ベルンです。
年々増えていく生地棚の量。これがすべてではありません。
しかし、今はもう珍しくて手に入らないような上質な生地がそろっています。
毎日のように眺めては、いい生地だなぁとほれぼれしています。
旅先でいい生地があれば買い付けることもあります。
仲のいい生地屋さんにはわたしの好みはまるわかりなので、わたし好みの生地が入ればとっておいてくれます。
こちらはFacebookでも紹介しました、1980年代のヴィンテージのハリスツイード。
手織りで織られた大変珍しい生地です。今ではもう入手するのは非常に困難なのではないでしょうか。。
なんと5着分も掘り出しました。
しっかりとハリスツイードの刻印もあります。
生地は通常、ダブル巾といい、横幅が150cm巾で織られています。
お店ではそれを半分に折り、75cmで展示しています。
しかしこちらの生地は手織りの織機で織られたもののため、もともとシングル巾なのです。
手織りの織機ではシングル巾しか作れないためです。
つまりジャケット1着作るには、通常の用尺の倍が必要になります。
なんとも贅沢な選択。
現行の機械織りのツイードよりも柔らかく、ぼやっとしたタッチ。
人が織ったぬくもりが感じられる素晴らしい生地です。
こちらは英国製のスーツ生地たち。
主にハリソンズ、スミスウーレンズ、Hレッサーなどの370~420g/m前後の肉厚な生地がそろっています。
余談ですが、我々テーラーや生地から選ぶ通なお客様は、生地の厚みをグラムで言います。
それが、先ほどのダブル巾を横とし、縦が1mに対して量られた重さです。
昨今のオールシーズンと呼ばれる生地の厚さはほとんどが240~260g/mです。
それを聞けば、400g/m前後という生地がいかに肉厚であるかがお分かりかと思います。
英国では「300g/mを切るものは生地ではない」と切り捨てる人がいるほどです。
しかし英国と日本では、気候の違いもあります。
日本の最近の真夏は、「おしゃれは我慢だ!」なんて言っていられない状況まできています。
夏は見過ごしますが、今の寒い季節は、しっかりとした上質な生地を選ぶことをおすすめしたいです。
一度、何かかしらで仕立てを経験したことのある方ならお分かりかと思いますが、生地は厚みがあればあるほど〝仕立て映え″がします。
イタリアのサルト(いわゆるテーラー)でも、英国生地を好む職人は多いのですが、その答えは仕立て映えがするからです。
イタリア生地は薄く柔らかいため、より技術を要します。
本場ナポリのサルトに行ったり、国内でも指折りのクラシコスタイルのテーラーでしたら、それらをうまく仕立て上げてくれます。
しかし、安価なイージーオーダーのお店で仮にそのような生地を使った場合、「大味」なスーツになってしまう可能性があります。
もちろんイタリア生地の良さもあります。
着心地や軽さ、ラグジュアリーな雰囲気はイタリア生地に勝るものはないでしょう。
ですが、普段ビジネスでばりばり着る洋服であれば、英国生地から選ぶほうがいいかとわたしは思います。
久しぶりに生地についてお話ししましたが、こういった世界はあまり知りすぎても楽しくありません。笑
こういう話は、頭のほんの片隅に入れておくだけで十分です。
何事も、ほどほどに楽しむのが一番ですね。
寒い冬がやってきました。
Atelier BERUN
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