初フルオーダー

ベルンです。

本日、人生初である靴のフルオーダーをお願いしてきました。
デザインは、黒のストレートチップ。

靴の収集癖があるわたしで、気がつけば80足に達しそうな靴たちですが、実はまだストレートチップは一足も持っていませんでした。
以前は持っていたのですが、どこかピンと来ずすぐ手放してしまい、結果的に手元に残るストレートチップはなかったのです。
最もシンプルで究極なものだからこそ、妥協をしないものを見つけたいと思っていましたが、既成靴では出会うことはありませんでした。
エドワードグリーンでもジョンロブでも出せない、シンプルだけどどことなく男性的で知性を感じさせる靴。わたしの求めているものはそんな「顔」をした靴です。

上野の近くでやられている小さな靴工房。
普段自分がオーダーされる側の立場にあるので、こういう機会はとても貴重で、とてもいい経験になります。
工房兼事務所の内装はとてもこざっぱりとしていて、わたしのような「設計士」のような立ち位置ではなく、「職人」だと感じさせてくれる素朴な工房でした。
気をつかいすぎてしまい、写真を上の1枚しか撮ることができなかったのが残念です。。

談笑を含め、2時間ほどみっちりお話しさせていただきました。
ビスポークの力が存分に発揮されるサイドエラスティックにもなびきかけましたが、やはり最初に思っていたストレートチップのままでいくことにきめました。
形もわたし好みの、無骨さとエレガントさを合わせ持った顔。
根が東北人だからでしょうか、極端なまでのチゼルトゥや派手な形などは、わたしにとって”オシャレすぎる”と思ってしまうのです。
「オーバーステートメント」とも「Too much」とも言うように、究極の服はとことん静かな顔付きの方がよしとされます。

本日オーダーした靴は6月に仮縫いをし、9月に完成します。
約5ヶ月、じっくり楽しみに待ちたいと思います。

職人の方とお話ししていて思ったことですが、ビスポーク屋がその道一本で生計を立てていくことはとても難しいということ。
職人たちが研究に研究を重ねるところが、うちの「ハウスパターン」はどうするか。です。
ハウスパターンとは、うちのスタイルはこういうスタイルです。というような、そのお店のいわば顔のことを言います。

それをどのような味付けにするかで、今後どのようなお客様がつくのかある程度の方向性は決まるでしょう。
写真でパッと見て格好良さを伝えることができれば、ファンはたくさんつきます。
しかしそれが本当に自分の思想から生まれたスタイルなのか。
そしてそれを見てくる人たちは本当に自分が求めている人なのだろうか。

職人は常に、その売ることと作りたいもののバランスと葛藤しています。
それは決してどちらかだけが突出していても、現代では生き抜いていくことは難しい。
やりたいことだけをやり続けて、実際にいいものが作れていたとしても、それが第3者に発信され心を動かすことができなければ、その人は20世紀型の職人で終わってしまう。
これからの時代、突出した作り手であるためには、裏打ちされた根拠のあるスタイルをもち、かつ思想を感じさせるものづくりをできる人、そんな人なのだと感じました。

想いだけ持っていても、それを披露できる場が比例してないかぎり、ただの心の叫びで終わってしまいます。
自分の理想に合った立ち位置を定め、そこにい続ける努力がこれからは必要だと、改めて感じました。
そしてこれは職人に限らず、あらゆる仕事に通じる考え方なのだと思います。

そして最後に職人の方に、
「腕のある職人とはどういう人でしょうか」
とお伺いしました。
その答えですが、
「作品に手垢が残っていないこと」。

すべてハンドで製作しているのに、人が作ったという匂いを感じさせないものづくり。
とことん職人らしい考え方です。

ベルンでした!

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