BERUNです。
長くお付き合いのあるお客様がハワイで挙式を挙げるとのご連絡をいただき、この度セットアップのスーツをお仕立ていたしました。
ご夫婦の希望は、あまり堅苦しいスタイルではなく、カジュアルにまとめたいということでした。ですが、ご希望のスタイルをそのまま受け止めていたら、今風の軽いイメージになってしまいそうでしたので、わたしなりの想いもお伝えさせていただき、お互いが納得するところまで話を詰めていきました。これができるところが、ビスポークの特色です。
生地は英HarrisonsのMersolair、リネン100%のグレンチェック。
リネンというカジュアルな素材でありながら、グレンチェックという構築的な柄が、大人さがあって素敵な一着に仕上がりました。このグレンチェック、写真では伝わらないのですが、色合いが絶妙ですごくカッコイイ。
貝釦にしようかと迷いましたが、シックさを出したかったのでナット釦に。これが正解でした。パットレス、背抜き、アンコンストラクテッド(非構築的)な仕上がりで、肉厚な麻の生地のハリがより際立ちます。
リネンで仕立てるとき、生地の段階で、水を入れた霧吹きを約700ccかけて、1日寝かせておきます。そうすることで、仕立て上がったあとの縮みや歪みを最小限に抑えることができます。
麻は着用しているとシワが入り、丈と裾はかなり上に上がってきますので、シワがないおろしたての状態では少し長めに作っています。
ボウタイは共地でお作りしました。手裁断で職人が一つずつ作る、オリジナルボウタイです。
ビスポークは背中が美しい。あまりの曲線美に、しばらく奥様と背中を眺めておりました。仕立て上がりの段階でこの立体感です。着続けていくことでより、自分のものになっていきます。
N氏はBERUN創業したての頃、何着か続けてスーツを仕立てていただいておりました。
氏が6年程前に起業をし、スーツを一切着ない職種に行かれてからは、洋服を作る機会はなくなりました。今回久しぶりにスーツをお仕立てして、またスーツスタイルにしようかなと仰ってくださったのが嬉しかったです。
人生のライフステージが変わることで、スーツスタイルが必要になるときは来ます。年を重ねる毎に、人間的厚みが増していくことで、より重厚なスーツが似合うようになっていきます。
外は強く中は軽く
こちらの麻は350gmsという肉厚な生地を使用しています。
夏の洋服となるとつい生地を薄くしたくなりますが、わたしはあまり表地を薄くすることはあまりお勧めしておりません。
なぜなら、日本の夏の湿度は生地を弱らせるからです。やわな生地であればシワが復元せずに、高級感からはほど遠い見た目になってしまいます。
日本の気候に負けないために、英国のハリのある生地をわたしは使用しています。
仕立てを軽くすることで、生地のハリだけで成り立つジャケットになります。
繊細で柔らかな生地を使用して、副資材も省いたアンコンジャケットにすると、本当に薄くやわなジャケットになってしまうのです。
生地は強く、仕立ては軽く。これがBERUNの夏服のイメージです。
最後に。柔らかな生地で、軽い仕立ての服ももちろんお作りします。ですが、それはその方が洋服をたくさん持っていて、色々な洋服を着慣れている方にお勧めしています。
軽くて柔らかなジャケットは、着る人の品格が試されます。
そのような軽い洋服は、夏限定で、週に1回着用できればOKというくらい、心に余裕がある方だからこそ似合うジャケットです。
自分がどういうシーンで、どのくらいの頻度で着たいのか、そこから考えて生地を選ぶと、失敗のしない選択ができると思います。
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