雪ノ下で

BERUNです。

先週は雪が降りましたね。
藤野は1日だけ、東北のような雪景色になりましたが、横一直線の長い電車に乗り四ツ谷駅を降りたら、そこはいたって普通の都会の景色でした。
私の住んでいるところは山なんだと改めて実感しました。笑

2月に入ってもなかなか出会いがなかった春物の生地ですが、色々と良いものを見つけました。
来週には大体揃うかと思いますので、また揃いましたらご報告いたします。

また、ネクタイもただいま製作を進めており、2月22日に第一弾が完成する予定です。

空気を写す

先日、お客様がアンティークのライカのカメラを持って遊びに来てくださいました。

彼が英国に駐在していたとき、オーストリアにいたライカコレクターの方から譲ってもらったものだそうで、1920年代のカメラとのことです。
カメラもアンティークの世界があるんですね。。ゴクリ。。

フィルムカメラでしたので、その時は見ることはできず、後日、現像した写真を送っていただきました。

空気を切り取れる唯一のカメラと言われているライカ。


わたしは仕事柄、様々なジャンルのこだわりを持った方々がお越しいただくので、その人一人ひとりは一本の針なのですが、複数の方からこだわりを浴びることになります。
四六時中、360度全方位からこだわりの針を(気持ちよく)刺されている気持ちです。
刺激を受けないはずがありません。。

時計、クラシックカー、バイク、食、アート、ラグ、骨董、家具、建築、照明、器、植物。。

オ金ガイクラアッテモ足リマセン。

BERUNはそんなわたしの好きなものが集まってきた空間です。

ライカ、、欲しい。。笑

ライカの実物を初めてまじまじと見たとき、レンズの美しさに吸い込まれそうになりました。
「ライカ?カメラで100万?ありえない!」
なんて思い、鼻から気にかけていなかった昔の自分を戒めたい。笑

本物とはこういうものなのか。
自分が興味を持った分野に関しては、一流のものを知りたい性分ですので、この衝動はなかなか抑えられません。

あっわたしのカメラFUJIFILMも復活いたしましたので、出来上がった作品はそちらで撮っております。フジもやはりいい雰囲気です。

赤坂見附に引っ越してきて改めて良かったと思える事は、光の入り方、そして店内の雰囲気がとても素敵で、作ったお洋服がとてもきれいに見えることです。

男の制服Blazer

昨年の春からお世話になっております I 様。
何着かジャケパンをご提案させていただき、初心に立ち返り、今回は男の制服ブレイザー(ブレザー)をお仕立てさせていただきました。

ブレイザーはほんとに便利で、デニムやチノパンに合わせることもできますし、グレーのスラックスを合わせたらほぼほぼスーツのような使い方をできてしまう、とてつもなく万能なアイテムです。
はじめてのジャケパンデビューは何がいいかなと迷われている方には、私はブレイザーをぜひお勧めしたいです。
こちらの生地はヴィンテージの英国生地。ウール70%モヘア30%というブレイザーにうってつけのベーシックな生地。

ボタンはメタルボタンではあるのですが、模様のついていない、暗めのシルバーのため、メタルボタン特有のThe Blazerという雰囲気にはなりません。非常にシックな印象で、これは引き算、着る方の雰囲気を見て決めています。

I 様は怒り肩で、肩の傾斜も左右非対称です。左肩の方が右肩より上がっているため、普通に作ってしまうとノの字の反対向きのようなシワができてしまいますが、ここはしっかりと合わせましたので、シワひとつなくきれいに入りました。

普段の仕事でも結婚式でも出張でも旅行でも、なんでもござれのブレイザー。こういうアイテムこそ、若い人に着て欲しいなぁと思います。

袖の振り、身体のラインにしっかりと乗っているのが横から見てとれます。

私も自分のブレイザーを作ったのはもう8年前です。
そろそろアップデートした、、、(自粛)

普段スーツを着ることがないからこそ

昨年末にお越しいただいたS様。
普段スーツは着ないお仕事という事ですが、困ったときの一張羅が欲しいとのことでお越しいただきました。
小店を選んでいただきありがとうございます。

(シャツは当日お召しいただいていたものをそのまま合わせております)

選んだのは、イギリス本国から直接買い付けたドーメルのヴィンテージの生地。
グレーの平織り、280gmsという、こんなにも普通で何の変哲もない生地はあるのかという位、ザ・ベーシックなグレーの生地です。
生地で気をてらうことができないからこそ、フィッティングと仕立ての良さだけが勝負になります。

184cmあるS様。
先日身長が高い方が着るべきスーツという動画を作らせていただきました。
180cmを超えてくると、既製品でこれだ!というベストな洋服はなかなか見つけることができず、どうしても妥協しなくてはいけない点が出てきてしまいます。

1つは丈の長さです。184cmもありますと、ぴったりと身体を合わせて着丈をジャストで出しますと、76~7cm位まで長くなります。まず、こんなに丈の長い洋服は既製服ではまずありません。
既製品では、せいぜい72cmという所ではないでしょうか。

初めてピッタリの着丈の洋服を着た時、自分のジャストサイズとはこういうものなのか!とカルチャーショックを受ける方が多くいらっしゃいます。
後は既製品にないフィッティングといたしましては、ヒップの下に当たります”わたり”と呼ばれるところの広さです。

この着丈の長さとわたりのゆとりは、既製服からビスポークを体験したときの2代カルチャーショックだと思っています。

このぐらいのわたりのゆとりというのも、ワイドパンツであれば考えられますが、ワイドパンツと私が作っているフィッティングは異なります。
大きく変わるところは、わたりから裾にかけてのテーパード具合です。
ワイドパンツはわたりからそのままズドンと裾に向かってまっすぐ落ちていきますが、私はわたりから裾にかけてほどよくテーパードさせていきます。

私は長らくこのフィッティングを好んでお作りしておりますので、BERUNでは普通のフィッティングなのですが、やはり巷ではなかなか見かけるサイズではありません。
このフィッティングが世の中にあまり定着しない原因といたしましては、お客様が求めているものをそのまま作る洋服店でしたら、このようなサイジングの洋服はまずクレームになるので、作れないと思います。

このわたりにゆとりを出したいと自ら注文をしてくるお客様は数限りなく少ないでしょう。
やはり、巷で見慣れている、履き慣れているものに安心を覚えます。ワイド以外で、ゆとりのある洋服というものにはあまり触れる機会がないため、まずそのようなシルエットで頼もうという思考に至らないわけです。

言ってしまえば、一言二言スタイルのある店が、「これが本当の正しいフィッティングなんですよ」と半ば最初の頃は説得をする位の感じでご提案をしなくては、このサイジングというのは採用される事はないと思います。

まず、慣れない環境を体験していただく。その環境が今まで体験したことのないレベルで居心地のいい場所かもしれません。そうとわかったら話は早いです。もうビスポークの魅力に気づいてしまったわけです。

これがビスポークとオーダーメイドと既製服の世界観の違いです。
三者三様、全ての世界があります。

はじめはもちろん慣れないので戸惑いますが、2,3ヶ月も経てばすっかり慣れて、6ヶ月後には当たり前になります。
そうなると困ったことに、それに慣れてしまうと、もう昔着ていたものが逆に違和感を感じ始めてしまうのです。笑

良いものを知り、体と脳が贅沢になると、いいこともたくさんありますが、今までバリバリ1軍で活躍していたワードローブが、いきなり2軍落ちしてしまうことがあります。

もちろん初動のお金はかかりますが、その分自分自身の意識も変わりますし、心が豊かになります。私はそういう買い物には、しっかりとした金額をかけていいと個人的には思っています。

誰よりも買い物をしてきて、失敗もたくさんしてきたからこそ、良いものには本当に人を動かす力があることを感じています。

-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂のビスポークテーラー

洋装士:竹内大途

http://berun.jp/
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