なぜBespokeを選択するのか

BERUNです。

今年ももう残すところあと8日となりました。
BERUNの最終営業日は28日を予定しております。年始は5日から店を開ける予定です。

先週末、長いお付き合いのお客様が、リニューアルされたホテルオークラで結婚式を挙げました。オークラのロビーはとても気のいい空間でした。古いものの意志を受け継ぐリニューアルは容易ではありません。赤坂の「とらや」もですが、最近は歴史あるブランドが新しく生まれ変わる機会が多いです。いずれも、現代のセンスとうまく融合していて素晴らしく生まれ変わったと思います。

そのお客様にはディナージャケットをお仕立てしたので、洋服の着付けに行ってきました。式に参列される方々の名前に驚くばかり。そのような式典に、BERUNのディナージャケットを選んでいただいたことがとても嬉しかったです。

「シャツの襟はウイングカラーでないといけないと言われたんだけど、どうなんですか?」
「式のポケットチーフは麻ではなくシルクがいいと言われたんだけど、どうなんですか?」

洋服に知識、興味がある方が周りに多いと、色々と言われ、惑わされることも多くなりがちです。
「お渡ししたスタイルで間違いないので、自信を持って行ってきてください!」
と最後に送り出しました。
やはり結婚式のディナージャケットの仕事は、何度やっても最高に楽しいです。

12月はやはり忙しいですね。プライベートでも年内に片付けたいことが溜まりに溜まっていて、家族みんなで休日も慌ただしく動き回っています。合間を縫って、かねてから楽しみにしていたコンサートに行ってきました。池袋にある有形文化財の自由学園明日館にて。フランクロイドライト建築に包まれながら、音楽を愉しむ時間はとても有意義でした。

漆喰と木と石。このアンサンブルは、時代を超えた格好良さがあります。

平成が終わり令和になり、変わりゆく時代でも、変わらないものはあります。人の根源、本質的なものは、いくら年号が変わっても、たかだか数十年単位では変わりません。人間が本質的に求めている美しいものを提供していけるよう、日々世界からインスピレーションを吸収し続けたいです。

Bespokeは二人三脚

年末の土日はありがたいことに、年内に完成した洋服を受け取りたいという方が来られるため、納品が続きます。

写真では分かりづらいですが、中に着ているものはグリーン/ブラウンのハウンドトゥース(千鳥格子)柄のシャツです。程よいカジュアルさがあるため、とても使いやすい柄です。気に入って着ていただけています。その上に今回完成したツイードジャケットをお渡ししました。合わせるタイはやはりウールタイですね。

この季節になると、急にオーダーが増える、BERUNの影の人気アイテム、ビスポークのミドルゲージニット。シャツではなく、中にニットを合わせたコーディネートも素敵です。冬はこのように、中でも外でも色々と愉しめるのがいいですね。

昨年、ご紹介でお越しいただいたN様。洋服に強いこだわりはないが、周りに与える印象は大切なので、しっかりとしたものを着たい。そういうことをきっかけに、ご来店くださいました。以後、何着か作らせていただいております。
はじめは仕事での装いを中心に、スーツを増やしていきました。その後、日常的に着る服も丁寧な物を着たいというところから、夏はリネンシャツ、コットントラウザーズをお渡ししました。そして今冬はツイードジャケットにモールスキンという流れです。

わたしはまずどなたにでも、基本のきを徹底的に身に着けていただきたいと思っています。地盤をしっかりと固めてから、次に屈強な柱を立てる。自分らしさを出すのは、それが終わってからです。そこからは、学んだ基礎を糧に、自由に楽しんでいただきたいです。

ビスポークは二人三脚です。1、2度会っただけでは、やはり人の多くを理解することは難しいと思います。理想は、年を重ねて何度も会い、密に話をしていくことです。そうすることで、お互いの人間性が少しずつわかってきます。
人柄がわかるようになってくると、予想もしていなかった、だけど本能レベルでは、「こういうものを探し求めていた!」というようなものを、提案することができるようになっていきます。

N様と何度か話をしていたとき、大学のときの第二言語がフランス語で、フランスの文学を当時たくさん学んだと話してくださいました。その人のバックボーンが見えてくると、わたしからも、年単位でこれから先のワードローブをどのように提案していこうか、という方向性がより鮮明に見えてきます。

質実剛健なイギリス服で日常的に着るタフなワードローブが揃ったら、ソフトで柔和なフレンチスタイルに寄せていくのもありだろう。そんなことを考えるのが、わたしの仕事であり趣味です。

イギリスでは、「床屋と仕立て屋はかえるな」という格言が残されているのは、そういう背景があるからではないでしょうか。

赤茶のスウェードもいい感じに経年変化しています。
気にせず、履いて履いて履き倒して、友人から親友、パートナーへと昇華していってほしいです。

New young Gentleman

英Marling & Evans社のLamb Woolの生地を使用してお作りした、ハウンドトゥース柄のジャケット。ハウンドトゥースは個人的にとても好きな柄です。
ウインドーペーン(窓の格子柄の直訳)は、大きなチェックで洒落感がある柄ですが、着る人によっては柄が前に出すぎてしまうことがあるため、その方のキャラクターを丁寧に見極める必要があります。
カジュアルさも出したいため、無地では少し物足りない。そういうときにハウンドトゥースのような総柄はとても活躍します。総柄であればわたしは他には、バーズアイ、ヘリンボーン、ギンガムチェック辺りをよく使います。

若いながらも、物事の本筋を見るような鋭い目と、端整な顔立ち、そして引き締まった肉体をお持ちのA様。身体は小柄なため、厚みのある生地で構築的に仕立てると、上半身だけ大きく見えてしまいます。肩パッドを排して、軽い仕立てにしました。

身体を鍛えている方は、バストとウエストの差がとても大きいです。ラペルの裏側にダーツを入れ、緩やかに自然な曲線が生まれるように仕立ています。

丸首、クルーネックのミドルゲージニット。タートルネックは、シャツを着るのが面倒なときに活躍します。クルーネックは、シャツのレイヤードを愉しみたいときに使います。中に着るシャツの柄はチェックにしてもいいでしょう。ギンガムチェック、タッターソール辺りを選んでおけば間違いありません。
このセットアップの上に、自前のBaobourを羽織って店を後にされました。東京が見劣りするくらい格好よかったです。

なぜBespokeなのか

現代、巷に溢れるスラックスは細すぎます。そして短すぎます。少しずつゆとりのあるスラックスになってきてはいますが、それでもまだまだ細いです。もっとゆとりがあった方が、綺麗なシルエットになります。

BERUNのトラウザーズは、ヒップから下にかけて、一般的なスラックスよりもゆとりがあります。そのゆとりに多くの人がはじめは戸惑います。ですが、しばらく履いていると慣れてくるのです。それに慣れてきたら、今度は今まで履いていた細身のスラックスが細すぎて、履き心地が悪い、ということに気づきます。選択肢が1つしかなかったところに、新しい選択ができた瞬間です。こんなフィッティングがあったのか。ゆとりがあるのに、ダボついて見えない。そのフィッティングはひとりひとりの身体をしっかりとサイジングし、抑揚を持たせた洋服を仕立てているから作り出すことができます。

ビスポークの最大の利点は、洋服にメリハリをつけることができるところです。逆をいってしまえば、既製品にはそのメリハリがありません。わかりやすく区切るとすれば、単調で抑揚がないのが既製服だとお考えください。(それが全てではありませんが)
そもそも、人の身体にはひとそれぞれメリハリがあります。その部分部分を、長所と見るのか、短所と見るのかによって、活かすか隠すかを決めていきます。
たとえば、身体が細い人で、身体を大きく見せたい人は、どこをどう出せば大きく見えるのか。そしてどこを引けばただの大きな洋服にならないのか。そうやって洋服は1着ずつ考察され、作られていきます。
その過程の大部分を考えないようにしたのが既製服です。より多くの人が着られるようにするためには、メリハリはいりません。100人中半数以上を満足させる必要があるため、大味なサイジングにするしかないのです。

そんななか、そのレベルの洋服では満足できない人が極少数います。そういった方が、ビスポークの世界に足を踏み入れます。自分のために作られた物を身にまとうという最高の選択に気づくのです。

家を一生に何度も建てる人はあまりいないでしょう。
車でさえも、ある物の中から自分がいいと思ったものを選ぶのが基本です。
「このフロントガラスを後5cm外に広げてほしい」
「フロントフォークのこのカーブをもう少しゆるやかにして」
なんてオーダーはできないでしょう。
洋服は、自分が納得するまで、とことん最後までこだわりぬくことができます。自分だけのこだわり、わがままを押し通すことができて、それにしっかりと答えてくれます。

わたしのお客様で昔、胸ポケットのないスーツを作りたいとオーダーをされた方がいらっしゃいました。あまり聞かないオーダーで、一見すると、なんだそれ?と思ってしまうような内容ですが、その方には独自のこだわりがあり、色々その人の考え方やこだわりを聞いてみると、なんだか面白そうなのです。わたしも楽しくなってきて、ではそれでやりましょうということになりました。実際に作ってみましたが、思ったほど変ではありませんでした。ネイビーのなんの変哲もないフランネルスーツに、その方独自のエッセンスを注入することで、自分だけのこだわりの服が完成した瞬間でした。

アズーロ・エ・マローネ

今回ご紹介したお二方のコーディネートは、どちらも「アズーロ・エ・マローネ」です。これはイタリア語で、「AZZURO=青」と「MARRONE=茶」という意味です。英国流儀なのにここでいきなりイタリアか!と思われる方もいるかもしれませんが、この青と茶の組み合わせは、何もイタリアに限らず、コーディネートの基本として使われています。ネイビーのスーツと茶の革靴の相性の良さを思い受かべていただけたら、お分かりかと思います。まさに外れのない組み合わせです。実際、BERUNに来られたことのある方でしたらお気付きかと思いますが、床が青で、家具・調度品は茶です。

BERUNでは、まずは基本の組み合わせというところから、コーディネートのしやすい色を増やしていきます。ジャケット&トラウザーズの組み合わせが3セットになったとき、互いのもの合わせたら9パターンのコーディネートが完成します。ここまでくると、ジャケットスタイルも幅が出てきて愉しくなってきます。

まだまだご紹介できていない洋服たちがありますが、それはどこかの機会にぜひ。

来週は30日ですが、更新する予定です。
2019年最後のブログも、よろしくお願いいたします。

 


Atelier BERUN

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