Bespokeは争わない ~2019 終~

BERUNです。

おかげさまで、今年も最後まで仕事を続けることができました。2019年にお会いした皆様には心から感謝いたします。無事、28日に仕事納めをしました。

来年の2月で、BERUNも10周年となります。10年経ってみて思うことですが、知れば知るほど、この世界の奥深さ、そして魅力に気づかされています。それと同時に、服飾を通じて様々な世界に触れることができ、自分の小ささ、至らなさに打ちひしがれた一年でもありました。

装いを通じて人の人生が変わるという事は、決して大袈裟な話ではありません。まず、理想の洋服を着ることでなりたい自分になる。そこから、人格を形成していけばいいのです。卵が先か、鶏が先かはわかりませんが、こと人間に例えると、洋服が先です。人格は後からついてきます。

私がこの仕事をしていて、一つビスポーク(日本ではオーダーメイドと同義語として扱われている言葉です)の魅力を挙げるとすれば、それは他人と比べることがなくなる(または極端に減る)ことだと思っています。
巷に溢れるブランド物や高級品は、身に付けようと頑張れば頑張るほど、周りを見渡せば青天井であることに気づかされます。もっといいものを着たい!みんなより新しいものを着たい!と、心が休まらず、落ち着きがなくなってしまいます。
ビスポークスーツを着ているとき、例えば同席している方が高級なブランドのスーツを着ていたとしても、動じることはなくなります。質実剛健な生地で、自分のために作られたジャストサイズのスーツを着ているということが、何よりの(その人にとっての)ブランドです。そのときは、誰よりも穏やかであれます。隣の人よりももっとこうなりたい!という欲求はなくなります。
また、流行や雑誌などのメディアに泳がされ続けていると、色々なものを探し回ることにかなりの時間と労力を取られます。流行やメディアとは一線を引いている
ビスポークに出会うことで、人生の過ごし方も大きく変化していきます。

人は隣の芝生が青く見えるように作られています。それは人間の本来持って生まれたものです。
もっと周りの人よりも格好よくなりたい、もっとこうなりたい、と欲求先行型で突き詰めた先にあるのは、終わりのない空虚な世界です。

私が作る洋服は、シックなものが多いですが、日常的に着るものは、シックでシンプルで十分だと思います。
日本人として、納豆は毎日食べられるが、フレンチを毎日食べる事はなかなか難しいでしょう。
少し奇をてらったもの、華やかなものは、ベースのものが揃ってからでいいと思います。

ビスポークは極論、自分のものである、ただそれだけです。そして私は、それだけで充分だと思います。ほかに何かを付け加えようとすればするほど、心が落ち着かなくなっていきます。なんでもできると自由を与えられたとき、人間の創造性は下がっていきます。何かかしらの制限がある方が、人はより豊かな発想をすることができるのです。

ビスポークは決して大げさなものではなく、他の何よりも地味なものかもしれません。流行のような突飛さはなく、あくまでシンプルと美しさを追求しただけのものです。

一つのものを長く着るという考えが根底にあるビスポークでは、何でもできるからこそ、あえて何もしない。そこに心の余裕が生まれ、人生を生きる上で様々な発想力が生まれます。

私はより多くの人が、自分のためだけに作られたものをまとうことによって、無駄な争い事はなくなることを願っています。

年の瀬、BERUNではすでに春夏ものの生地の選定に取り掛かっています。
すでに魅力的な生地にたくさん出会ってしまっていました。2月には全て届けてもらう予定です。楽しみにしていてください。

1月の営業日について

年始は5日から営業開始いたしますが、9~25日まで、国内と海外の旅行が重なっているため、長期的に不在となります。ヨーロッパ 洋行中は、なるべく連日ブログを書いていきたいと思っております。
皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、2月からは春夏ものが本格的に始動するため、ぜひ楽しみにしていてください。

それでは、良いお年をお過ごしください。
実りのある2020年になることを、心から願っています。

 


Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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