リネンスーツとご報告

BERUNです。

関東も梅雨入りしまして、湿度と向き合う季節になりました。

リネンスーツ

今年はリネンスーツを推す!と話していたのは3月頃でしょうか。
少しずつ、ロマン派の方々がリネンスーツに身を包んでいかれます。

初来店のT様。メンターに装いの大切さを諭され、そこから色々と調べて弊店にお越しくださいました。
星の数ほどある仕立て屋です。どの扉を叩くかで、言ってしまえばその後の人生は大きく変わってしまうと言っても過言ではありません。

人生を変えるレベルの洋服を仕立てられる店となれば限りなく少なくなります。
ほとんどのお店が、「スーツ」を仕立てるお店です。
つまり、「カッコいいスーツがほしいなぁ」という願いを叶えてくれるお店はたくさんあるということ。

縫製やパターンの平均レベルも上がってきているため、よほどひどい店に行かなければ、「まぁ、こんなもんか。」というスーツを手にすることができると思います。

ですが、わたしは洋服には、ただ着るだけという行為の他に、本当の魅力があると思っています。

男の子ならだれしも、変身ベルトに憧れて、真似をしたことはあるのではないでしょうか。

わたしは装うことは、自分がなりたい人物に成れる行為だと思っています。
理解のある人であればあるほど、いかに自分という人間は自堕落で、ポンコツなんだということを受け入れています。
そんな男が、自分を引き上げてくれるスーツを着たとき、いつも以上の力を発揮させてくれるもの、それがわたしはメンズテーラリングにはあると思います。

虎屋17代社長黒川光博氏が、書籍でこんな事を語っていました。
「カジュアルにすればするほど、人格、品格がどんどん出てくる。ちゃんとすれば割と隠せる。
クールビズをやるからには、よほど自分に自信があるのかな、と思います」(注釈しています)

歴史と伝統の店、虎屋の社長というお方が、自分の弱さを認めています。
本当に強い人とは、自分の弱さを認めた人だと私は思います。
弱さを認めたからこそ、それを補うものの力を心置きなく借りることができる。
手放しで自分に自信がありありで、全て自分でできるという人は、私はどうも美しく見えないのです。

話を戻しますと、ただスーツを着るという意識は、スーツを”着る物”としか思っていないのです。

それに比べて、スーツは自分をより良く見せてくれるもの、そしてそれを着ているときは、とても自信に満ち溢れる。
子供心を忘れない、変身ベルトのように、いざというときは仕立てのいいスーツに頼る。そのくらい潔い人の方が、私は魅力的に見えます。

さて、くどくどと書きましたが、結局何を言いたいのかと言いますと、着るためだけのスーツと、自分を引き上げてくれるスーツというのはまったく別物ということです。

私は物を贖うという行為だけではなく、ソノサキに何があるのかをいつも考えています。
ソノサキを見せてくれる、提案してくれるお店や人というのは決して絶対数は多くありません。
なので、見つけた!!この人!!ビビ!と思ったら、その人との出会いを大切にすることで、自分の人生がより良いものになっていくと思います。

T様は、初めてのスーツが共生地ブレイシーズの4ピースリネンスーツです。
もし会社や周りの人が気にしないということでしたら、私はこの世界まで行くことを心から推奨します。

だって、本当に楽しいですよ。笑

これこそ、必要だから着るという世界ではありません。

世の中の美のほとんどは、不必要なもので構成されています。

つまり、不必要なものを排除していった先にある世界は、なんてことない、何の魅力もない、無機質無気力なモノクロの世界に違いありません。

モノクロの世界に彩りを添えてくれるのは、美しいもの(人)たちです。

一度きりの人生、楽しく生きたいじゃありませんか。

カーキカラーのアイリッシュリネン。
バストとウエストの差が20cm(※)ある、ボディコンシャスなT様。
(※=例えば、バスト100cmで、ウエストが80cmということ。この差が大きければ大きいほど、格闘家のような体型になる。その分合うスーツは限りなく少なくなる)

出すところは出して、絞るところは適度に絞ることで、エレガントなシルエットが生まれます。

T様、暑い夏を存分に楽しむ切符を手にされましたね。おめでとうございます。笑

Summer Jacket style

小柄で細身のM様。
ご提案したのは、三者混のグレンチェックの生地で仕立てたジャケットに、下はトープカラーのリネントラウザーズ。
中は何にでも合わせられるサックスブルーのリネンシャツです。

トープカラーのトラウザーズですが、意外と上着との色合わせが難しいのです。
そのため、下はベージュ、グレー、ネイビー系を使うことが多いです。
今回はM様のイメージを考えたら、パッと華やかさがある色より、落ち着いた雰囲気の方が合うと思い、トープを選びました。
人のイメージを先行して考えたため、合わせづらいトープカラーも見事にマッチしました。

細身で小柄な方の多くの方が悩まれていること、それは、自分の身体に合った細い洋服しかないということ。

一見、当たり前じゃん?と思われるかもしれませんが、細い方が細い服を着るとどうなるでしょう。

はい、細く見えるだけです。

ただ身体に沿うフィッティングの限界はそこにあります。

例えば、小柄な方に合わせた洋服は、コンパクトな作りのため、着丈も短くなります。

既製服は、全体を大きくするか小さくするかしかできません。

それをビスポークで誂えることで、その方の身体をより良く見せるサイジングでお作りすることができるのです。

小柄な方でも、着丈はお尻が隠れる長さが必要なのです。ただ、既製服のようなサイズ展開でしたら、それをやってしまうと不恰好になってしまう。そのため、多くの方に合うために着丈を短くしています。

既製服とビスポークとの違いの一つは、サイジングの考え方の違いです。

せっかくビスポークをするのでしたら、わざわざ既製服に寄せたようなありきたりのサイジングにするのはやめた方がよろしいと私は思います。

M様、ありがとうございました。

ご報告

今回はご報告があります。
来月7月にAtelier BERUNは、今の赤坂見附から移転することにいたしました。まだ正確に何日とは決めておりませんが、おそらく中旬頃になると思います。

思えばジプシーのように転々と移動している私。
(店舗スタイルの仕事でここまで移転するお店はなかなかないでしょう笑)

発展ばかりの14年ではありませんでした。
コロナのときは、店舗というスタイルをやめ、クラシックカーに生地を詰めてひた走る行商スタイルも考えました。
(その時色々な人の縁を受けて今のアルファロメオ・ジュリアスーパーがあります笑)

そのアイデアも、「面白いじゃん!!」と言ってくださる方が多かったのですが、一部の方からは、

「この店に来ることが楽しみなんですよ」
と言う方もおられ、結果的にやめることにしました。

神楽坂の路面店から一時的に小さなマンションの一室へと移り、そこでやること1年と少し。(コロナを耐えました)

古巣を思い出し、元赤坂へと戻ったのが昨年の1月。

そしてまだ1年半ですが、なぜそんなに早く移転することになったかと言いますと、

物が収まらないからです

ここ1,2年の洋服と生地の増え方は想定外でした。笑
洋服作りの探求は留まることを知らず、生地探しの吸引力は年々増すばかり。笑
その結果、今の空間では見せたいものも全て見せきれていないというジレンマが出てきました。

昨年末から趣味(笑)の物件探しに熱が出て、探し回っていたところで、5月にようやくイメージに合う空間を見つけることができました。

そして移転先ですが、南青山に行きます。
表参道駅から骨董通りへと向かった先に行くことになりました。

今は新天地の内装作りに脳内を使いまくっています。ぐっと広くなりますので、お見せできるものもかなり増えます。

6月は比較的落ち着いておりますので、じっくり私と話したいというマニアックな方がいらっしゃいましたら、最後の赤坂を堪能しに、ぜひいらしてください!

いつもご覧いただきありがとうございます。

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-Atelier BERUN-
東京都港区元赤坂 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

03-6434-0887

https://berun.jp/

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