BERUNです。
ようやく涼しくなってきたと思いきや、一気に寒くなりました。
私の自宅では、ペレットストーブ解禁です。
既に最後の切り札であるダウンジャケットを着ている方もいれば、まだ肌の皮が熱いのか、Tシャツで過ごしている方もおり、まさに季節の変わり目の混沌を楽しめる時期です。
早めにご注文いただいた方は、このグッと冷え込んだ時にお作りした秋冬物の洋服を最速デビューできていることと思います。
ですが、もう出遅れた!と思うことなかれ。
基本的に10、20年と切る前提のものづくりでございますので、この2,3ヶ月遅れた位は、微差でございます。
春にコートを頼む方もおりますし、今この時期に春夏物を頼んでいる方もいらっしゃいます。
自分が今持っていないもので、必要としているものを順番に揃えていくということが、季節よりも大切なことだと私は思います。
ブログでは紹介しきれない位たくさんの洋服が上がってきておりますので、少しずつご紹介していきたいと思います。
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オリジナルブルゾン試作完成
その前に、今年の春から取り掛かっていた、BERUN初のブルゾンのサンプルが本日上がって参りました!
非常に、というか、めちゃくちゃ格好いい仕上がりです。
本来カジュアルに使うような生地ではないDormeuilのヴィンテージスポーテックスの生地を使い、カジュアルなブルゾンを作成しました。
リブも完全オリジナルで、色のトーンをグレーで統一した上品な一着。
裏地は贅沢にキュプラではなく、ビスコースを使用。
もうこれに関しては、キュプラでいいじゃん?という話なのですが、いかんせんこだわりたくて仕方がなかったので、コスト度外視でただ上質なものを作る!という思いで作りました。
ここから少しの修正は入りますが、これから3サイズ展開にて製作し、年明け1,2月に完成するよう動いてまいります。
こちらのグレーと、ネイビー/レッドのチェックの2色で3サイズ、全てで50着作る予定ですので、各サイズ8〜10着ずつの予定です。
すでに本日お越しいただいた方でも仮予約(笑)をされた方もいらっしゃいますので、これからBERUNに来る予定のある方はぜひご試着くださいませ。
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ヴィンテージカシミヤで仕立てるコート
40年前のヴィンテージの生地を使い、仕立てたチェスターフィールドコート。
英国のヴィンテージのカシミヤは、カシミヤらしからぬハリとコシのある質感。
現代の柔らかく、光沢があり、しっとりとしていて、なんとも高級感があると言うカシミヤとは一線を画す質感です。
しかし、このような生地も、現在ではもう作り出すことができない、過去の遺産です。
このようなものは、過去のものづくりにリスペクトをしながら、決して懐古主義にならずに、現代的にアップデートして新しく息を吹き返して、お作りするというのが私の洋服作りの考え方です。
非常にスーツの似合う割腹の良いK様。
中に着ていただいているのは、これまだヴィンテージのドーメル社のグレーシャークスキンのダブルブレストスーツ。
このクラスのコートがあれば、まず自分の代だけで使い切るのは非常にもったいないです。
基本的に、大切に来て、次世代に引き継いでいくというのがこのようなコートの役割だと思います。
ツイードのコートは、ガンガン着て着倒して、擦り切れて直してまた着倒す。
そのくらいヘビーに着て、くたくたになったものを次世代に渡すというのが、ツイードの役割です。
ツイードとカシミヤのような生地は、役割が全く異なりますので、やはりコートは数着ある方が望ましいです。
着るだけで、その日1日が豊かな気持ちになるものというのが、私は本当に良い洋服だと思います。
こちらのコートについての説明はほとんどありませんでしたが、説明が要らない位、完璧で間違いのないコートでした。
K様、いつも遠くからお越しいただきまして、ありがとうございます!
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グリーン&グレージュ
今までスーツをずっと作っていただいていたM様。
今回は初めてのジャケットスタイルのオーダーです。
スーツとジャケットは、コーディネートの仕方や考え方がまるで違います。
スーツは言ってしまえば、上下揃っていますので、サイズ感を間違えなければ格好良く見えます。
ジャケットスタイルはその分、考える工数は多くなります。
そこを楽しそうと思える方は、ぜひジャケットスタイルに挑戦してみていただきたいです。
今回お作りしたこちらは、モスグリーンのジャケットに、グレージュのフランネルトラウザーズ。
ジャケットはW Bill社のLAMLANA。
まだBERUNにはストックがありますが、本国は全て完売だそうで、なんとも残念です。
ラムウール、アンゴラ、カシミヤという秋冬のジャケットにはうってつけの素材感。
程よい起毛感で、厚みも300gmsと軽いため、とても使いやすい生地です。
わたしも色柄違いで2着持っております。
グレージュのフランネルトラウザーズは、何にでも合わせられる便利さがあります。
グレーとベージュ、どちらの色も入っているため、それぞれに合う色のジャケットなら合わせられる。トラウザーズとしては最強の色だと思います。
春夏はフレスコのグレージュ、秋冬はフランネルのグレージュと持っておくと、まずジャケットのコーディネートに困ることはかなり減ります。
カチッとビジネスライクなジャケットスタイルの場合は、グレーのトラウザーズ。
少しカジュアルさがあってもいいという場合は、グレージュという選択肢もあっていいと思います。
細身のM様だからこそ、少しゆとりを持たせることで、華奢な印象にならずに、上品さを出すことができます。
M様、いつもありがとうございます!
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キャバルリーツイルで仕立てるジャケット
今回初めてお越しいただいたA様。
納期がかなり急だったのですが、お聞きしますと、25年ぶりの同窓会で着たかった。とのこと。
「もし間に合えば、、」くらいのお話でした。
北風と太陽ですね。
なんとか間に合わせたい、、!
と思わせてくれるお人柄で、前日になんとか!仕上がりました。
体格がガッチリしているA様。
色々とコーディネートを考えましたが、ジャケットに選んだのは、William Halstead社の550gmsのキャバルリーツイル。
550gmsと聞くとかなり肉厚な印象がありますが、ガッチリと織り込まれたキャバルリーツイルですので、厚みはそこまで感じられません。
しかし、触るとわかる、このガッチリ感。
薄くて(現代の生地に比べると厚いですが)強い。それがキャバルリーツイルの特徴です。
お色はネイビーとグレーの間のようなカラー。
トラウザーズはライトグレーのウールカシミヤを合わせました。
ネクタイはブラウンのホップサックタイ。
チーフも挿して、華を添えます。
キャバルリーツイルは本当に便利な素材で、程よくカジュアルさがあるため、色々な合わせ方ができます。
今回のジャケットは、トラウザーズもあればスーツにもなります。
そうなりますと、やはりスーツでも着られると便利ですよね。ということで、トラウザーズとベストもお作りすることになりました。
こちらのスーツスタイルを拝めるのも楽しみです。
A様、このたびはありがとうございました!
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セミステンカラーコートとグレースーツ
いつもお越しいただいているF様に今回お作りしたのは、合物のグレースーツと、春秋から着られるセミステンカラーコート。
以前F様にはアルスターコートをお作りしておりまして、そちらがしっかりと冬物の生地のため、少し涼しくなった今くらいの時期から着られるコートをということでセミステンカラーコートをお作りすることになりました。
スーツは320gmsの英Smith Woolens社の生地。
すっきりとした表情で、肉厚すぎず綺麗なドレープを楽しめる生地です。
高身長のF様だからこそ、トラウザーズにしっかりゆとりを持たせることで、ストンと綺麗に落ちて美しいシルエットを出すことができます。
コートはネイビーグレーのキャバルリーツイル。
そう、先程ご紹介した生地と同様のものです。
アメニモマケズ、悪天候ほど喜んで着ていただきたい。そんな生地です。
F様はもう一つオーダーをいただいておりました。
ネイビーのモールスキンのトラウザーズです。
こちらにBERUNオリジナルのロングニットポロを合わせたスタイル。
「もうこれにツイードジャケットでカジュアルコーデ完成じゃないですか!」
「そうなんです!笑」
わたしは常々お伝えしていることがあるのですが、お洒落というのは決して難しいものではないということ。
お洒落を難しくしているのは、他でもないアパレル業界です。(てっ敵に回すつもりはないですよ!笑)
難しくすることで、何を買えばいいのかわからなくなってもらう。
そこにトレンドがあることで、とりあえずこれを買っておけば安心だよね。ということで、毎年消費のスパイラルが生まれるわけです。
ですが、それを楽しんでいられるのも若いうちです。
しばらく消費のスパイラルに巻き込まれていると、だんだんと疲れてきます。そしていつの日か、
「いいや、ユニク◻️で」
と諦めてしまうのです。
日本にお洒落なおじさまが少ないのは、積み上げていく買い物の仕方を知る環境がないことが原因です。
20,30代という若いうちから、その当時は似合わなくても、本質的で川上にほど近い洋服を揃え続けていけば、あとは着続けていくだけで今世はオッケーというくらい、本来の洋服というのはシンプルでいいはずなのです。
今はかなり減ってきてしまいましたが、トラッドショップという形態の店がわたしの理想です。
例を挙げますと、
春はバラクータ、チノパン
夏はラコステのポロシャツ、バミューダショーツ
秋はセントジェームス、チノクロスのアウター
冬は色々ありますが、例えばグローバーオールのダッフル等、、
これが毎年定番で店に変わらずにあり続けるのです。そういう店は20,30年前の新品の在庫がそのまま残っているため、勝手に店内でデッドストック(ヴィンテージの新品)化し、しかも当時の値札の価格のまま販売するという所業をするのです。
こんなお店、今の時代ではなかなか続けていくのは難しいですよね。
時代は変わっていきますが、変わらずに評価され続けるものはあります。
それを発掘して、大切に着続けていくこと。
それが賢い物の贖い方です。
わたしの動画のコメントでも、しょっちゅう
「時代遅れだ」
「そんな服今着てるやついない」
そんなようなコメントをいただきますが、わたしが話していることはタイムレスなものについてですので、時代遅れという表現は的を射ていないのです。現代しか見えていない方にはそう思われてしまうかもしれませんが、時代おくれと普遍的なものの違いを感じていただきたいです。
また、トラディショナルなスタイルを重んじている方の方が、世界的に見れば圧倒的にマイノリティですので、こんな洋服着ている人はいない。というのも、当たり前なのです。みんながみんな伝統を重んじる国民性でしたら、ここまで経済は発展していないはずです。経済と文化というのは、なかなか両立することが難しい。
クラシックカーを見て、
「うわー!めっちゃ古い車乗ってるわ。時代遅れ丸出ぃー!」
となる人はいるでしょうか。笑
もしそう思う人がいるなら、その人とはわたしは知り合いにならなくて結構です。笑
時代を一つの波と捉えると、その波は自分にとって乗りたい波なのか、と考える余地が我々にはあります。
もし自分が波乗りだとして、全部の波に乗る必要が果たしてあるでしょうか。
自分がこれだ!と思ったものにだけ乗る。
それにうまく乗れたら、今日1日最高にハッピー!だと思うのです。
私たちが生きているのは今ですが、今この世にあるものは決して今作り出されたものばかりではありません。
ある時代に作られたこれが最高!ということであれば、そこに誇りを持つことで、自分らしい生き方が培われていきます。
新しく作られたものが全てという見方をしていれば、いつまでたっても自分の審美眼が育つ事はありません。新しい=最高という尺度しかないわけですので、そのような方は残念ながら、一生消費のスパイラルに居続けることになります。
時代には沿っていないが、自分にはこれがベストアンサーというように、自分の目でものを見る判断がつけば、あらゆるものに惑わされることなく、自分の感性を信じて過ごすことができるようになります。
ですので、わたしのお店に来られたお客様はこぞって、
「買い物をすることがなくなりました」
と言います。
その空いた時間を使って、映画を観たり、美術館に行ったり、旅行に出掛けてほしいのです。
そうして感性を磨いていくことが、最も賢く間違いのないものを手にしていく方法です。
それが最も遠回りに見えて、実は最短ルートなのです。
目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは無理をせず
人の心を思い続ける
時代おくれの男になりたい
マイクが来たなら 微笑んで 十八番を一つ歌うだけ。
そんな男になりたい(今世では無理そうです)
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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途