BERUNです。
最近は、12月にオーダーをいただいた方の納品が続いております。
現在、週に2度のみ店に行き、時間を開けお客様対応をさせていただいております。
グレーフランネルスーツを着た男
「The man of grey flunnel suit」灰色の服を着た男。
邦題がまさにこのタイトルです。うだつの上がらないサラリーマンが、上司から、
「グレーのフランネルスーツを着ればいい」
と言われ、ブルックスブラザーズにスーツを購い、それによって出世していく。という物語です。
今回、4年ぶりにお店に来ていただいたN様。前回はジャケパンをお作りさせていただいたのですが、今回はクラシックなスーツスタイルをご希望でしたので、こちらの生地をご提案しました。
Edwin Woodhouse(エドウィンウッドハウス。以下EWH)のVintage Twist。わたしのお客様でもファンが多い生地です。残念ながらEWH自体がブランドを畳んでしまい、今は生地屋や各テーラーに在庫としてあるだけになってしまいました。
300gmsで4PLY、現在のモクがかった質感がブームになる少し前からこの風合いを作っていたEWHはいい感度をしています。やはり何度仕上がりを見てもいい。本当に閉業が悔やまれる生地メーカーです。
とても恰幅のいいN様には、グレーのストライプといった日本人はあまり選びたがらないオトナな柄も似合います。
いい歳の重ね方をされたダッズだからこそ着こなすことができる、大人のスーツです。
N様はブレイシーズ(米:サスペンダー)を愛用してくださっているので、このヒップから膝に落ちていくトラウザーズのラインは言わずもがなの美しさです。
最近BERUNでは、ほとんどベルトループを付けられる方はいなくなりましたが、サイドアジャスターがあれば十分だから、ブレイシーズまではちょっと、、、という方はまだ多いです。
一度着けていただけたら、この心地よさと、トラウザーズのラインの美しさに迷いがなくなります。
トーンを合わせてグレー系、またはボルドーなんかの合わせは鉄板ではありますが、柔らかな印象を与えられるアースカラーもやはりいい雰囲気です。
こちらはブラウンにグリーンの小紋タイ。シックで真面目なスーツに彩を与えてくれます。
お次の方もN様。日本にある残りの分を、BERUNでまとめ買いをして抑えたヴィンテージの生地、LANVINのフランネルでお仕立てしたスリーピーススーツです。
織元は英国のファクトリーですが、90年代以前はラグジュアリーブランドが織元に依頼をして、独自のブランドネームで生地を作り、上顧客にスーツを販売していた時代がありました。ブランドイメージもあるため、クオリティは妥協していません。
300gmsのミディアムウェイトのグレーフランネルスーツ。日本で長い季節活用されるのなら、このくらいの厚みが一番使いやすいです。
BERUNの太幅のレジメンタルタイを合わせてくださいました。
ディンプルの出方がとても綺麗ですね。
N様は転職したてで、まさに現場で活用するためにこの洋服を仕立てられました。まだ不釣り合いだと感じる今がとても大切です。このスーツが普段着のように普通に着られる頃には、自分がどのような心境になっているだろうか。そんなことを考えて歳を重ねていくのも楽しいではありませんか。
大人のカジュアル靴
コロナの影響によって、装いが両極端になっているのを感じます。
カジュアルウェアに舵を切った方もいれば、脱デニム、脱スニーカーをご自身で掲げて、ドレッシーに生きることを決めた方もいらっしゃいます。
どちらもいいと思います。そのいく先にご自身の思想があるならデスガ。
こちらは今までずっとカジュアルだった方が、脱カジュアルを目指して履きやすい革靴をということでご提案した靴。ソールはラバーのダイナイトソール。
英国のスーパーバックという毛先の短いスウェードを使ったダービーシューズです。
見た目はとてもシンプルですが、だからこそいつでもどんなコーディネートにでも合わせることができます。
こちらをオーダーされたW様は足の大きさが左右異なるため、フィッティングの時にしっかりと測り、それぞれ別のサイズでお作りしました。
一般的にアジア人は左足の方が大きい方が多いです。
対して西洋人は、右足の方が大きいのです。なぜかまでは分かりませんが、わたしも今までたくさんの方の足を測ってきて、やはり左足の方が大きい方が多いです。5mm以上異なる方は、それぞれ別のサイズでお作りした方がより良いフィッティングを感じられます。
利き足のスポーツをされている方は、その利き足が大きくなります。
たとえば、剣道、柔道、体操。このあたりのスポーツは結構左右差が出ます。
意外とサッカーのような蹴るスポーツは、そこまで影響がありません。
わたしは若い頃ドラムに人生をかけていたので、その影響で右足が大きいです笑
もし、既成靴を履いていて、いつも片方の足が窮屈だな、またはゆるいなと感じられたら、左右差が結構あると思っていただけたらよろしいかと思います。
理想の自分になるために
私が購入するもの、作るものは、基本的にほぼ全てが、自分を気持ちよく背伸びさせてくれるものが対象です。
こういう服が似合う大人になりたい、という思いが、常にものを購入するときにあります。
わたしが古いものに心を惹かれる理由ですが、
昔のものは、お客様が持ちたいものを作るのではなく、作り手側が作りたいと思うものを優先して作っていたものが多くあります。
現代の利益主義ではまず作り出せない、職人やデザイナーのこだわりを存分に感じることができます。
作り手側のそのあふれるエネルギーを感じて、自分もこれが似合う人間になろうといつも鼓舞されます。
私が古いものが好きなのは、それが理由の1つです。
その気心を、わたしは現代の生地、洋服であれば英国の製品で感じることができます。
ヨーロッパの洋服を本当に似合うように着こなせるのは、言ってしまえば50を過ぎてからかもしれません。
今頑張って背伸びをして着てはいるけれど、これをなんの気無しにサラッと着ることができるようになるためには、やはりどうあがいても年輪が必要だなと潔く感じるときがあります。
ですがだからと言って、今は若いうちに着られるものを着るわけではありません。
頑張って背伸びをして、その洋服に追いつこうとしているうちに、気がつけばその洋服と、大の仲良しになっていく人生が最高に楽しいのです。
さいごに、the bookを新たに一つ更新しました。
初めてthe bookを書きはじめた約7年前から、文章の書き方がだいぶ濃厚になってきたのを自分自身でも実感します。笑
お時間のあるときにでも、お読みいただけたら幸いです。
-Atelier BERUN-
東京神楽坂のビスポークテーラー
東京都神楽坂6-73-15
メゾンドガーデニア301