Day 7 Isle of Harris

BERUNです。

早朝3:30起き。フェリーの出発が5:15で、4:15までにフェリー乗り場に着かなくてはいけません。

真っ暗闇の中、きっといい景色なのだろうと想像をしながら、フェリー乗り場であるUIGという街に到着。

今日は天気がいいとのことで、フェリーも無事運行しました。

フェリーに乗り込み、1時間40分過ごします。

明るくなっていく海の色がとても美しい。

ハリス島が見えてきました。

7時前、いよいよハリス島に初上陸しました!

今回、私はヴィンテージの手織りのハリスツイードの生地で仕立てたジャケットを着てきました。

この子の里帰りでもあったのです。

ハリス島を走りはじめて、早速絶景が見えてきたので、車を停めることに。

ドアを開けた途端、あまりの風の強さに驚きました。

車のドアが開かない。!

風圧で車のドアが開かないのです。笑

なんとか外に出たものの、真っ直ぐ立っているのができないほどの強風。

これがハリス島のデフォルトなのです。

ハイランドの景色とは別世界です。

こんな環境下ですので、育つ植物も限られます。

こんな広大な土地があれば、日本でしたら畑にしたり、田んぼにしたりできますが、そんなことできる土壌じゃないんだよ。だからこのままなんだよ。

という潔さを感じます。

見えるのは岩肌の見える岩山のみ。

ハイランド地方でも見られない、ハリス島にしかない絶景です。

事前に調べていましたが。ほとんどの工場が10時以降のオープンの中、8時からやっている場所が唯一あるそうなので、そこに向かうことに。

ターバート港から、ハリス島一番の街であるストーノウェイに向かいます。

ちょうど8時に着きましたが、Googleマップでは着いているのに、どこを探してもない。(これからずっとそういうのが続きます笑)

 

あちこち歩き回っていると、港の工場の入り口の門があり、その先に車がポツポツ停まっている。

こっこれは、、、探偵物語で出てくるようなシーンじゃないか。海沿いに工場が立ち並ぶ場所。

ここにアジア人が一人で乗り込みます。

恐る恐る歩を進めると、Harris Tweedの文字が。あった!

 

しかし、完全に店ではなく、工場で、扉も閉まっている。

やってない!と思ったら、チラッと人影が。

この旅で感じたのは、出会う人皆がフレンドリーで、人を怪しむや疑うような素振りをした人は一人もいなかったということ。

普通奥まった工場の前に突然アジア人が現れたら、驚くでしょう?笑

でもその青年は私を見るやいなや、「Hi!」と声をかけてくれます。

私がハリスツイードの生地を見に来たんだけど、と伝えると、「Come on!」と中に招いてくれました。

中にいる責任者らしき方が出迎えてくれました。

もちろん今回も完全ノーアポです笑

事情を伝えると、どうやら今はホリデーでオフィスは稼働しているが、工場は休みとのこと。

しかし、工場内で作っている生地本を渡してくれ、欲しい生地があったらメールをして。と4冊の生地本をいただきました。(通常日本では生地本は有償のところが多いです)

なんて温かい。ハートウォーミング。

そのラインナップは、日本では見ることがなかった、私が欲しかった色合いのものがいくつもあり、直接来ることの価値を痛感しました。

気がつけばかなり強い雨が降ってきたので、10時までの間、カフェでモーニングを取ることに。

10時に立ち寄ったのは、ハリスツイード協会の中で行われているツイードの歴史を語るツアー。

せっかくなので参加してみることにしました。

ツイードのアーカイブを見て、羊の毛からどのようにして糸になるのか、また実際にどのように作っているかをデモンストレーションしてくれました。

こちらが現在使われている織機。

こちらがハッタースレイという伝統的な織機。現在はほとんど稼働しておらず、今も使っている人はわずか12人という。

この木の板が右に左に行ったり来たりして、糸を織っていきます。とても古風な動きです。

実際に大変なのは、ペダルを漕ぐことではなく、柄のパターンを考えることだそうです。

この機械では、6色の糸を使うことができ、その6糸で柄を構成していきます。

Weaverという織り師と呼ばれる人は、昔は1,000人以上いたが、今は180人ほどしかいないという。

このハリス島の学校でも、生地を織る授業があるそうなのですが、若い方でWeaverを目指す人はどんどん減っているのこと。

やはり文化を続けていく難しさというのは、どの国でも同じなのでしょう。

こうして考えてみると、日本でも一時期横行したハリスツイードのラベルを貼った小物を大量に売っていたこと。

私は日本でそれを見た時は痛々しいなと思っていましたが、その光景はスコットランド中でありました。

このバッグかわいいけど、この真ん中にハリスツイードのラベルいらない。。

と思うものばかり。

ですが、これも一定のわかりやすさがなくては、そもそも多くの人に手にとってもらうことができない。

そのために、ハリスツイードというものをブランド化して、手にとってもらうことがまずは大切。という文化継承のために必要なことなのだと感じました。

お高くとまっていては廃れてしまう。まずは広く知ってもらうこと。そしてより深く知りたい方には、もっと深いレベルでの世界を見せていく。

ブランドを維持していくことの難しさを感じました。

ハリスツイード協会では、ずっと欲しかったのですが、品切れで日本では買うことができなかった本を購入することができました。

店に置いておきますので、ぜひ見てください。

ハリス島の美しい風景が素晴らしい写真で見ることができます。

協会を後にし、次に向かったのは、Weaverの織元。

ハリスツイードは自宅で製作している人が多く、そのWeaver毎に柄やデザインを組んでいくので、その人それぞれのセンスが光るのです。

Googleマップではここなはずなのですが、見つからない。。

しばらく彷徨っていると、細い小道を発見。

まさかこの奥にあるわけ、、

あった。

完全に自宅で、小さくハリスツイードと書いてあるだけです。

部屋の中では家族の生活が見えます。

これは、お邪魔しますしていいのか?笑

恐る恐るノックをすると、快く迎え入れてくれました。

早速、実際に作っている姿を見せてくれました。

そして自宅の中に案内してくれ、作成した生地が置いてある部屋に案内してくれました。

約6畳の小さな部屋には、丁寧に手作りした生地が積み上がっていました。

色柄の作り方。一見普通のヘリンボーンに見えるけれど、ブルーとホワイトの色が何色もグラデーションがかって作られている。

「これは晴れた日のハリス島の海の色、こっちは明け方の深い海の色」

着想はすべて自然。

柄はどれも独特で、日本ではあまり見かけないものばかり。

日本では、無地、ヘリンボーン、チェックがほとんどで、それ以外のものは決して多くはありません。

このような日本では使いづらいかな。と思うような柄も、作り手からすると、パターンがとても複雑でこだわりがあるという。

そういう難しいかも?と思う柄の方が喜んで解説してくれていました。笑

すべてシングル幅のツイード生地。

通常は150cmのダブル幅ですが、シングルの織機で作られたものを購入。

わたしがこちらで購入したものの中で、ハッタースレイという100年以上前の機械で作られた生地が唯一ありました。

柄はそこまでピンとは来なかったのですが、ハッタースレイで織られた生地を手に入れたいというのは今回の目的のひとつでしたので、叶ってよかったです。

こちらでは、2年前にハッタースレイの機械が壊れてしまい、それ以来作れていないということで、こういう味わいのあるものがどんどんなくなっていくのだというのを感じました。

生地の長さを測るのも島ペースです。

先を急ぎたいのですが、、

という声を押しころして、島時間を味わいます。

さぁ、スイッチが入ったので、次の目的地へ向かいます。

ストーノウェイからまた離れ、南の方へ。

自宅で営んでいる場所が多いため、出掛けていたり、休みだったりするところもありました。

お店を周ったりした後、また織元を訪ねる。

細くて何もない道に、車が何台も行き交う。

この車はきっと同じ目的なんだろう。と思いながら走らせる。

しかし、どの車もうろうろしているだけで、目的地が見つからない様子。

我々も、Googleマップではここなはずなのに、誰もいない、何もない、、!

と諦めかけていたとき、たまたますぐ近くに小さなショップがあったため、彼の場所を尋ねることに。

すると、私が先ほど行った場所で合っているとのこと。

さっきいたから、多分いると思うわよ。と。

ピンポンしたりドア叩いたりすれば気がつくよ。と。

なんとも頼もしいアドバイス。笑

せっかくここまで来たし、会えるなら会いたい!ともう一度行くと、さっきまで閉まっていたドアが開いている。

中から「Hello Hello!!」

と元気な声が聞こえてきます。

中に入ると、ちょうど生地を作っているところでした。

中に入れてもらうと、ここに置いてある機械は、なんと昔ながらのハッタースレイでした。

現役でこの機械を使っている人は世界に12人しかいない。

その内の1人に出会えました。

ハリスツイード協会で見た機械、先ほど見た機械、どれも味わいがありましたが、ここで見たものが最もアナログで、ダイナミックでシンプルでした。

実際に工程を見せてくれました。

ここで織っているものは、毛はスコットランドのチェビオットツイードを使っているものの、洗いはハリス島ではなく外で行っているため、ハリスツイードとは呼べないとのこと。

ハリスツイード協会の認定を受けるために、守るべきものがいくつもあるため、それに沿っていないものはハリスツイードとは呼べないのです。

わたしはその方が織った生地が欲しかったため、ストックを聞くと、3種類だけあるとのこと。

もしその方に実際に色柄をオーダーして頼むとすると、2年待ちだそうです。

今回3種類のうち、2種類の色柄が私の好みにドンピシャでしたので、すべてロールでいただきました。

さっきすれ違っていて、ここに行き着けなかった人たち、ありがとう。。笑

もうめちゃくちゃカッコいいです。。

わたしがこの素晴らしい生地をしっかりと日本に届けます。(無事届きますように)

車の中はこんな状況です。

これから梱包をして、日本に配送の準備をします。無事できるのだろうか。。

天候がコロコロ変わるスコットランドの風景。

島全域が絶景です。

岩山を見ているうちに、我々は登りたくなってきてしまいました。ハリス島の草が生えているところは至る所が湿地帯。言ってしまえば地雷です。

なるほど、こういうところを歩いていたから、フルブローグという靴が生まれたのか。いたく納得します。

靴がびしょ濡れになりながらなんとか岩山の上まで来ましたが、立っていられないほどの風。思わずキャスケットを反対被りします。

風を全身で思い切りあび続けた我々は、へとへとになりながらホテルへと向かいます。

今回の旅で感じたのは、本当に会う人すべていい人。いい人という言葉が軽く感じられてしまうくらい、みなさんとても魅力的で温かく、もう最高でした。

ハリス島でとったホテルは、海を見下ろす絶景の宿でした。

21:30。ようやく夕日が沈みます。

明日はハリス島を後にし、グラスゴーまで車を返す日です。

もうすぐ旅も終わります。

-Atelier BERUN-
東京表参道の仕立て屋 / 洋装士

Haruto Takeuchi / 竹内大途

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Day 7 Isle of Harris” への1件のフィードバック

  1. なんとなく大島紬を思い出しました。
    おばあちゃんが生地を織り、子供を大学まで連れて行けたそうです。
    服の世界は奥が深いなぁ。

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