季節を生きる

BERUNです。

今は店内が、納品待ちの洋服であふれてきています。
お客様も早く着られたいと思うのですが、今は辛抱のときですね。

現在、国内の工場は、製作規模を縮小したり、休業をしているところも出てきています。欧州の生地会社は未だにストップしたままのところがあります。

この時期にどう動くか、人によって様々です。
時代にあわせて、先の時代を見越して、試行錯誤している方もいれば、時代の変化を静観している人もいます。どちらも持ち合わせていることが、このような変化の時代には大切なことだと思います。

わたしも自分なりに、「やらなくては、、」と思いながら、腰が重くてできていなかったことを、少しずつやっているところです。

春夏、秋冬という言葉への疑問

今まさに、春夏物の洋服が完成してきています。
何度も書いておりますが、世間的にいう春夏物とは、BERUNでは春・秋物のことをさします。
日本は7月下旬から9月上旬頃までの1ヶ月半は、服飾業界の観点からいいますと、夏ではなく盛夏という全く別の季節に変わります。
春夏物というと、3月から8月、という認識をもってしまいますが、その6ヶ月は日本の気候が大きく変化していく時期です。
ですが、春・秋物と考えてみますと、3,4,5、9,10,11月という、ちょうど気持ちのいい6ヶ月を見越すことができます。季節を考えて生きていくことが、日本という国を愉しむためには必要不可欠です。

極論をいってしまえば、そもそも、春夏/秋冬という概念が、日本の風土には合わないのです
これは、欧州のSS(Spring & Summer)/AW(Autumn & Winter)というビジネス的観点を一方的に押し付けられているだけであって、四季を大切にする日本人は、欧州とは異なる発想をしたほうがいいとわたしは思います。

季節を3つに分けてみる

わたしは日本では、大きく「春秋、盛夏、冬」と3つに分けています。欲をいえば、「春・夏・盛夏・秋・冬・真冬」と6つに分けたいのですが、まずは上の3つに分ける考え方でいいと思っています。
そして、夏を盛夏といいかえるところに日本を感じます。

季節をそのように分けて考えてみますと、初めてビスポークをされる方や、まだ数がそこまで多くない方には、盛夏の洋服をお作りすることはやはりおすすめできません。
なぜなら、夏服の生地は盛夏に耐えうる薄さに削ぎ落とし、仕様も盛夏向けに引き算をし尽くした洋服になるからです。

また盛夏には、モヘアやシルク、リネンなど、夏らしい素材感を使った生地を使用します。それらの生地で仕立てた洋服は、その季節ではとてつもなく格好良く活躍してくれるのですが、その季節以外になると、途端に肩身の狭い思いをしてしまうものです。

そのため、わたしはこれからの時期のオーダーでも、初めて来られる方には、夏物だとしても、必要な厚みのある生地をおすすめしております。

夏物を夏以外に着ることの違和感

6年程前に、一度だけスーツを仕立ててくださった方がいらっしゃいました。その方は暑がりということもあり、季節も夏前くらいでしたので、モヘアの入ったライトグレーのスリーピーススーツをお仕立てしました。(当時は今ほど、季節のお話はしていませんでした)

その後、大切に活用しています!と連絡をいただき、ご友人の結婚式で着られている写真を見たとき、違和感がありました。季節は冬、周りの方の服装はダークトーンのシックなスーツで、生地も厚みのある洋服を着ている方が多かったのですが、その方は、ライトグレーの薄手の生地のスーツを着ていました。
その中で、モヘアのきらりと光るハリのある明るい色のスーツをご着用されたお客様が、浮いて見えてしまったのです。
その方にはもちろんその後、しっかりとご説明をいたしました。夏にカシミアやキャメルの洋服を着ることはできませんが、上に着込んでしまえば、冬に夏物を着ることはできてしまいます。

水泳選手がスキーを本業にできないように。
スキー選手が陸上を本業にできないように、その季節ならではの愉しみ方をぜひしていきましょう。

緑のウインドウペーンジャケット

これからの季節に向けたジャケットが完成いたしました。

Harrisons(ハリソンズ)のICARUS(イカルス)を使用した、盛夏でも着用できるサマージャケットです。220~240gmsという薄手ながら、しっかりとしたハリのある魅力的な生地です。

グリーンにブルーのウインドーペーンが、爽やかで清涼感があります。
こちらのお客様は、ネクタイをあまり着けられないため、このような柄物のジャケットを今までお作りしております。
ネクタイというアクセントがない場合は、ジャケットに華を持たせることで、物足りなさをカバーすることができます。
もちろん、その方の雰囲気によってではありますが、タイを着けるか否かは、わたしの中で洋服の選び方は大きく変わります。

新緑のジャケット

今回はグリーンのジャケット二連続です。
少し色の落ち着いた大人さを感じさせてくれるグリーンです。品のある一着に仕上がりました。
HarrisonsのINDIGO(インディゴ)という、ウールリネンの盛夏向けの生地です。

ネクタイはオフホワイトとライトグリーンのレジメンタルタイ、素材はシルクリネン。とても夏らしい綺麗なタイです。

おしゃれをして街に出る。そんな当たり前だったことが、当たり前でなくなってしまいました。ですが、今我慢をしている分、晴れた暁には、今まで以上に装うことを思う存分楽しむことができますね。

Atelier BERUN

東京都新宿区神楽坂6-8-23

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