BERUNです。
ブログを書く感覚を思い出しました。笑
今回も昨年にお渡しした方の仕上がりをご紹介していきたいと思います。
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年代に合わせた洋服の揃え方
BERUNには18歳から80歳まで、年代問わずに多くの方にお越しいただいております。
歳を重ねてからこの世界に興味を持たれた方は、少し駆け足でお洋服を揃えることが多いです。
10,20代でこの世界に足を踏み入れた方は、少しずつ、タフでストイックな生地で仕立てた洋服を揃えていき、これからの10,20年を共に生きていく相棒を募っていくように仕立てていきます。
50代以上の方は、硬く重い生地は疲れる。。というのが率直な気持ちだったりしますので、上質な生地で柔らかくお仕立てすることがあります。(若い頃から硬いものを着て鍛えられている人は平気です笑)
まだまだこれから働き盛りの方には、鎧のような洋服をお仕立てして経年変化を楽しんでいただきます。
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本物を知るべき理由
モードの帝王アルマーニは、クラシックスタイルを熟知した上で破壊することを行いました。
守破離という言葉の通りですが、着崩すためにはそのもの自体の本質を知らなくてはいけません。
アルマーニ然り、その当時のデザイナーたちは、40,50年代と戦前戦後のリアルな洋服を見て育った人たちです。
自然に目につく、手に取るものが完成されたものばかりでした。
それが今の我々の時代と大きく異なるところです。
世の中には正統派のものばかりが溢れる時代に育ったデザイナーは、その当たり前につまらなさを感じ、それに時代が重なり、70年代からはファッションがビジネス化していきました。
その流れでクラシックスタイルをを破壊して、ファッションを再構築するモードが一大ムーブになったのです。
わたしたちの世代は、原型を知らない世代です。
守を知らずに破離をしてしまうとどうなるでしょう?
それが今の時代のモノづくりの答えです。
今この時代にヴィンテージの価値が軒並み上がっていることも頷けます。
きっとおそらく、50年代頃までは、一生ものという言葉は存在していなかったと推測します。
なぜなら、一生着るのが当たり前の時代で、一生もつ物が当たり前だったから。
電池の寿命をわざと短くしたというのは有名な話ですが、今我々が生きている時代は、一生持ってもらっては困る時代なのです。
大量生産大量消費の時代だからこそ、一生ものという言葉がブランド化します。
一生着るためには、今の自分のふわふわした遊び心を手放す必要があります。
モードの前の時代の考え方ですね。
破壊する前のモノづくりを考える。
何もやっていない、シンプルそのもの、洋服である、ただそれだけ。
それでいい。
と感じた人だけが、今これからの時代、自分軸で生きることができるようになります。
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Young Gentleman
20代のT様。
今回はジャケット&トラウザーズをお作りいたしました。
ビジネスでもオフでも使いたいということで、まずはシンプルなものをお作りしましょうとなりました。
お若い方は、まず徹底的にシンプルなものをお作りした方がいいと思います。
なぜかと言いますと、20,30代のときに打ち出した自分のキャラクターなんていうのは、大概時間が過ぎれば青さだけが残るからです。
例えば、
「自分はこれでいくんだ!このスタイルでいくぜ!」
というのをどこかで決めたとしましょう。
そのスタイルのまま、40,50になっても行き続ける人はほとんどいません。
そうなってしまうと、20,30代のときに揃えた洋服の多くが、使い道がなくなってしまうのです。
「そんな先のこと考えずに、そのときに必要なものを持てばいいんじゃないのー??」
という方は、そのようにしていただいてよろしいかと思いますが、洋服を消費するのか、投資と捉えていくのかの違いはここにあります。
洋服に限らず、目線は常に遠くへ向けている方が道を踏み外すことが少ないです。
自分のキャラクターも生き方も定まっていない内は、あれこれ悩まずにシンプルなものを揃えるのがいいと思います。
シンプルなものは何歳になっても着ることができるからです。
自分のスタイルが定まった後、趣味嗜好が違う方向へ行ったとしても、シンプルなものは何にでも合わせることができます。
シンプルイズザベストです。
そんなT様には、ネイビーのヘリンボーン柄の生地でジャケットをお仕立ていたしました。
ツイードとフランネルの間のような使いやすい表情の生地。
意外とこういう普通でいい雰囲気のものは少ないです。
中にはBERUNのロングニットポロを合わせました。
トラウザーズはネイビーのキャバルリーツイル。
この組み合わせを持っていれば、今後アイテムが増えたとしても着回すことができます。
アイテムが揃いきっていない内は、シンプルなものを揃えて、着回しを楽しめるようにしましょう。
T様には合わせてチェスターフィールドコートもお仕立ていたしました。
ヴィンテージのW Bill社の肉厚な生地。非常にクオリティが高いです。
こちらの生地は長らく置いていたのですが、長さが足りず断念することがしばしば。
小柄なT様、ギリギリ入りました。
生地本から選ぶのではなく、現物から作るものを決めるスタイルをしているため、その生地が入るかどうかはもう縁です。
若い方が似合うキャメルカラーは、あまり白度が高いものではなく、黄身・茶色みが強い方がいいです。
そのどちらかはその方の肌の色や雰囲気によります。
白みが強いキャメルは老紳士の特権です。
T様、いつもありがとうございます。
たくさん着てください!
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ダークブラウンのダブル
初めてお越しいただきましたW様。
細身で普段はカジュアルな着こなしが多い方ですが、大事な場面で着られるスーツが欲しいとのご要望でした。
ネイビーやグレーに捉われないけど、あまり派手すぎるのは、、というオーダーでした。
ちょうどストックしておりました、Kynoch社の強撚糸の生地で杢がかったダークブラウンの生地がありましたので、そちらをご提案いたしました。
細身の方でも、決して着丈やスラックスの丈を短くしたりはせず、フルレングスでお作りします。
全体のサイズ感をバッチリ合わせることで、わざわざ誇張したシルエットにしなくとも自然で美しいスーツ姿に仕上がります。
細身の方のタイトすぎない程良いゆとりのあるスラックス姿はとてもきれいです。
強撚糸の推しポイントは、生地にとても張りがあるため、ヒップから下の落ち方がとてもきれいだというところです。
W様、大事な場面でぜひご着用くださいませ!
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Tohoku Classic
山形からお越しのK様。
雪深い北国でも活躍するスタイル。
これはとても大事なポイントなのですが、地域に根ざした装いにある程度目線を合わせた方が良いということ。
例えば、東京の銀座、丸の内、青山あたりで着る洋服と、青森のなんとか村で着る洋服は変えるのは当たり前ですよね。
私のお客様でもいらっしゃるのですが、地方の工場に行く時にかっちりスーツを着ていくと、何か悪い話があるのではないかと、工場で働いている人たちに勘ぐられてしまうため、あえてカジュアルな格好をしていく、というようなお話。
これは自分が着たい格好すればいいんだというエゴよりも、周りのために自分が着るものを合わせて選んでいるという配慮を感じることができます。
これが大人の洋服選びだと私は思います。
これが仕事着というワークウェアの位置付けでは考えられるのですが、スーツの着こなしの中で、地域性を考えるとなると、意外と難しいものです。
なぜなら、そのようなことを教えている場所がどこにもないから。そもそも教えられるものでもないのですが、洋服を俯瞰的に見ることで、必然的に街ごとに変えていく方が自然だよね。となります。
そのように考えたとき、地方で着るお洋服というのは、あまり責めすぎない方が良いのです。
ですが、もしご自身が洋服の奥深さ、楽しさに目覚め、こういう服を着てるのは〇〇さんしかいないよね。というようなハンコを押されるようなキャラクター認定がされるところまで来たら、どんな場所だろうと好きなものを着てオーケーですが、そこに行く道中は、多少の配慮が必要だと思います。
そんなことで、今回K様にお作りしたのは、北国の寒さにも耐えうるミディアムグレーのダッフルの生地でお作りしたアルスターコート。
「全然地方に目線合わせてないじゃん!全然かっこいいじゃん!笑」
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、私の中ではこのくらいのニュアンスで、充分微調整ができていると思っております。
生地にかなりの厚みと起毛感があるため、見た目以上にカジュアルさがあります。
合わせてジャケットとトラウザーズもお作りしましたが、上はグレーのチェック柄のツイードジャケット。
トラウザーズは、こちらも程良いカジュアルさがあるモールスキン。
格好良さの目線を下げるのではなく、都会的な雰囲気から、牧歌的な雰囲気へとカントリーな方向に振っていくと言うのは、私が都会の方と地方の方と、考え方を分けている大きなポイントです。
タートルネックを合わせましたが、このコーディネートもとても素敵です。
このくらいの塩梅ですと、地元で着ていても、
「〇〇さん、いつも決まってますね!」
と褒めてもらえるくらいのちょうどいい装い感だと思います。
K様、雪深い東北でぜひおしゃれを楽しんでください。
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ダークネイビーチェスターフィールドコート
初めてお越しいただきましたS様。
長年、銀座の老舗のテーラーで作られていたというS様ですが、今回はBERUNでコートを作りたいとのことでお越しいただきました。
今回選んだ生地は、こちらでラストになってしまいましたが、最近やたらと紹介しているFox Brothersのコート生地。
こういう良い生地って、なかなか出会えないんですよね。だからこそ、良いものを求めている方には、ご紹介したくなります。
約650gms位のコートの生地としては非常にバランスが取れている重さです。
180センチオーバーで、体格もがっしりされているS様。
肉厚な生地で、仕立てるダブルのチェスターフィールドコートが非常に良く似合います。
肉厚で本当に良い仕立てのコートは、自分の代だけで終えるのはもったいないです。
自分の代で20年来て、しっかりと味を出して、次の世代にバトンタッチする。
そして、40、50年と続けていっていただきたいです。
S様、このたびはありがとうございました。
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その方に合わせるのがオーダーの醍醐味
初めてお越しいただきましたN様。
鈍く美しい光を放つヴィンテージのアイウェアを掛けてこられて、お持ちのワードローブの話から男の世界タイムに即没入しました。
今回お作りしたのはブルーのフランネルのダブルブレストスーツ。
わたしが10年ほど前に個人的に着分を買い、隠していた生地(笑)
いつか自分で作りたいコーナーがありますが、そこから出してお作りいたしました。
BERUNの店内は文字通り山のように生地があるのですが、その生地をお客様自身が一つ一つ探検をするように見るというのはあまりありません。
話をしている内にわたしがその方の好みや雰囲気を感じて、これだ!と思うものを1,2点お出しするようにしております。
今回もそのパターンで、話をしている内に、「あの生地、出しちゃおっかな」となり、お出ししたというわけです。
一昔前のFox Brothersですので、生地の質感はとても素晴らしいです。
いやあ、、格好いい。
同色でうっすらと千鳥格子が入っており、それがまたなんとも言えない奥行きを出してくれています。
N様は今回、スーツと合わせてコートもお仕立ていただきました。
こちらはダークネイビーの正統派のチェスターフィールドコート。
上衿をベルベットにしてあるクラシックなスタイル。
上衿までベルベットにすると、少しコートの色が強く出るため、着る人を選びがちです。
ですが、N様たっての希望でこの仕様にいたしました。
人によっては止めることもありますが、それでいきましょう!となりました。
わたしのこだわりですが、上衿のベルベットは、それだけのために英国から取り寄せています。(約30cm)
たかが30cmのベルベット、と思うなかれ。
この上衿に上質なベルベットをあしらうことで、チェスターフィールドコートは完成します。
妥協したらその瞬間、その隙間からポロポロとアラが出てきます。
モノづくりはそういうものです。
着丈も素晴らしい、理想的な長さです。
そしてなんと、もう一着お作りさせていただきました。誠にありがとうございます。
こちらも一昔前のFox Brothersのもの。
約800gmsという肉厚なメルトン地のコート生地ですが、さすがFox Brothers。ガシッとした強さの中に上質なウールの質感を感じます。
こちらはセミチェスターフィールドコートの仕様で、袖口はターンナップ。
どちらのコートも異なる表情をしておりますので、楽しく着分けすることができますね。
N様、この度はありがとうございました!
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-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途