時代に流されずに生きるためには

BERUNです。

衣替えの時期で、久しぶりの洋服に袖を通すことが多い季節です。
わたしはこの仕事を始めて9年目になりますが、その当時に作ったものは今でも着ているものが数着あります
当時は色々と実験的に作っていたものが多く、とてもじゃないけれど人前で着ることはできないようなものも多数あり、そういったものは実家で眠っています。

本格的な英国生地を扱い始めたのは2012年頃です。狂ったように自前の洋服を作っていたので、その頃の洋服が多くありますが、それらももう6年前かと懐かしくなります。

今とは作っている工場も違えば、決して今のわたしからすると満足のいくフィッティングではありませんが、特に気にすることなく愛用しています。

BERUNの洋服のお直しを担当してくださっているおじい様が、先日50年前に自身で誂えたカシミアのダブルのブレザーを見せてくれました。
生地はたしかに痛んでいますが、今でも現役で着られる状態です。
人は年齢や心境の変化に合わせて、身の回りのものを変えていくものだと思っていましたが、洋服は変えずとも、自分自身が変わっていくだけで見え方は全く変わっていくものだと実感しました。

当たり前ですが、わたしが2012年に仕立てたスーツを、当時24歳だったわたしが着るのと、今のわたしが着るのでは全く違うものに見えます。
同じ映画や本を数年後に見ると、全く見え方が変わるように、1つのものを永く愛用していく価値はそこにあるのだと思います。

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時代が変わっても美しいもの、格好いいものがあります。
反対に、今の時代にはそぐわず、古くなっていくものがあります。
その違いはなんなのでしょう。

わたしは個人的な趣味で、建築を見るのが好きなのですが、建物を見ていてもそういう思いは強く感じることがあります。
個人宅であれば、この家は30年前くらいに建てられたものだと一目見てわかるものもあれば、何十年経っても変わらない、むしろより凄みを醸し出していく物もあります。
有名な設計士が建てた建築物などはまさにそうで、何十年前のものでも今見ても新しさを感じることができるものが世の中にはあります。

いつの時代もトレンドがあり、多くの人がそのトレンドに沿って生きていきます。
ファッションでも、最初の話のように、50年前に作ったものでも今なお現役で格好良く着られるものがあるなかで、ほんの数年前に売られたものでも、もう着ていられなくなるものもあります。

わたしはよくトレンドとトラディショナルを”円”に例えます。ここからはわたしの観点からのお話ですが、その円の外をぐるぐると回っているのが「トレンド」。そして台風の目のように、中心にいるのが「トラディショナル」です。
その円の周りをめまぐるしく回っているトレンドが、何年かに一度、円の中心近くに入ってくることがあります。それが「クラシック回帰」。
ですがそれは完全に円の中心にいるわけではないので、正統派なトラディショナルとは違います。どこまでいっても「クラシックという名のトレンド」なわけです。

こうして円の中心側に来たり外側に行ったりと、ぐるぐる回っているのが、トレンドとトラディショナルの関係です。
そしてこれは2次元の”円”ではなく、3次元の長く伸びる”円筒”だと考えてみてください。流行はまた時代の流れで戻ってくるとは言いますが、完全に同じ形で戻ってくるわけではありません。時代は進んでいるので、必ず進化(変化)した形で戻ってきます。
その円の回転がぐるぐると上昇していく。それが時代の流れ方です。

その一時代の回転に沿って作られたものは、上昇していく流れに取り残されていきます。
それが10年20年と経過していくことで、確実に風化していく作品となります。

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家にしてもそう。時代が変わっても格好いいとされるものは、間違いなくプロフェッショナルが時代のことを厭わず、本当に良いものを作ろうと決意したからです。そこにはしかるべき対価がかかります。
家は30、40年と目に見えるからこそわかりやすいですが、洋服は時代が過ぎれば、処分することができてしまいます。
だからこそ軽視されてしまいがちですが、70過ぎの生き生きとしたおじい様方が、20、30代の頃に手にしたものなどを、今でも現役で着ている人もいるのです。

それが本当の洋服の価値なんだと思います。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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