ファッションは単理、スタイルは複利

BERUNです。

クリスマスシーズン。

へそ曲がりの私は、日本人がクリスマスなんて、!

と昔は思っておりましたが、最近では、12月になったら店の音楽はクリスマス感のある音楽をかけたくなるし、数日前に私の友人が北欧に雑貨を買い付けに行ってまして、クリスマス感のある小物をちょこっと揃えました。

男臭さしかないBERUNの店内に、メルヘン度が1%でも仲間入りするといいなと思っています。

年内営業は29日までで、26日からは4日連続で店を開けますので、今年作りたいと思っていた洋服は今年のうちにぜひ、お待ちしております。

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ブラウンヘリンボーンのラグランコート

神楽坂の小さなアパートの時からお越しのA様。

今思えば、小さな空間でした。

わずか18平米の空間を一生懸命、店っぽく作っていました。

コロナで神楽坂の路面店を維持するのが厳しかった頃、いっそ店というスタイルをやめて、クラシックカーに生地を積んで巡業スタイルにしようかと思っていた頃。

多くの方が賛同する中、当時一番、洋服をオーダーしていただいていた方が一言、

「僕はここに来るのが楽しみなんですよ」

その一言で、店というスタイルを維持しようと決めました。

家賃をぐっとおさえて、生地を見てお茶を飲めるだけの小さな空間。

この時、店という空間を維持していなかったら、今の青山の場所もなかったかもしれません。

そしてこの不遇の神楽坂時代にぼちぼち始めたYoutube。

おかげさまで今まで出会うことのなかった人たちとたくさん出会うことができました。

A様は動画を見てお越しいただいたかなり初めの頃のお客様。

最初は動画を見てご連絡をいただいたと聞いた時、「まさか!」と思いました。

私の偏屈な(自覚あり)動画をご覧いただきまして、改めてみなさまに感謝いたします。

少しノスタルジーに浸ったため、前置きが長くなりましたが、A様にお作りしたのはブラウンのツイード生地を使ったラグランコート。

生地はJohn G Hardy社のAlsport。現代のHardy Minnis社の前身ですね。

600gmsある生地ですが、意外とそこまで肉感を感じない、程よい硬さの生地です。

ラグランコートは軽い生地で仕立てて春夏向けのコートにしてもよし、中肉生地で秋冬シーズン使えるコートにしてもよし。

ヘビー級の生地を使い、鎧のようなコートにしても良いです。

どんな生地でも受け止めてくれるコート、それがラグランコートです。

あとは体型、身長を選ばず、多くの方にハマる形でもあります。

A様は細身なのですが、ラグランコートはそんな細身の方でもハマります。

体格のいい方でもよし。

チェスターフィールドのあとは、アルスターでも良いですが、ラグランもとても大人の余裕を感じられて素敵ですよ。

ブラウンのヘリンボーン生地のラグランコートなんて、いつ時代遅れになるんだろうか、と言えるようなものじゃないですか。

一生スタメンにいる存在だと思います。

2軍に行く時は、本人(監督)の気分じゃなくなったとき。

そしてまた何年かしたら、気分が来ます。その時にまたスタメン復帰するのです。

そういう洋服はそんなに多くはないですが、ちゃんとあります。

A様は少しずつ、生涯スタメン服を増やしていっております。

私は金融知識は幼稚園児レベルですが、ファッションは単利で、スタイルは複利なのです。

今のファッションを生きる人たちの買い物は、5年後には皆スタメン落ちして、3軍にもいなく、引退している洋服が多いです。

洋服をスタイルとして買っている方の買い物は、時代に流されず、飽きもこない服が毎年増えていきます。

そうするとどんどんクローゼットが豊かになっていきます。

10年もすると、もう一生分の洋服はあるよね?というところまでいきます。

あとはその洋服を熟成させていくだけです。

もう洋服にお金を使うことは少なくなるのですが(なくなることはないですよね、それも楽しみですから)、その洋服の成長と自分のエイジングを共に楽しめるのです。

家具もそうです。

安いファスト家具を買っても飽きてしまうし、少し不具合が起きたらもういいやとなってしまう。

名作家具と呼ばれているものは、天才的なデザイナーが思考を凝らし、時代を超えて愛用できるものです。

そういうものは何年使っても飽きない。いつ触れても新しい発見がある。

良い映画もそうですね。何度見ても飽きない。そういうものはあらゆるジャンルにあります。

それは洋服にもあります。

なので、私は日々良いものを丁寧に揃えていきましょうと話しています。

そうすれば、きっと人生は好転していきますから。

複利が効いてくる頃には、勝手にどんどんオシャレになっていきますよ。

A様、いつもありがとうございます!

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グレーツイードスーツをビジネスで

スーツはネイビー、グレー、シャツは白、靴は黒というシンプルでストイックなスタイルを貫いていらっしゃるH様。

格好いいですね。わたしも人生が3回くらいあるなら、そんな生き方も選んでみたかったです。

(ちなみに後1回の生き方でいいますと、世界中を身ひとつで放浪し続けたいなぁと)

シンプルだからこそ、美が生きます。

むしろ、シンプルなコーディネートに質が伴っていないと、ただ雑味が残る着こなしになってしまいます。

今回お作りしたのは、ツイードのスリーピース。

お色はダークグレーで、シンプルですが、素材がツイードという小粋な遊びです。

お堅い仕事のH様ですが、やはり近年は周りもカジュアルになってきているそうで、
「色が落ち着いていれば、誰も文句を言わないですよ。」

と頼もしいお言葉。

確かに、普通のスーツがユニフォームの社会で、ナイロン素材で伸縮性のーびのびのスーツを着ていても誰も何も言わないのであれば、ツイードのスーツを着ていても小言を言われる筋合いはないですよね?(クラシック派の言い分です笑)

カジュアルな世の中になればなるほど、着る洋服の幅が広がるわけですから、川上に登ってクラシックスタイルを楽しむのもよしというわけです。

素材感だけですでに存在感があるので、あとは何もしていません。

とてもストイックで格好いいです。

H様、いつもありがとうございます!

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男は黙ってハイバックスタイル

いつもお越しいただいておりますH様。

BERUNでは今アーカイブシリーズというラインを新たに構築しておりまして、今回は新たな試みのスーツをお仕立ていたしました。

アーカイブシリーズというのは、わたしがコレクションし続けている、主に30〜50年代頃の正統派の洋服を基に、BERUNなりにアップデートした型を使った洋服です。

作りたいと思っているものは無限にあるので、少しずつ増やしていこうと思っております。

今回はスリーピーススーツ。

生地はVintageのDormeuil、CHIC。
うっすらグレンチェックが見える、非常に品のある色柄です。

トラウザーズはハイバックスタイル。

こちらはブレイシーズ(サスペンダー)が当たり前だった時代のスタイル。

後ろ姿が非常に綺麗に見えます。
ビスポークが当たり前だった時代のディテールで、徐々に消えていった仕立てです。

後ろの股上がすこぶる長く見えるため、ベストの後ろの丈を短くすることができます。

そうすることでスタイルがとても良く見えます。

そして短い後ろの丈から、前に向かって急に下りてきます。

このメリハリがとても男性的で格好いいです。

このシルエットはお好みもあると思いますので、お好きな方にぜひというスタイルです。

ですが、より男性的で、スーツとは元々こうであったのか!と思わせてくれる形であります。

ジャケットはバストボリュームをしっかり出し、ドレープを効かせた作りにしております。

我ながら、格好いいです。。

芯地からオーダーをするという工程を挟んだため、仕上がりにお時間を頂いてしまいましたが、H様にも喜んでいただけて光栄でした。

いつもありがとうございます!

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ネイビースーツにグレーコート

初めてお越しいただきましたF様。

お若いながらも、スーパーセブンに乗り、洋服以外も古き良きものを愛するお方。

今回お作りさせていただいたのは、Scabalのビックベンの生地を使ってお仕立てしたスーツ。

ビックベン、廃盤になってしまったそうで、名残惜しいです。

思えばこのビックベンもBERUNの最後の1着でした。

450gmsある肉厚なスーツ地。

侍のような生地ですが、温暖化かつカジュアル化が進む昨今では、必要とする人が少ないのでしょう。

F様はご身長はそこまで高くないのですが、剣道で鍛えた肩幅と締まった体つきがあるため、ビックベンのような肉厚な生地もすんなりハマりました。

むしろ、肉体がしっかりとしているお方であれば、ヤワな生地を選んでしまうと身体の曲線にうまく沿えず見栄えがしない洋服になってしまいます。

その反対で、身体に自信がないという方がヤワな生地を選んでしまうと、ただただヤワな洋服になってしまいます。

つまり、どんな体格の方でもある程度ハリのある生地を選びましょうということです。

F様はもう1着、コートも合わせてご注文いただきました。

英国のメルトン地。お色はミディアムグレー。

肉厚さの中にしっとりとした質感があり、非常に仕立て映えのする生地です。

こちらも最後の1着でした。とても美しいです。

ネイビーとグレーと言ってしまえば2色ですが、その中に無限のカラーバリエーションがあります。

その中で、起毛している。程よく起毛している。かなり肉厚。そこそこ肉厚。肉が薄い。

などと言えば、より無限に広がります。

私がいつも言っている、ネイビーこの前仕立てたから次はグレーでぇ!

その次はブラウンでぇ!

というのは、非常に的を得ていない選び方だということを改めてこの話でご理解いただけたら嬉しいです。

F様、シンプルでストイックなスタイルをこれからも貫いていってください。

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ブラウンツイードでスリーピース

初めてお越しいただきましたK様。

ツイードのスリーピースをというご用命で、心が躍ります。

ツイードでスリーピースをとなりますと、生地の選択肢はかなり絞られます。

まず、格子柄はほぼ使えません。

無地かヘリンボーンですが、その中でも色味も絞られます。

ネイビー、グレー、ブラウン系が第一候補。

次点で、その方になら似合うであろうという色でカーキ、ベージュ系。

色々と考えることはたくさんありますが、K様にご提案したのはブラウンヘリンボーン。

グレーヘリンボーンだと落ち着きすぎてしまうだろうと思い、ブラウンにいたしました。

これを着て休日にフラッと散歩をするだけで、とてもいい時間になると思います。

K様、この度はありがとうございました。

豊かさというのは、どのジャンルにしても、生きていく上では必要のないものに備わっています。

器にしてもそう。
どうせ割れるし、ダイソーで売っているステンレスの皿で十分といい意見もあります。

それで十分なのは理解はできますが、わざわざそこに手間とコストをかけて、作家のお皿を買うこと。

そうすることで、料理を盛り付けるとき、その皿に載せることで料理に彩りが生まれ、もっと言えばその皿を買いにいった思い出も共に載ってきます。

家具にしてもそう。
ニトリ、IKEAで十分じゃんという意見もあります。

そこをわざわざ、北欧の名作家具を揃えることで、空間に豊かさが生まれる。

豊かさとは、生きていく上では不必要なものにこそ宿っています。

洋服もそうです。
私の動画でもよくコメントで、
「そんなこだわる必要はない」
というような意見が入ってきますが、全くおっしゃるとおりなのです。

ですが、そこをこだわることで、洋服の本当の楽しみ、魅力というのが見えてきます。

人間は、ただ生きていくだけではなく、彩り、豊かさを見出すことができる唯一の生き物です。

人間に生まれたことに感謝をし、まずはほんの少しの小さな豊かさからでいいので、その灯火を実らせていきましょう。

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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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