしたフェルトハットではなく、正統派のフェドーラをおすすめいたします。(中途半端にカジュアルさを出してしまうと、頭皮隠しかと思われてしまいかねないからです)

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エイコーンの滝

南青山に新たな観光名所ができました。
その名もエイコーンの滝。
今季より、シャツを英国から直接買い付けることにいたしまして、わたしがずっと昔から扱いたかったAcorn社の生地を買い付けました。
まず初めにということで、あれもこれもと頼んでいる内に、気がつけば560mにまで膨らんでいました。笑

送料と関税がとてつもなくかかりましたが、届いてみて、クオリティの高さに感動。。!

ただガッチリしているという単純なタッチではない。
どちらかと言いますと、上質なタッチの中に、程よい質実剛健さを感じる。そのような塩梅です。
タッターソールも10色以上ありますので、タッターソール問題は解決です。

シンプルな白とサックスブルー、ブルー系の定番の生地柄をかなりの種類押さえました。

えっ?前にでかいものが置いてあるですって?
なんのことだか分かりませんねぇ。笑

これからBERUNにお越しの予定がある方は、ぜひ楽しみにしていてください。

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ヘリンボーンonヘリンボーン

いつもお越しいただいておりますM様。
今回ご提案いたしましたのは、W Bill社のコート生地でジャケットを作るということ。
600gmsある、本来コート生地のツイードですが、ジャケットにも非常にいいと感じました。
コート生地は、ジャケット生地よりも表面の表情をスッキリと仕上げているものが多いです。
ジャケットは用途が限られるのに対し、コートは上着ほど着数を求められず、オンオフどちらでも使えると嬉しいという意見があるからでしょう。

それにより、土臭いツイードではなく、しっとりとした上品な質感に仕上がるのです。
それでいて肉厚で、重厚感がある。そんなバランス、いいじゃないですか。

柄はライトグレーのヘリンボーン。
腰はアウトポケットでお作りいたしました。

M様には以前、ロロピアーナのペコラネラというアンダイド(染めていない糸を使い作った生地)の生地を使い、アルスターコートをお仕立てさせていただきました。
そちらの生地もヘリンボーンでした。

よく、柄合わせについて、これとこれは合わせない方がいいですか?や、
グレーのスーツにグレーのコートは合わせない方がいいですか?
というご質問をいただくことがあります。
これに関して、わたしの答えはシンプルで、

違和感を感じることがなく、格好いいと思えばOK!!

です。

なんかざっくりしてるなぁ。笑
と思うかもしれませんが、わたしはその違和感というアンテナを大切にしていただきたいのです。
良いもの、上質なものに触れる、そのような体験をする。その時間を増やすことで、あらゆる物の良し悪しが見えてきます。

わたしは自分の字が下手なことがコンプレックスだったことから、2年ほど前から習字教室に通っているのですが、その先生が、
「書き順なんて誰かが勝手に決めたんですよ。元々の行書は、書きやすい流れに合わせて書いていたので、今の書き順と違うことなんてざらにあります」
とおっしゃっていました。

また、日本のフォーマルの着こなしについては、黒のスーツに白のシャツ、ネクタイはシルバー。
という金太郎飴のようなコーディネートは、老舗のフォーマルウェアのある会社が昔々に決めたことなのです。

なぜ決めたのか。

それは我々日本人が正解を知りたい国民性だから。

これを守っておけば間違いない。
という一見すると的を得ているように思える考え方ですが、これに縛られすぎていると、本来の美しさを感じる感覚を見落としてしまいます。
ルールはルールであり、ルールでしかないのです。

そんなの関係ない。だってこの方が美しいじゃない?

と言い切れることの強さをもっと知っていただきたいです。

柄と柄を合わせても、それに違和感を感じなければいいのです。
しかし、その線引きを自分に委ねられるので、常にセンスを磨いておく必要があります。
センスを磨くという、最も終わりなき、道なき旅になかなか漕ぎ出す方は多くはありませんが、これをやることにより、巷にある”変なもの”を手にすることがなくなるのです。
これって実は一番コスパがいいんですよね。(あっコスパとか言っちゃった!笑)

今流行りのものを追いかけ続けるより、人間の美の方程式を学び、そこから物を見ることで、違和感を感じない物を手にする。
そうすることで、確実に自分の手元には間違いのないものが増えていきます。

ヘリンボーンオンヘリンボーンだって、合わせたときに非常に格好よかったです。
あえて開けて着たくなりますね。
もしわたしが街で見かけたら、
「なかなかのクセモノだな、、」
と思うことでしょう。笑

M様、いつもありがとうございます!

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大柄な方のために

北海道からお越しのS様。
わたしと同じランクル78プラドを愛車にしていらっしゃるヘビーデューティなお方。
今回、冬のジャケットスタイルということで、ツイードジャケットをご提案いたしました。


ツイード生地はMOON社の500gms超えの肉厚なチェック生地。
トラウザーズは北海道の気候を考え、撥水性の高いダークブラウンのキャバルリーツイルにいたしました。
中に合わせたウェストコートは、お写真では撮り忘れてしまったのですが、ダークブラウンのモールスキン。
S様の雰囲気と、北海道でタフに生きる方というイメージに合わせて、ラギッドな上下でお仕立ていたしました。


トラウザーズのゆとりの感じ、ジャケットのサイズ感はわたしのイメージ通りでした。
土臭すぎず、格好良すぎず、程よいバランスに仕上がったと思います。

大柄な方には、細身の方よりもゆとりは少なく仕上げます。
細身の方は上着を着るとガシッと見えるように、大柄な方はスッキリと見えるように、仕上げるようにしております。

S様、ガシガシ使い倒してください!

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カバートクロスのスリーピース

初めてお越しいただきましたM様。
お仕事柄、休日しかテーラードスタイルを楽しむことがないということでしたが、その限られた日を思いっきり楽しみたいということで、スリーピーススーツをお仕立ていたしました。

わたしはお越しいただいた方には、色々と話をしてお聞きしておりますが、仕事で使うのか、仕事環境はどこまでカジュアルでいいのか、はたまたどこまでフォーマルでいいのか。など。
あらゆることをお聞きしています。

その質問で、
「仕事で着ない。プライベートでしか着ない」
というお声が聞こえると、わたしの中でのベクトルが一つ固まります。
お仕事で使うスーツスタイルと、プライベートで着るスタイル。これは全く異なります。

プライベートであれば、思いっきり羽を伸ばして楽しむことができます。
ネイビーやグレーにとらわれなくていい!
ですが、一線は越えてはいけません。
我々の仕事は、背中を押すのも、止めるのも、どちらも大切なのです。
お客様の意見に全てあい乗りして、「いいですね!」
ではいけないのです。
その押し引きが、店のスタイルになるのです。

今回選んだ生地は、こちらも最初に書いたものと同様で、本来はコートとして使うことを想定として作られた生地です。
ミディアムブラウンのカバートクロス。
綾織りの中に、複数の色がちりばめられていて、非常に奥行きのある魅力的な生地です。

こちらの生地でスリーピースをお仕立ていたしました。

M様、写真で見てもお分かりかと思いますが、テーラードを着るために生まれてきたようなお体の持ち主です。
これだけ恵まれたプロポーションを持っていて、全身を覆い隠すようなオーバーサイズな服を着ていては、本当にもったいないです。

このようなことを書くと、自分はそうではない、というふうに思う方もいらっしゃるかもしれませんが、なんだか反対のことを言っているようで申し訳ないのですが、テーラードスタイルはどんな体型の方でもかっこよく見せることができる洋服です。
自分の中でコンプレックスだと思っている部分があるとしたら、それをどのようにすれば隠すことができて、そしてそれを長所にすることができるのか。
ということを考えて、それを実現することができるのがテーラードの醍醐味です。
ウィンザー公は上背が低いことをコンプレックスに持っており、それをうまく見せるために、ミリ単位でウェストのシェイプの位置やボタン位置などをお抱えのテーラーと綿密に話し合っていたそうです。
(今、絶賛ザ・クラウンを観ていますが、ウィンザー公、ファッション業界では神格化していますが、いやはやとんでもない奴ですね。。笑)

脱ぐと「あれ?」と思うけれど、洋服を着ているときは非常に力があり、魅力的に見える。という状態を作り出すことができるのが、テーラードなのです。

わたしは多くの方に、追いかけるべきは流行ではなく、自分に本当に似合うものを追求することだと伝えたいです。

ウェストコートの背中は表地にしてあります。
カジュアルな生地ですので、すべて別々で使うことを想定して、このような仕様にしております。

お写真で見ると、とてもウェストのシェイプが効いていて、ボディコンシャスに見えると思いますが、実際は拳一個入るくらいのゆとりがあります。
なぜ拳一個のゆとりがありながら、シェイプされて見えるのか、ということですが、これは、肩周りとバストにしっかりゆとりを持たせているからです。
既製服であれば、人それぞれのゆとり量なんて考えることができるはずもないため、タイトか、オーバーに仕上げます。
我々物作り側の人間も、その既製服のような服作りしか知らないと、ゆとりを持たせるテーラリングというものをお客様に提案することができません。

本来、既製服と注文服は全く違う洋服なのです。

それが今の時代は、線引きがなくなってしまい、既製服のような注文服が増えてきてしまいました。
反対に、注文服のような既製品となると、Kitonであったり、Attolini、Brioniのような、そんじゃそこらのオーダー店より高価なブランドになってしまいます。

既製服のような注文服が台頭している大きな原因は、学ぶことをせずに売ることに専念してしまっているプロが増えてきているからだとわたしは思っております。(偉そうなことを言っているように思うかもしれませんが、わたしも今もこの先も生涯学び中です)

今は何もかも、スピード感が求められる時代です。
すぐに結果を出したい。即戦力。
桃栗3年、柿8年、と言われるように、蒔いた種がすぐに結果を出すのは自然ではありません。
まずは何事も知ること。そして咀嚼して、実行して、を繰り返していくことで、自分の実がなることでしょう。

自分の身体に綺麗に乗っている洋服を着ると、ストレスもなく、非常に快適で、何より格好いいです。

M様、この度はありがとうございました!

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カシミヤのチェスターフィールドコート

モードファッションがお好きなS様。
BERUNでお仕立てしたフランネルのスーツに、イヴ・サンローランのブーツを合わせられたりと、非常にスタイリッシュでおしゃれなお方です。
今回お作りいたしましたのは、英ジョシュアエリスのカシミヤ生地を使ったチェスターフィールドコート。色はチャコールグレー。

仕立てはダブルブレストにいたしました。
ダブルのコートは開けて着るもよし、閉めてもよしと、着こなしの幅が広がります。
また、厚手の生地でダブルにすると、カチッとした雰囲気がするのに対し、今回の生地のように柔らかな生地で仕立てると、ガウンを羽織っているような雰囲気に見えます。
ダブルのチェスターという同じアイテムなのですが、生地が変わるだけでガラッと雰囲気が変わるのが面白いです。

カシミヤのダブルのコートがあれば、冠婚葬祭はまずバッチリです。
そして、カジュアルに着こなす術があれば、カジュアルシーンでもかなり活用することができます。
シングルのカシミヤコートとなると、少しカチッとした印象がするため、カシミヤとなると、意外とダブルの方が着こなしの幅が広がるのかもしれません。

背中にはベルトを付けました。
ドレッシーなチャコールグレーのカシミヤコートを砕けすぎずにカジュアルに落とし込む。
とてもいい具合に仕上がったと思っております。

S様、いつもありがとうございます!!

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2月になり、本格的に春物が動き出してきました。
四季を楽しむことができるようになると、冬はとっても楽しい季節ですが、春もいいよね。そして、夏もいいよね。
と、全ての季節の装いを楽しむことができるようになります。
最初の揃える頃はお金がかかりますが、1,2周してしまうと、人生で必要なベーシックなワードローブは揃ってしまうんです。

まぁ、ベーシックが終わったその先には、裏面のもっと楽しい世界が待っているんですが。

それはそのときが来たらまたじっくり考えればいいのです。

いつもご覧いただきありがとうございます。

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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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