フランネルやらツイードやら

BERUNです。

1月は落ち着いた時間を過ごしております。
美術館に行ったり古着屋を回ったり、空いた時間を使って東京を散歩しております。

少しずつ春物をご注文される方も増えてきていらっしゃいます。

​X(旧Twitter)にも投稿しましたが、昨年末、ニットを作ってもらっている工場まで行ってまいりました。

​工場と言っていいのかわからないほど、小さな古いお家の中で、6人の内職の方がちょうどベルンのニットを作ってくださっていました。平均年齢70歳オーバーの熟練した手仕事で作られている、ベルンのニット。

身頃と首を合わせる作業をしています。リンキングミシンと呼ばれるものでひと針ずつ縫い合わせています。骨が折れる作業です。

ほとんど手作業の行程であることに驚きました。

アイロンを当てると伸びるため、仕上げにはひとつひとつこのように重しを置いて、下から蒸気を当てるという作業を行なっています。

お伺いした時、ちょうどBERUNのハイゲージニットが仕上がっていたところでした。

​昨年は新たにハイゲージニットを作りましたが、今週ようやく、完成を待ち望んでいたローゲージニットが仕上がってまいります。

​実は先月に一度上がってきたのですが、仕上がりに納得がいかず、1から作り直すこととなったため、完成がオンシーズン真っ只中の今となってしまいました。工場の方とも「いっそ来年にしましょうか?」という話も出たのですが、私としては「遅れてでもいいから今期中に作りたい」という思いがあり、ようやく完成いたしました。

​このローゲージニットを作るまでには色々と試行錯誤がありました。まず、いつもお願いしている工場では、これほど太い糸を編み上げる機械がないため「作れない」と言われていました。

​以前からローゲージニットは作りたかったものの、その壁に長らく足踏みをしていたのですが、工場のつながりで太い糸を編める機械を持つ工場を当たってもらったところ、日本に3台しかない古い機械を持っている工場を紹介してくださり、そこでローゲージニットを作れることになったのです。

​私はニットが大好きで自分でも多く所有していますが、ベルンの製品では「ここがこうだったらいいのにな」というこだわりをすべて詰め込んでいます。

今回のローゲージニットもまさしくそうで、私自身気に入っている私物はいくつかありますが、その中でも「これがこうだったら100点満点だな」という理想を形にしました。

​糸は3ゲージの、染め上げていない「アンダイド」という糸を使用しており、素朴さを感じさせる風合いです。

一日中これを着て過ごせる、とても心地よいニットに仕上がりました。休日はこれを着て、下はコーデュロイかモールスキン。それでザッツ・オールでしょう。

​今年の夏に向けても、新たな品物を考えております。形にしたいものはたくさん頭の中にありますので、少しずつ、できる限りのことをやっていきたいと思います。

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​大人のためのジャケット

​いつもお越しいただいておりますS様。

今回は秋冬に活躍するジャケットをご注文いただきました。

​ベルンに初めてお越しいただいた後から、本格的に身体作りをされたS様。トレーニングの成果もあり、最初の頃にお作りした洋服が少し窮屈になってきております。

お身体が整ってきたので改めて採寸いたしましたが、トレーニングによって人の身体は肩の傾斜が強く出るようになります。S様も、撫で肩がかなり強く出ていらっしゃいました。

​現代のフィッティングであれば、肩の傾斜に合わせて肩を落とし、撫で肩を強調するものづくりが主流ですが、本来のビスポークの考え方では、傾斜が強い方にはしっかりと厚めの肩パッドを入れ、肩に張りを持たせて背中のラインを綺麗に見せるという手法があります。

​ベルンも昨年から職人の方の協力もあり、オリジナルで肩パッドを作成するようになりました。昨今では「肩パッド=悪」という風潮もありますが、テーラードジャケットにおいて肩パッドは非常に重要なアイテムです。左右の肩の傾斜に合わせて、パッドを一つずつ厚みや大きさを変えてオーダーで作成いたします。

昔の仕立てのいい注文服を見ていますと、ほとんどがかなり厚みのある肩パッドを使用しています。
そして肩パッドがあることによって、身体のラインを綺麗に見せることができるのです。
私も趣味半分研究半分でヴィンテージのビスポークジャケットやコートをよく見ては着ては買っていますが、前オーナーと私の身体が明らかにかけ離れているだろうという大きさのジャケットを着ても、肩パッドがしっかりと入っていると構築的に見え、サイズが違ったとしても違和感なく収まるのです。

​肩の傾斜が強いS様には、3cmの肩パッドを作成いたしました。3cmともなると、ハンガーにかけるとかなり肩が強調されて見えます。
「このジャケットを着たらどんなシルエットになるんだ?」
と若干不安に思うくらい肩が強調されて見えてしまいますが、着る人の肩はハンガー以上に落ちているため、オーナーの体に入った瞬間に、この違和感があったジャケットは綺麗に馴染んでくれます。

​そもそも、注文服とはたった一人のために作られるものです。
そのため、ハンガーにかかっている時にはいびつに見えて当然なのです。
既製服はその真逆です。ハンガーにかかっている時に格好良く見えなければ、手に取ってもらえないからです。注文服と既製服は考え方が全く違うということを、ぜひ知っていただきたいです。

​S様にお作りしたのは、ドーメルの軽く起毛したブラウンのチェックジャケット。チェックの色が多く入っているため、生地の段階では派手に見えるのですが、仕上がってみると非常に上品で自然です。この軽やかさがあれば、シャツにタイを合わせてもいいですし、ニットポロやタートルネックを合わせてカジュアルに着るのも素敵でしょう。

​今回もう一着お作りしましたが、こちらはマーリング&エヴァンスのアンダイドのツイードジャケットです。こちらも大判のウィンドウペーンですので一見派手ですが、着てみると「全然いけるじゃないか」となります。

​「いける柄」か「いけない柄」かは、柄そのものではなく、その人に合っているかどうかがすべてです。
生地を見るだけではイメージが難しいかもしれませんが、今まで柄物に挑戦したことがないという方にこそ、私はその方に合う柄物を選びたくなります。それがバシッとはまれば、新しい世界を知っていただけることになり、ご満足いただけたら、それこそ、洋服屋冥利に尽きるというものです。

​S様、暖かくなるまでこの冬ヘビーローテーションしてください!

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​シンプルなネイビージャケット + オッドベスト

​初めてお越しいただきましたT様。今回は初めの1着ということで、シンプルなネイビージャケットとグレートラウザーズのコーディネートをお作りいたしました。オッドベストもご依頼いただきましたので、一緒に選ばせていただきました。

​選んだ生地は、どれも300gほどの軽めなフランネル。オッドベストはネイビージャケットの中でも嫌味にならない色を考え、ブラウングレーのフランネルを選びました。

ネイビージャケットにグレートラウザーズという究極にシンプルな合わせですが、そこにオッドベストが加わることで、コーディネートのレベルが一段上がります。まずはこの1着を皮切りに、少しずつバリエーションを広げていただければと思います。T様、ぜひたくさんご着用ください!

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​若きネイビー愛好家

​初めてお越しいただいたのは、新卒入社前の頃。
「仕事でバリバリ着られるスーツが欲しいです」
というM様に、私はお決まりのように
「では、ネイビーのフレスコです」
と提案し、3ピースでお仕立ていたしました。

​結果的に、数多くいた新卒社員の中で、唯一本格的なスーツを着ていたM様は、悪目立ちではなく良い意味で目立ち、上司の方にもよく気にかけていただけたそうです。

​これだけ世の中がカジュアルになり、装いのルールが緩くなった時代だからこそ、自分を律してルールを設けることで、自分自身という存在を表すことができると私は信じています。

「私はこの服を着たくて着ている」
という強い意志を持ち、自らルールを徹底して生きるストイックな姿を、冷たい目で見る人はいないでしょう。

​私は20歳の時にこの装いの世界に魅力を感じ、足を踏み入れて以来、数えきれないほど良い経験をさせていただきました。間違いなく言えるのは、今の人生があるのは、このテーラードの世界を信じて突き進んだからです。

​カジュアルになることは、いつでも誰でもできます。ですが、あえてテーラードを選ぶというのは、限られた人にしかできません。わざわざ着るという「不便さ」を楽しむことこそ、人間の営みを感じるのです。

筋トレや朝活みたいなものでしょうか。
「今日はダルいなぁ」と多くの人が思う中、自分を律して未来の自分のために行動をすること。
それをやり続けることで、自分が前進していきます。
自分自身という乗り物のパフォーマンスが上がっていけば、人生が楽しくなるに決まっています。

錆びついたチェーンの自転車と、ピカピカにチューンナップされた自転車、乗っていて気持ちがいいのは明確です。

自分に甘えず、律した先に、本当の人生の楽しみというのがあるのだと思います。

​今回M様にお作りしたのは、ネイビーブルーのフランネルトラウザーズ。当日は以前ベルンでお作りしたダークネイビーの長袖ニットポロを着てきてくださいました。ジャケットスタイルにニットポロは非常に相性が良いです。

​今回はより冬らしい着こなしとして、ハイゲージのタートルネックを合わせていただきました。カジュアルなジャケットスタイルにニットは欠かせません。お仕事の時はインナーをシャツとネクタイに変えるだけで、ビジネス用のジャケパンスタイルが完成します。オンオフ問わずジャケットを着たい方は、ぜひこの「インナーを変える」という術を覚えていただきたいです。

​また今回、スーツにもジャケパンにも使える靴として、黒のフルブローグシューズを選ばせていただきました。一足あると非常に重宝する靴です。M様、いつも素敵に着こなしていただきありがとうございます。

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​品格を纏うチェスターフィールドコート

​初めてお越しいただきましたA様。ご依頼いただいたのは、お仕事で使うチェスターフィールドコートです。

​お仕事柄、目上の方に会う機会が多いとのことで、「目立ちすぎず、しかしこだわりを感じさせる雰囲気」を希望されました。私が選んだのは、チャコールグレーのカバートクロス

​カシミヤのような起毛感のある上質な生地は、上品さが前面に出すぎてしまうため、あえて質実剛健な生地を選びました。
「上品さは仕立てだけで表現する」というコートです。非常にシンプルで無口な佇まいですが、奥底から「普通のコートではない」雰囲気が漂っています。

​私が思う本当に良い洋服とは、デザインやディテールで見せるのではなく、シンプルで仕立ての良い洋服のことです。ぜひたくさんご着用ください。

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​茨城で紳士道を生きる

​いつもお越しいただいておりますK様。今回は秋冬のジャケットスタイルとコートをご依頼いただきました。

​お体ががっちりしていらっしゃるK様。過去にツイードジャケットを2着お仕立てしましたので、今回はフランネルジャケットをお作りいたしました。

​選んだ生地は、20年ほど前のセミヴィンテージとなるゼニアのウールカシミヤ。グレーのヘリンボーンでシックな見た目ですが、とろけるような柔らかさのある素晴らしい質感です。

​合わせたトラウザーズはダークネイビーのフランネル。オッドベストは、1着分だけ残っていたヴィンテージの国産カシミヤ生地を使用しました。赤みがかった綺麗なブラウンで、元々はコート用に買い付けた生地でしたが、ベストとしても非常に良い仕上がりになりました。

​今までもブログで何度か書いておりますが、ジャケット、トラウザーズ、ベストの3つの生地の素材と色のバランスを考えるというのはなかなか脳味噌を使う作業です。

 オットベストという、本来なくてもいいものを足すというコーディネートになりますので、合わせ方を間違えてしまうと、途端に too much になってしまいます。そのため、あくまで自然な雰囲気を出す必要があります。

 色合いを離しすぎない。だけれど、しっかりとコントラストはつける必要がある。

という絶妙な塩梅で組み立てていきます。あとは何より大切なのは、その方の雰囲気に合うかどうかです。
洋服選びはまず何よりも自分を知ることです。自分を知ることによって、本当に自分に似合うものが見えるようになります。

合わせてお仕立ていたしましたのは、モカブラウンのカシミヤウールのアルスターコート。

色合いがとても美しいです。
結構長さがある生地でしたが、だいぶなくなってきてしまいました。
かなり気に入っていた生地なので、名残惜しいですが、まだあるのでお似合いになる方にご提案していきたいと思います。

×様、いつもありがとうございます!

最近感じるのですが、全てのジャンルにおいて、自分が知っていることというのは本当にわずかなのだということ。

知らず知らずのうちに、自己流でやってしまっていることが、結果的にすごく人生単位で燃費の悪いことをしてしまっているということを感じます。

だからこそ、人生においてこれは正しい知識をつけておく必要があると思うというものは、しっかりと1から学び直す必要があると思うのです。 

例えば分かりやすく言いますと、衣食住、この3つはまさにその典型と言えるでしょう。

学校教育で本当に正しい衣食住を学ぶことは果たしてあるでしょうか。先生が本当に正しい知識を持っていて、それを多くの生徒に正しく伝えることができているでしょうか。私は残念ながらそうは思いません。 

そのため、学びというのは学生で終わりなのではなく、一生やり続けることなのだと思うのです。

大人になって知らないことを知ることができる喜び。衣食住の正しい知識を得ることによって得られる人生の豊かさ。 

衣服に関しても、しっかりと学びがあれば、これだけ服装は乱れているはずがありません。 

食に対してもそうです。時代が進めば進むほど不健康になっていく国民。

正しいことを知るというのは、自分自身を守るためでもありますし、自分の身の回りの人たちを良い方向へ導いていくこともできます。

服装はただ見せびらかすものだけではないですし、自己満足で着たいものを着るという安っぽいものでもありません。
私は何者かというのを指し示す名刺であり、アイデンティティでもあるのです。 

私が何者かというのを知ることこそ、本当の洒落者になるための1歩目なのかもしれません。

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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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