BERUNです。
5月に入り、時間もできてきましたので、ずっと観たかった映画やドラマを観ております。
最近観始めたのはダウントンアビー。
いやぁ、ストーリーが頭に入らないくらい、洋服やインテリア、世界観が格好いいです。
NHKの朝ドラなど、歴史を遡るような作品は、たくさんのプロのアドバイスの元、忠実に当時の世界を再現しているという話を聞きます。
ダウントンアビーのように、歴史的な物語となりますと、その当時の歴史家のアドバイスがびっしりと入っているに違いありません。
まだ観始めたばかりですが、貴族階級、中流階級、労働者階級の話し方、衣服、インテリアがしっかりと分けられていて面白いです。
今ではファッションになっているアンティークの洋服は、当時のメイドの作業服と、隣のラックにはガッチリ貴族階級の洋服が並んでいたりと、ごちゃ混ぜになっていますが、そこの歴史的背景が頭に入ると、より自分の着る洋服に愛着が湧きますね。
ダウントンアビーを観終わったら、次はザ・クラウンでも観ようかと思います。
さて、
春夏向けの洋服が続々と仕上がってきております。
英ハリソンズのスプリングラム。
こちらの生地は個人的に大好きな生地です。
肉厚でハリがあり、ドレープ感がとても綺麗に出ます。
強撚糸ですので、夏以外の春秋、そして冬も活用することができます。
ブラウンのドットタイを合わせました。
I様は仕事でスーツが必要な方ではありませんので、プライベートスーツをお作りいたしました。
イエローベージュのスリーピース。
これを私服として着られるのは最高に贅沢ですね。
上着を脱いで着る機会が多いことを想定して、ベストの背中も表生地でお作りいたしました。
そうすることで、オッドベストとして使うこともできます。
ペイズリー柄のプリントチーフを合わせました。
ネクタイとチーフの色柄を合わせるのは野暮の真骨頂です。
かと言って色合いを離しすぎてもいけません。そのちょうどいい塩梅がセンスの見えるところです。
I様、まだ真夏手前ですので、ぜひたくさんご活用ください。
アイリッシュリネンの3ピーススーツ
「リネンのスーツが欲しい」
というご要望でお越しいただきました、W様。
上背が高く、雰囲気のあるお方でしたので、ダブルもいいですよ?
となり、ダブルでお仕立てすることにいたしました。
色はカーキとベージュの間のような色。
落ち着いた印象がありながら、リネンの風合いも活きる魅力的な色です。
トラウザーズのサイズもゆったりとさせることで、リネンの優雅な質感をより感じることができます。
もしこれをご覧いただいている方で、
「自分は背が低いから、太いパンツは似合わないんだよなぁ。細身が合うんだよなぁ」
と思っている方がおりましたら、
それは大きな勘違いです!
とお伝えしたいです。
まず、明確にしたいのは、”太い”と、”ゆとりのある”、というのは、全く別物だということ。
そして既製服では、このゆとりのあるシルエットというのは、とても見つけづらいのです。
なぜかと言いますと、理想のゆとりは人それぞれ異なりますので、”理想的なゆとり”に既製服で出会うのはとても難しいです。
そのため既製服では、細身か太いのどちらかに寄せがちになります。
背が低い方も、大きい方も、細身の方も恰幅のいい方も、その方の身体に沿うように洋服を作ることで、身体が綺麗に見えるゆとりを楽しむことができます。
そもそもスーツというのは、肩パッドがあり、芯地があり、ジャケット・ベスト・トラウザーズとパーツが分かれています。
その副資材をうまく使い、それぞれのパーツをうまくその人の身体に落とし込めれば、その人のそのものの身体よりも格好良く見せることができるものです。
W様は元々高身長ということもありますが、股上を高くすることで、更にシルエットを綺麗に見せることができます。
最高に素敵です。
さて、リネンのダブルのスリーピース。
果たして涼しいのでしょうか?
その答えは明快。
ズバリ、
否
です。笑
ええー!と思う方もいらっしゃるかと思います。笑
いくらリネンといえども、スーツとなりますと、さすがに暑いです。
なおかつこちらのスーツが、前立てがダブルのため、暑さが倍増です。
スペンスブライソンのリネンは370gmsというなかなかヘビーな重さのため、370gmsのスーツと比べるともちろん涼しいですが、やはり上着を着ている以上暑さとは向き合うことになります。
まったく比べようがありませんが、サマーウール100%の260gmsくらいの暑さと同じくらいの体感かなと思います。
そのくらい、重さというのは一つの指標でしかないのです。
では、370gmsではなく、もっと軽いリネンにすればいいんジャナイ?
と思う方もいらっしゃるかと思いますが、それは「チッチッ」違うんです。
シワになりやすいリネンは、あまり生地を軽くしすぎてしまいますと、シワシワでトラウザーズに向かないのです。
また、リネンは摩擦と縦の力に弱いため、トラウザーズに使うのでしたら、やはり厚みのある方がいいでしょう。
このくらいトラウザーズにゆとりがあるからこそ、歩いた時の足捌きがエレガントに見えます。
W様、この度はわざわざ遠方からお越しいただきましてありがとうございました。
ジャケット・オッドベストスタイル
スリーピースが当たり前になると、ジャケパンコーデでベストがないスタイルに物悲しさを感じてしまうこともあります。
大きな理由としましては、ブレイシーズ(サスペンダー)に慣れることによって、ジャケパンでベストがなくなったとき、ブレイシーズが見えてしまうのがなんだか。ということがあると思います。
私はジャケットスタイルでも、スリーピーススタイルを提唱しております。
オッドベストを入れて、ジャケット、ベスト、トラウザーズ、すべて別々の生地でスリーピースを組み立てるコーディネートです。
Y様にお仕立てしたこちらは、FOX SPORTのダークブラウンのジャケット生地に、同じシリーズのベージュのオッドベスト、トラウザーズはベージュのコットン素材を合わせたコーディネートです。
下はウールで上品に合わせても良いのですが、これはその方のライフスタイルや雰囲気に合わせて、私なりに考えて選びます。
オッドベスト、世間的にも見られないアイテムですので、着る側も最初は少し勇気のいるアイテムです。
ですが、このブログを見ていただいている方は、世間的には、一般の感覚からかけ離れた、”変わり者”であることは疑いの余地がないでしょう。笑
常に新しいものを求め、大衆が良いというものが良いと判断する人たちが大半の世の中です。
その一般層という大群からの猛攻を喜んで受ける心持ちが必要です。笑
ですが、私が提案しているスタイルは、決して風変わりなものではなく、時代をさかのぼればいたって普通であったものです。
洋服が完成されたと言われている。1930年代。
時代を馳せ、完全リバイバルで古着を解体し、新たに再構築するムーブは常にあります。
ですが私は、生きている今この時代にかっこいいと評価されなくては、意味がないと思っています。
昔の時代をそのまま生きること、おれがいいと思えばいいんだという世界は、閉鎖的でオタクの考え方に近いです。オタクは決して悪いものではありませんが、私の一個人の考え方といたしましては、せっかく外的評価を受ける洋服というものに興味を持ったのなら、周りの方に良い影響をもたらす方が良いのではと思うわけです。
クラシックとモダンのバランスを常に考えて生きる。
それはいつの時代も大切な考え方だと思います。
これからの季節、暑くなってきましたら、上着を脱ぎ、オッドベストとトラウザーズ姿で出かければ良いのです。
そしてオッドベストはフォーマルなスーツの中に合わせても素敵です。
ジャパンスタイルにも、スーツスタイルにも使うことができるオッドベスト。
とても便利で良いと思うので、着る方が増えてもいいと思うんです。
こちらはK様にお仕立てしたもの。
同じくFOX SPORTのベージュのホップサック織のジャケットに、平織の同色のオッドベストを合わせるというなんともニクいコーディネート。
この、誰が気がつくんだ?というようなコーディネート、酔狂ですね。笑
そして同素材のベージュのホップサックのネクタイを合わせてみました。
ここに気がつき、会話が広がるような人とは、10秒前まで他人であろうが、即親友になれる存在に違いありません。笑
全身ベージュトーンで合わせたコーディネート。
ジャケットスタイルをもっと楽しむ方が増えてきてくれると、街も華やぎますね☆
35度とかになるともうお手上げですが、それまでは人間らしく、装いを楽しみましょう!
-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士
Haruto Takeuchi / 竹内大途