ベルンです。
今回は写真なしの長文を書いております。
昨日は天気の悪い中、アパレル業界で30年以上働く業界の重鎮の方と食事をさせていただきました。
その方はVAN JACKET(ヴァンヂャケット)が全盛期のときに、BIGI(ビギ)がスタートし、ダサかっこいい「みゆき族」を街から消した時代からアパレル業界にいた方。
生まれる前の話であり、わたしが田舎生まれのため、当時の初任給約3万円なのにも関わらず、ブルックスブラザーズの1万5千円するボタンダウンシャツを買っていたという時代なんか到底想像できません。
当時は純粋にそれが「かっこいい」とされていたそうです。
その方は20歳のときからアパレルに携わり、TAKEO先生と共にビギの事業をし、HANAE先生の下で働き、今日本で超有名である数多の海外のブランドを日本に持ち込むとき、常に事業に関わっていたというから驚きです。
彼が当時共に仕事をしていた方で今もアパレルに携わっている人のほとんどは、大手アパレルメーカーのトップにいるそうです。
数々の破天荒なエピソードや、数多くの有名海外ブランドの日本上陸ストーリーなど、聞いているだけで本当に楽しい時間でした。
そんなにも世間に大きな波を起こし続けている人が目の前にいるときに、わたしは小さなところで生きているなぁ。と思ってしまいました。
わたしのように社会人歴もなく独立をし、その方のようにコネも人脈もない。
柄にもなく、ときに社会との疎外感を感じてしまうこともあります。
わたしは本当に世の中に貢献できているのか。
などと年甲斐もなく、考えるときがあるのです。
そういった思いを話していると、その方は、
「アパレルをしている人は、必ずぶつかる考えですよ」
と答えました。
「わたしも若い頃は同じように、世の中から必要とされている感覚を味わえずに苦しんでいました。
昔は目に見えてわかる貢献、例えばドカタの兄ちゃんのように、何を作っている、何を直している、と目に見えるものがある職業が本当にかっこいいと思っていました。
看護師だってそう。わたしがいたから命を救えた。そういう結果がほしかった。
アパレルなんて、買わなくたって死なない。震災のときにも強く思いました」
「しかし今になって思う。どんなに落ち込んだときだって、おしゃれをして外に出ると最高に気分がよくなるんです。
外に出たくない。と思っているときも、メイクをしておしゃれをすると外に出たくなる。
上手い飯は食ってせいぜい満足するのは2時間でしょうが、おしゃれはしている間中ずっと気分を高揚させてくれる。
こんなにもすごい力を持っているものは、ファッション以外ないでしょう」
「元々アパレルを目指す人は洋服が大好きな人なので、仕事を仕事と思えないくらい楽しんで仕事をしてしまいます。そうしているうちに、いつの間にか仕事をしている感覚がなくなり、寂しくなる瞬間がくることは仕方ないんです。
そういった感情になるのは、本当に好きな証拠であり、プロであり続けることができる人の条件でしょう」
仕事で働きすぎて病院送りになり、これ以上働いたら歩けなくなるかもしれないからやめなさい、と自宅に強制的に帰宅させられたときも、すぐに職場に戻り仕事をしていたそうです。
そのくらい好きを通り越してしまうからこそ、こんな多感な業界で生き残り続けていられるのでしょう。
わたしも昨年洋服代を捻出しすぎて、2013年の支払い総額を見て驚愕していましたが、
「そのくらい使える情熱があるから、今の仕事を続けていられるんですよ。
洋服を買わなくなったら今の仕事に打ち込めなくなってしまうでしょう。
時計がほしかったら買う。車がほしかったら買う。お金は後からついてくる。
自分に正直に、ありのままにいればいいんです」
と、その方は言ってくださいました。
「今のこんな多感な時代にテーラー業を始め、そしてそれでご飯を食べられている。それだけで本当に素晴らしいことです」
人生の先輩であり、アパレルの大先輩からのお言葉は本当に胸に刺さります。
今マルイでは、車椅子で買い物ができる仕組みをつくっているそうです。
車椅子で買い物に来た方に、パンツを試着させるという常識を超えた計画を立てているようです。
車椅子で生活されている方もおしゃれをすることで、外に出たくなる力を与えることができる。
なぜこうも、多くの人間を魅了し続けることができるのだろうか。
わたしも魅了され続けている1人の人間です。
長文お読みいただきありがとうございました。
ベルンでした!
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