BERUNです。
もう先々週の話になってしまいましたが、弾丸日帰りで京都と大阪に行ってきました。
目的は2つ。
1つは、京都で紋付羽織袴を仕立てること。
2つ目は大阪の生地屋で新たにヴィンテージ生地の発掘をしてくること。
習い始めて、3年の武家茶道ですが、家下の先生より、来年もしかしたらお点前を披露する場面が来るかもしれない。
なので、着物の1つでもぜひ揃えておいてくださいネ。
と言われたため、せっかく着物を揃えるなら、最上位のものを揃えたいと思い、紋付羽織袴を立てることにいたしました。(毎度毎度、思考のネジのユルさには呆れます笑)
紋付き羽織袴は洋装で言えば、フロックコートに値する装いです。
今の時代、スリーピーススーツでも、すでにフォーマルと言われる中、あえてフォーマルの階段を上って行きます。
なんでも自由に選べる時代だからこそ、好きなものを着るのがいいと思います。
京都の着物屋はとても興味深いお店で、5代目の今の社長は、若いころ洋服に精通していて、海外のブランドを日本に持ってくるサポートなどをしていたそうです。
洋服好きなら名前を言えば誰もがわかるような、日本のトップスタイリストに和装の世界を吹き込んだ方だそうで、ガチガチの着物しかあきまへんでと言うような重たい店ではなく、自由に着るのがいいんですよと言うような柔らかな印象でした。
色々な世界を見てきた上で表現する和装という在り方にとても共感をいたしました。
しかし、この自由に楽しむというのが一番ムツカシイのです。
わたしは和装に関しては全く無知識で、洋服のことは何もわからないけど、BERUNに行ってみようと飛び込んだ人の気持ちが非常にわかる。とても良い機会になりました。
なるほど、初めてスーツを仕立てると考えている方はこんな心境なのか、と。
襦袢が云々、着物の上に羽織りを着る。
その羽織りには紐がついていて、、、笑
なにからなにまで、ゼロから手取り足取り教えていただきました。
まずは基本に忠実に着る。
そして少しずつ、自分らしいアソビを入れていく。
このアソビをどのように効かせるかが、その人のセンスが問われるところです。
アソビの効かせ方をわかっている人は、遊ばないこともわかっている方。
車のハンドルにもアソビが効いているように、アソビは人間にとって必要なものなのです。
少し話は逸れますが、わたしが愛読している本、塩谷七生氏の著「男たちへ」にて、
氏が格好いいとする男はどういう人か、という問いに対して、
「タキシードが似合う人」
と答えています。
その心は、
「デニムが似合う人がタキシードを着こなせるとは限らないけれど、タキシードが似合う人はデニムを履きこなすことは容易に想像ができる」
ということ。
これはアソばないことを知る人は、アソぶことも知っている、とてもよい例えだと思いました。
清濁併せ持つことで、美しいものを本当に美しいと感じることができる感性が育つのだと思います。
10時に店に行きまして、気がつけば15時になっていました。
着物屋さんののんびりとした時間の過ごし方にただただ驚きです。笑
紋付き羽織袴は決まっていたことなのですが、サンプルがかかっているラックの中に、面白いものを見つけました。
デニムの着物、、
まぁ、今となってはデニムの着物なんていうのは一般化して、そこまで珍しいものではないのですが、その着物の襟の部分に、手書きの家紋サイズの小さな龍が書いていました。
初めて知ったのですが、それは「飾り紋」というそうで、家紋のような意味を持つものではなく、自分の好きな絵柄を入れて楽しむものだそうです。
その飾り紋が入るだけで、カジュアルに見えるデニムの着物が、ぐっと上質な雰囲気になりました。
そしてその社長は続け様に、
「デニムで色落としたり、加工したりしている着物もあるけど、わたしはそれはセンスがいいとは言えない。デニムは自分が着て自分でアジを出していくものですから」
と話していました。
こういうその人それぞれの思想に、個人の感性、センスが詰まっています。
そのセンスの合う人に出会うのが、最も間違いのない方法です。
なにもダメージジーンズや加工アイテムをダサい!と言いたいわけではありません。
ただ、わたしの感性に合わないだけです。
わたしは辰年ですので、同様に龍の飾り紋を入れてもらうことにいたしました。
茶道をやっていていつも感じることですが、ことあるごとに
「それは美しくない。この方が美しくなる」
「品が大切です」
「美を追求しましょう」
というように、”美”を徹底的に求められます。
これは今の風潮でいえば逆のように感じることがありますね。
「格好をつけることはダサい」
「ありのままでいい」
「美、品なんて小っ恥ずかしい」
こんな心持ちの人が多いように思うのです。(これも教育ですね)
やる必要のないことをわざわざやる。
本当に無駄なものであれば、とっくに消えているはずなのに、茶道も、着物も(スーツも)なくなっていない。
そして茶道もスーツも、意識をしっかりと持った人が学んでいます。
つまりそれらには、美と品があり、なくなってはいけない高尚なものだということ。
そしてその世界を追求していくことが、人間の幸福、豊かさを育んでいくことに繋がっていくのだと思います。
デニムの着物を試着しながら、話を聞いていたときも、
「これを着て街に出るだけで楽しいですよ。世の中の景色、見え方が変わります」
と仰っていました。
これは洋装でも同じことが言えますね。
ただ何も意識せず、だらだらと安物のスーツを着ている人には理解できない世界が、クラシックの世界にはあります。
スリーピースを着なくてもいいのに、あえて着る。
吊るしでいいのに、あえてビスポークをする。
その”あえて”を選択していることが豊かなのです。
世の中では必要だとされていないものをとことん突き詰める。
その無駄を楽しむのが、人間という生き物なのではないでしょうか。
このまま無駄を省いていった先にあるのは、無機質で味気ない人やモノばかりです。
無駄の中にこそ美学がある。
わたしはそう信じています。
Osaka Calling
常に新しいものが生まれては消える東京よりも、西側の方が濃厚な文化が残っているというのをたまに聞きます。
あとは家賃であったり、文化を育てていくのには都心は不向きな一面があります。
京都もですが、大阪も奥が深いなと行くたびに感じます。
運転の荒さは全く慣れませんが。笑
大阪で全国随一のストックを誇る、舶来(インポート)のヴィンテージ生地が眠る倉庫があります。そこに入るのは今回が3回目。
ここに住み込みをして、一つ一つ生地を見ていっても数日はかかるであろう膨大な量です。
しかしその中で、現代のセンスにも通用する色柄となりますと、1%ほどに絞られます。
その1%の選考も、感性は変わりますので、行くたびに真新しく見えてしまうから不思議です。
今回も素晴らしい生地たちに出会えました。
しかしまぁ、買いすぎです。。。笑
BERUNに来られたことのある方は見たことがあるかと思いますが、2つの生地棚が並んでいますが、すでに別の部屋には、その量の3倍近い生地がストックしてあります。笑
近い将来、もう少し広い空間に引っ越したら、皆さまにわたしのコレクションの全貌をお見せできるでしょう笑
シンプルでシックなネイビー、グレーの無地ものをたくさん買い付けました。
これで春夏秋のスーツ生地で困ることはしばらくなさそうです。
今が一番生地がある状況です。
ぜひ、お待ちしております。
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-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途