BERUNです。
最近、お祝いのシーンで着る洋服のお渡しが続きましたので、今回はフォーマルウェアをメインに書いていきたいと思います。
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グレースーツをフォーマルに着る
ご自身の結婚式で着られる洋服を仕立てにお越しいただきました、J様。
ディナージャケット(タキシード)ではなく、その後も使えるものがいいとのことで、スーツをフォーマル仕様にお作りすることにいたしました。
ネイビーかグレー、どちらの方がフォーマルの印象がするかと言いますと、ズバリグレーです。
ネイビーのスーツでフォーマル感を出すこともできるのですが、若々しさが目立ってしまい、新郎の装いというレベルまで昇華させるのはなかなか難しいです。
シックで上品な雰囲気を出すとなりますと、やはりグレーの方が重厚感が出ます。

今回選んだ生地は、英H Lesser & Sons.が伊Carlo Barberaに別注をかけて作られた生地。
英国のエッセンスが入ったイタリア生地という絶妙な具合の生地で、わたしもとても気に入っていてかなりの量こさえているものです。

お色はチャコールグレー。
シングルのピークドラペル。
ブレイシーズと、ボウタイも共生地でお仕立ていたしました。
5ピースの完成です。

このスーツがあれば、今後もハレの日には幾度となく着用できる機会があるでしょう。

J様、素晴らしい1日になることを願っております!
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エスコリアルディナージャケット
式を挙げられる方には、どこで、どんなシチュエーションで、中がメインか、外がメインかなど、あらゆることをお聞きして、私の中でご提案するものを考えています。
例えば、ハワイの海沿いで式を挙げる人にタキシードは重々しすぎますよね。笑
そういう場合は明るめのリネンスーツなどをご提案したりします。適材適所です。

F様に今回はディナージャケットをお作りいたしました。
そして生地はスペシャルな生地、Escorialエスコリアルウール。
Reid & Taylor製のエスコリアルは今はもう作成をしていないため、非常に珍しいものです。
BERUNではスーツを決める時もほとんど選ぶものがないのですが、ディナージャケットはもっと選ぶことがありません。笑
強いていうならショールカラーかピークドラペルかくらいですが、それもわたしの中でその方の雰囲気を見て、この方ならこっちというのがありますので、あとはお任せくださいという感じなのです。

肩幅があり、細身でいらっしゃるF様。
テーラードの最大の良さは、人の身体をより良く見せることができるところ。
そのために肩パッドや芯というものがあります。
ハリを持たせて、自分の身体にただ沿わせるのではなく、ゆとりを出すことでシルエットを綺麗に見せることができます。
そしてゆとりを出すことによって、自分の身体で隠したいところは隠すことができます。
活かしたいところは活かして、隠したいところは隠せる。
なんていいものなんでしょう笑
今はアンコンジャケットが主流というか、既に定番となってしまいましたが、アンコンジャケットは体にぴたっと沿う洋服ですので、自分自身の体の美しさが求められます。
しっかりとボディメイキングして、ぴたっとしたアンコンジャケットを着るのが今の時代の主流だとは思うのですが、やはり本来のテーラードの美しさは、ゆとりがある中に生まれるものです。
まぁ、なぜアンコンジャケットが一般的になり、ゆとりのあるテーラードが衰退していったのかと言いますと、これはあくまで私の考察でしかありませんが、ゆとりがあるテーラードの方が、縫製の手間が非常にかかると言うことと、既製服であればジャストサイズを探すのが非常に難しいということが理由として挙げられると思います。
80,90年代頃のメンズ服は非常に美しいゆとりがある洋服が多かったです。その頃は着る人を試されるような位、洋服の力があった時代でした。
今はファストファッションや安価な洋服の影響で、着る人のレベルを求められないイージーな洋服が増えてしまいました。そうなると、着ることに力を求められる洋服というのは、時代とともに必要ではなくなっていき、減っていってしまいます。
ですので、もしせっかくオーダーをされるお考えがあるのでしたら、私はぴったりとしたサイズ感ではなく、ゆとりのあるフィット感のものをお勧めいたします。
時代に左右されずに着られる方がいいじゃないですか。体型維持のモチベーションにもなります。

至高のエスコリアルで仕立てるディナージャケット。
最高に美しいです。
お写真で見ますと、私が言っているようなゆとりがあるようには見えないかもしれませんが、私の中でのバランスは、体にしっかりと沿っていて、”程良いゆとり”が理想なのです。

新郎新婦は360度見られますので、背中の美しさも大切です。
とてもエレガントなディナージャケットでした。
F様、この度はありがとうございました!
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エスコリアルで仕立てるスリーピーススーツ
さて、お次もエスコリアルウールです。
今日はお三方ご紹介いたしますが、皆さんそれぞれ微妙に違ったご提案をしております。
フランクロイドライト建築の自由学園で式を挙げられるというS様。
自由学園はわたしも以前コンサートで行ったことがありますが、名建築の中で過ごす時間は何ものにもかえられない至福の時間であったことを覚えています。

ガッチリタキシードではなく、S様の柔和な雰囲気に合わせて、フォーマル仕様のスリーピースにいたしました。
細身のS様ですが、決して細くは作りません。
だって、いまだに結婚式という場は、モダンが介入する間もなく、昔からの流れをそのままやっているじゃないですか。
式典というものはそういうものだと思います。
そんな厳粛な場に、現代的なスッキリとした細身の身体のラインがビタビタ見えている洋服を着るっていうのは、なんだかミスマッチではないでしょうか。
アゲアゲDJタイムやラップバトルのある結婚式でしたら、ごぼうスーツでも構わないと思いますが。

ブレイシーズも共生地です。
股上を深く、ベストの丈は短く。

そしてボウタイも共生地ですので、5ピースです。

ピークドラペルで1つボタン。

そして背中はノーベント。

かなり柔らかな生地のため、動くことでしなやかさが表れ、上質な生地の質感は遠目でもわかるクオリティです。
この生地はわたしも必ず仕立てたいと思っております。

S様、素晴らしい1日になることを願っております。
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強撚ロロピアーナ
こちらはフォーマルスーツではないのですが、格好いいグレーのスーツが仕上がってきました。
BERUNには少ないですが、20代前半の方も来られます。
お若いながらも自分の芯のある方が多く、良い刺激をもらいます。
一回り以上下という方も来られますので、好きなアーティストや興味のあるものはかけ離れていますが、美しいものが好きという認識は共通です。
それでいいじゃないですか。

初めてお越しいただいたN様。
理容師の道へ行く未来のある若者です。
普段は古着屋で買っているカジュアルなファッションですが、こういうストイックなスーツスタイルにもご興味を持っていただき、お越しいただきました。
Nのにご提案したのは少し面白い生地。
伊ロロピアーナの4ply、Devilというシリーズ。
グレーですが、杢がかっているため、全体的にもやがかかっているような見た目です。
これが格好いいのです。
この生地は着分しか入ってこず、わたしが作りたかったのですが(オイ笑)、生地が足りなかったため、寝かせていました。
ワイドパンツで来られたN様。
非常にお似合いでしたので、写真では伝わりづらいですが、トラウザーズはいつもよりたっぷりと広さをとってお作りいたしました。
これがこのスーツとN様の雰囲気に非常に合いました。
ラグジュアリーの最高峰であるロロピアーナが作るタフネスな生地。

なんとも格好いいです。
N様の雰囲気を見て、20代前半では禁じ手(笑)であるペイズリータイを合わせました。
この色気ムンムンなコーディネートを若いうちから嗜むことで、30,40,50と歳を重ねていくうちに何を着てもムンムンな大人になります。

N様、ぜひムンムンな大人になってください!
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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途