BERUNです。
ブログが久しぶりになってしまいました。
最近始めたTwitterで小言をつぶやくことで、若干満たされてしまっているということは、心の中に秘めておくことにします。笑
季節は春に向かっていっているため、先日は生地棚を冬物から春物への生地の入れ替えをしていました。
入れ替えと言いましても、コートやツイードは年中欲しい方がおりますので、そこは残したままで、マニアックだろうなという生地をストックルームに引き下げました。
春物の生地も大量に入ってまいりまして、ストックルームが非公開なのがもったいないくらい、生地の量がとてつもないことになってきました。笑
お客様の期待を超える
つい先日、昨年の初めにオーダーをしていたビスポーク靴が完成いたしました。
人生3足目のビスポークですが、今までの2足はパターンオーダーで、木型を少し修正し、仮縫い付きでハンドで作ってもらっていました。
それで十分満足していたのですが、今回は木型をゼロから作るフルオーダー。
芸術品の域です。
きっかけは、スーツにもジャケパンにも合わせられる、大人な究極のローファーを作りたい。
そう思っておりまして、たまたま1足分だけ入ったというグレインレザーに一目惚れしたため、この革にいたしました。
持ち込んだイメージは、わたしが持っている靴の中でとびきり気に入っている靴、90年代のエドワードグリーン製のラルフローレンパープルレーベルの物。
当時、エドワードグリーンでは、パープルレーベルのための独自の木型があったそうで、既成靴のクオリティを圧倒する作りで、見るたびに感動する靴です。
デザインは定番のドーバーなのですが、そのスキンステッチが見事すぎて、今のエドワードグリーンのスキンステッチと並べられないほどです。
その靴を職人の津久井さんに預けまして、「このスキンステッチの雰囲気がたまらなく好きだ!」ということを伝えました。
スキンステッチとは、↑の写真のU字に縫われている縫いの部分のことを言います。
革の裏側まで針を通さず、表面からすくい縫い(袋縫い)をするように縫っていく技術です。
これが私が尊敬する脳内図書館の靴修理屋のオーナーによりますと、90年代の終わり頃まで、各ブランドのスキンステッチだけをやる超絶技工の職人がいたそうです。
しかし2000年を堺に、靴業界は大量生産かクラフトマンシップ、どちらを大切にするかの天秤にかけられます。
そして多くのブランドが、前者を選びました。
その結果、頑固一徹な職人方は、もう歳だし、辞め時ダナっと多くの腕のある職人が辞められたそうです。
その結果、2000年以降のグリーン製のスキンステッチはどうも、、
わたしも昔新品のエドワードグリーンのスキンステッチ入りのものを買いましたが、やはり心震えず、早々に手放してしまいました。
やはり手元に置いておきたいものは、ブランドネームではなく、その作り手のハートがこもっているものを持っておきたい。そう思うのです。
なんだか靴好きブロガーのような内容になっていますが笑、初フルオーダーは、全く履き心地が違いました。
そして、これぞプロ!というところですが、ソールが一般的な厚みのシングルソールではなく、かと言ってダブルほど分厚くなく、中間くらいの程よいボリュームのあるソールでした。
この辺りについては特にわたしからリクエストしたわけではなかったのですが、津久井さんより、
「竹内さん、体格もあるから、このデザインでシングルソールにすると、華奢に見えてしまう。だから少しだけ厚くしました」
こういう頼まれていないのに、その人のことをイメージして、創作することができるかが、一流かそうでないかが分かれますね。
そして、なんだか不思議な色だなぁと思い、まじまじとみていると、
「これ、革はブラウンなんですが、緑とか紫とか、いろんな色のクリームを入れてるんですよ。ずっと入れてたらだんだん入ってきて、なんだかいい色になりましたよね」
と。
ふーむ。こういうアイデアもとても嬉しいです。
期待を超えてきてくれるのがとてもいい刺激になります。
これは末長く、大切に履いていきたいと思いました。
早速、次の靴のお話。
夏に向けて、コンビシューズが欲しい。。
程よい明るさのブラウンに、生成色のコンビ。
きっと格好いいでしょう。しばし検討します。(検討の先には?笑)
グレーカシミヤコート
わたしの師匠と名前が一文字違いのK様。
春秋用のジャケパンをお作りしまして、冬に向けてお仕立てしたのはカシミヤ100%のチェスターフィールドコート。
英国のロバートノーブル社のヴィンテージの生地で、色味はチャコールグレー。
恰幅がいいK様ですが、とてもぴったりと身体のラインに沿っていて、美しいです。
しっかりと身体に合わせた洋服は、細い人は恰幅をよく見せ、がっちりしている人は締まって見える効果があります。
たまに言われるのが
「私は背が低いからチェスターコートが似合わない」や、
「痩せているからダブルが似合わない」
というようなお話。
こういう話を聞くたびに、他の洋服屋さんが、普段お客様に何を教えているのかが見えてきてしまい、非常に残念な気持ちになります。
私の考えですが、自身の身体にしっかりと合わせた洋服が似合わない人はいません。
最初の文言を言わせているのは店側の怠慢だと私は思います。
私のお客様で、身長140cmの方が、格好よくチェスターコートを着ています。
かなり細い方も、ダブルを格好良く着ています。
これには、自分の体格に合うものはバランスで決まっているから、似合うものを選ぶのがいい。という考え方もありますので、これに関しましては、何を重んじるかでよろしいかと思います。
ただ身体に合う洋服が理想ではありません。
着る方の身体の強みを活かし、隠したいところをいかに長所にするかです。
サイズを測って、その通りに作るのは習えば誰でもできます。
そこから先の、その人の人間性やキャラクターを踏まえて、洋服のラインを決めていく、それが本当のフィッティングです。
これはどの業界にも言えることですが、一つの固定概念を作れば、売る側は楽です。思考停止させて、あとは売りたいものをキャッチーに勧めればいいわけなので。
最近やたらと耳にする言葉や、急に目にする機会が増えたもの。
それは実に不自然でして、必ずそれを出すことによって利益を受けている人たちがいます。
自分のものさしを持つことが何よりも大切です。
ツイードチェスターフィールドコート
ダークグレーのシンプルなハリスツイードの生地を使い、仕立てたチェスターフィールドコート。
雨風打たれて、20年後くらいにはクタクタのいい雰囲気になっているでしょう。
コートはクリーニングなんかに出す必要はありません。
直接肌に触れるものではありませんので、1年着たから出そうかなどと考えず、ブラッシングとスチームだけかけてあとはワードローブの中にしまっておきましょう。
ツイードのコートはカジュアルにも使えます。
このまま子供と公園に行ってもいいでしょう。抱っこをして靴で蹴られても無問題。
よだれウェルカム。鼻水は少し凹みますが笑、ご愛嬌。
そうして共に歩んでいくのがツイードという生地です。
ブラウンチェスターフィールドコート
ダークブラウンのメルトン生地を使用してお仕立てしたチェスターフィールドコート。
身長190cm近くあり、元々かなり細身であったU様。
食事と筋トレでバルクアップしまして、一時期20kg近く増えたそうです。
その頃以前仕立てたスーツを(無理やり笑)着てこられたときは、一瞬、
「かなり細い、モードのスーツを新調したのかな?」
と自分で仕立てたのではないと見紛うほどでした。
今回のコートはもう少し大きくなることを想定し、ゆったり目に仕上げました。
メルトンの柔らかな生地感が、U様のお人柄に合っています。
理想を言えば、生地や仕立ても、その人の雰囲気に合うものを選ぶのがいいと思います。
ただ単に、これが今流行ってるや、これを雑誌で見たからというように決めるのはナンセンス。
それが自分に合うかどうかは別問題です。
来週には、春物の生地のご紹介もできると思います。
2月は少し落ち着く時期ですので、ゆっくりお話がしたいという方は、ぜひお待ちしております!
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-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途