BERUNです。
昭和の夏は26,7度だった。なんていう話が最近耳に入ってきますね。
確かに、私はギリ昭和でほぼ平成の民なので、流石に26,7度という世界は知りませんが、それでもここ最近の暑さはオカシイぞと思っています。
もう10年以上前のブログでは、アンチクールビズ(ACB)とか言っていたのを微笑ましく思います。
あの頃はまだ反体派でいられたくらいの暑さだったよなぁと。
その後、私の大好きな映画、ダンスウィズウルブスから拝借し、ダンスウィズクールビズと謳うようになりました。
もう争うのはやめようよと。クールビズを優雅に過ごすために何ができるかを考えようよと。
(はい、ここから話それます)
昔、パンクとモッズでは抗い方が違うという話を聞いて、面白いなぁと思ったことがあります。
なぜパンクキッズはライダースジャケットを着て暴れるのか。
なぜモッズはスーツを着るのか。
同じ抗うという姿勢は同じなのに、方法が異なります。
パンクキッズは、(日本で言えば)霞ヶ関の建物の前で火炎瓶を投げたりして暴れ回っているような自己表現をしている。
対してモッズは、スーツをビシッと着て、建物の中に入り、直接伝えたい本人の胸ぐらを掴んでメッセージを伝える。
まぁとってもイージーな書き方ですが、表現の仕方がひとつ異なるだけで、伝えることができるかどうかが変わってしまうという例です。
そこまでの話は、モッズの方が知性を感じるよね。というようなお話です。
私は昔はパンクっ子でしたし、モッズファッションも嗜んでいましたが、私個人的には、パンクの表現の仕方の方が純粋で好きだったりします。
今この仕事をやっていて思うことは、モッズのファッションはどこまでいっても、スーツをファッションとして、若気のメッセージをスーツにふんだんに詰め込んでいる青臭さが滲み出ているような気がするのです。
膝が曲がらないくらい細いスラックス、肘が曲がらない上着。
そんなモッズカルチャーのスーツを着こなしているミュージシャンとかがいますので、それに憧れる人がいるのもわかるのですが、我々が生きているのは2025年で、今なのです。
1970年とかではないんです。
あの時はそういう自己表現がロックだった。という時代によるものがあります。
例えば、モードは世の中の体制に反骨するメッセージを込めて作られたものが多いです。
堅苦しいジャケットというものはもういらないから、肩パッド、芯なんか取ってしまえ。なんなら袖もラペルも取ってしまえ。
それが当時は斬新な自己表現に感じたのです。
ですが、今はそのような自己表現が当たり前になってきました。
「袖ないジャケット?あるよね。ラペルないジャケット?とっくにめちゃくちゃあるよね。と」
私がこの仕事を始めた頃は、まだカチッとした本格的なスーツスタイルというのは今よりも少なかったです。(イタリアクラシコ全盛で、ちょうど穴の開いていた時期だったのかも知れません)
今ではもう絶滅危惧種になった、人をあやめることができるとんがった靴、至る所にファスナーがついていて、ブチャラティが好きそうなスキニーデニム。髪もツンツンしていて、眉毛もシュッとしていて、何かととんがっているのが格好いいという時代でした。
髪型も、今のようなバーバー文化はまだ盛り上がっていませんでした。
そんな時代にクラシックスタイルというのは、一番モードなんじゃない?と話してくれたのが、私の師匠でした。
スキニーパンツバキバキで、ファッション関係の多くの方々が、くるぶしが見えてないやつはあかんというムチムチタイトフィット全盛期に、いやいやワンクッションでしょ。絶対タックないとダメでしょ。とシャケ状態を長らく続けてきました。
これは別に何も私がすごいとかどうこう言いたいわけではなく、私が今も昔も自信を持って言えるのは、
「だって、今、この時代が間違っているだけじゃない」ということ。
過去を知れば今の装いがいかに崩れてきてしまっているかがわかります。それを正しているだけです。
パンクとモッズについてもっと詳しく知りたい方は、「さらば青春の光」という映画をご覧ください。青臭くていい映画です。(お笑いの方じゃないですよ)
さぁ、他愛もない話はここで終わりにしましょう。
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小柄な方こそゆとりを持たせる
いつもお越しいただいておりますD様。
ご身長が低いお方は、そこに合わせてしまうと細身のフィット感になってしまうのが一般的です。
ゆとりを楽しむことができるのは身長のある人だけでしょ。と諦めている、そこのあなた!
そんなことないですよ。
私はどんな体格の方にも、その方に適したゆとりを持たせることで、唯一無二のサイズ感を味わってもらうことができるとお伝えしております。

ベージュのフレスコのトラウザーズに、ブラウングレーのキャバルリーツイルのブレイシーズを合わせたスタイル。

お身体に合わせてブレイシーズもお作りしておりますので、長さはピッタリです。
ご身長が低い方でも、インの2タックでわたり、膝幅はしっかりとゆとりを出します。
細くしないと不恰好に見えてしまうんじゃないか。というのは一切考えなくて結構です。

むしろ、細くするということは、自分の体型をより見せることにつながります。
ご自身の体格に最高に自信があり、俺のスタイルを見てくれ!!!
という方でしたら、存分に細くしていただいて結構ですが、そのような方はごく少数かと思います。
ゆとりを持たせることで、自分の体型を上手に隠すことができます。そして、見せたいようなシルエットに見せることができるのです。

上着はヴィンテージの生地を使いました。グレーのウールモヘア。メッシュ織で、生地の凹凸があるため、夏でも不快感がなく着用できます。
D様は前回も前釦は1つにいたしました。
これは多くの方が陥りがちな思考なのですが、前回はこの仕様で作ったから、今回はこうしよう。というように、毎回ディテールやデザインをあれこれ変更するということ。このやり方は、あまり賢いオーダーの方法ではなかったりします。


これには理由がいくつかありますが、まず、紳士はそんな細かいことにうつつを抜かしていてはいけないということ。
あと、テーラードというのはファッションを楽しむものではなく、その人のスタイルを作り上げることが主目的であるからです。(私がモッズに心を動かされないのはこの部分にあります)
そのように考えますと、私といえばこれです!というものを作り上げることは、その後の人生をとても生きやすしてくれます。
もう洋服で余計なことを考える必要がなくなるのです。
そしてこのスタイルというのは、決して自分だけで発明できるものではありません。
いえ、自分だけでもできるにはできるのですが、そこに辿り着くために相当な時間と費用がかかります。
スタイルを作るというのは、信頼のおけるプロと一緒に考えるのがいいでしょう。

BERUNのオリジナル靴と合わせて着ていただきました。オンオフ使えるこちらの靴は、365日の中でかなり活用する機会が多い一足です。
D様、ぜひたくさんご着用ください!
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ウールモヘアの光沢を愉しむ
いつもお越しいただいておりますK様。

今回は春夏向けのサマージャケットをお仕立ていたしました。
今はなきEdwin Woodhouseのウール50/モヘア50の生地を使ったジャケット。
トラウザーズはBERUNの定番である、ベージュのフレスコ。
Edwin Woodhouse、いい生地を作っていましたね。
10年ほど前に、今主流の杢がかった色柄や、起毛した4PLYの生地を作っていたり、非常にユニークでセンスのいい生地をたくさん作っていましたが、時代より少し早すぎたのでしょうかね。Taylor & Lodgeといい、良い生地メーカーがどんどんなくなっていきます。
ウールモヘアが50/50となると、モヘアの光沢感がとても綺麗に出てきます。

お色はブルーグレー。スーツにも向いている生地ですが、今回はジャケットでお仕立ていたしました。
この上下のお色であれば、春夏秋、3シーズン使えます。
夏は中にリネンシャツを仕込み、ノータイでサラッと着てもいいでしょう。
ブルーグレーのグレーカラーが落ち着きを出しているので、秋になっても合わせられるお色です。

K様、ぜひたくさんご着用ください!
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ラベンダーカラーで粋に着こなす
いつもお越しいただいておりますK様。
春夏にさっと着られる軽快なジャケットスタイルをお求めでした。
今回ご提案したのは、BERUNでは珍しい雰囲気のジャケット。

リネンシルクのラベンダーカラーのジャケットです。Ermenegild Zegnaのもの。
リネンの涼しげな雰囲気と、シルクの光沢感が、上品でとても合います。
以前お仕立てしたラベンダーのリネンシャツに、同色で合わせるコーディネート。

ジャケットに華があるので、下はあれこれ考えずに、ホワイトリネンでシンプルに合わせるのがいいでしょう。

リネンのトラウザーズはゆとりを持たせます。
ジャストサイズですとカジュアルさが出てしまうので、リネンをエレガントに愉しむためにはゆとりが必要です。

落ち着いた色味を作ることが多い弊店ですが、お客様の雰囲気に合わせて、このような華やかなイメージのするものもお作りいたします。
K様、ノータイでサッと着こなしてください!
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ウールリネンとリネンを愉しむ
遠方からお越しいただいておりますN様。
前回はヴィンテージの生地を使い3ピースをお仕立ていたしまして、今回は春夏秋に着られるジャケットスタイルをお作りいたしました。

選んだ生地は、Marling & Evansのグレージュカラーのウールリネン。
こちらの生地、素朴さもあり、とてもいい雰囲気で大変気に入っておりました。残り1着、小柄な方だと入るというギリギリの長さが残っておりまして、まさにN様にズバリでしたので、今回はこちらでお作りすることにいたしました。

色がいいんですよね。シックすぎず、牧歌的で、ただ地味なだけではない。そんなとてもいい塩梅の色合いです。

トラウザーズはスペンスブライソンのアイリッシュリネン。
お色はベージュ。

シャツはダークブラウンのリネン生地です。夏に着る暖色というのはこれまたいいのです。
リネンという涼しげな生地感と、温かみのあるブラウンという組み合わせが、とても素敵です。

グレージュのジャケットに、ベージュのトラウザーズ。
ダークブラウンのリネンシャツと、どれも決して主張のない優しい色合いで、調和が取れています。
N様、ぜひお休みの日にたくさんご着用ください!
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私のモノづくりの発想といたしましては、洋服と着る方(主人)の距離を大切にしています。
距離が遠い服というのは、例えばで言いますと、モード系や、ファッション性の高い洋服のことです。
それを巧みに着こなすことができる人もいますが、そうでない方がそのような洋服を着てしまうと、途端に着られてしまいます。
暴れ馬を乗りこなせる人と、振り落とされる人の違いとでも言いましょうか。
対して、ファストファッションのような洋服は距離が近すぎる洋服です。
近すぎるあまり、そのものに対してリスペクトもなければ、感謝もなくなります。
物を大切にして、長く愛用していくという感覚が湧きません。
私がその方に合わせてお洋服を作るときは、程よい距離感を意識しています。
馴れ馴れしくなく、かと言って遠すぎず、程よい緊張感がある洋服。
その距離感というのはその方によって変わりますので、それを見極めるのが私の仕事です。
なので、長くお付き合いをすれば、作っていくものも変わっていきます。
それは着ている方の着る力が上がっていき、乗りこなすのが上手になってくるからです。
いつまでもポニーに乗り続けていても面白みがないでしょうから、その方の着る力に合わせて提案していくものも変わっていきます。
そうして、10年前に仕立てたものを着て、初々しさを感じるのです。
そうすることで、自分の変化、進化を楽しむことができます。
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最後に、BERUNでもついにオリジナルの鞄を作る計画が進んでおります。
今年中にできればいいかな?くらいの感じで進めておりますので、ぜひ楽しみにしていてください!
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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途